東京五輪の卓球男子シングルス代表に内定している張本智和。17歳の夏に大舞台に立つこととなる日本のホープは、卓球王国、中国の血を受け継いでいる。「プロとして卓球をやらせるつもりはなかった」という両親の教育方針に反して、これまで数々の最年少記録を塗り替えてきた。
元中国代表の母は「プロとして卓球をやらせたくない」
得点を挙げるごとに「チョレイ!」と大きな声が響く。卓球の男子日本代表、張本智和は「天才少年」「怪物」などと称され、幼少期から数々の偉業を成し遂げてきた。
張本の両親は中国、四川省出身で、父親の張宇さん、母親の張凌さんともに中国のプロ卓球選手だった。張本は2003年6月27日に日本で生まれ、日本と中国の文化が交錯する環境で育った。2歳の時には母親からラケットをもらい、卓球を始めている。
ただし、両親のもとで幼少から厳しい英才教育を受けてきたわけではない。むしろ卓球界の厳しさを知る両親は、「プロとして卓球をやらせたくない」と考えていた。そのため3歳のころから英会話教室に通い、小学校時代は学習塾へ。ラケットよりも鉛筆を握った。小学校を卒業するまでは、母の意向により1日2時間以上の練習をしたことがなかったという。
それでも、やはり遺伝の力なのだろうか──張本自身のなかにある卓球への思いは、次第に大きくなっていく。集中して机に向かい、早く宿題を終わらせる理由は、大好きな卓球を1分でも長くやるためだった。勉強の成績は優秀で、学研が主催する小学校全国共通テストでは国語と算数で計4回、全国1位になったというエピソードも残る。
小学4年次に人生を左右する日本国籍取得
小学1年次、全日本卓球選手権大会で小学2年生以下を対象にする「バンビの部」に出場した張本は、自分の顔よりも大きなラケットを振り回しながら、一学年上の選手たちを次々に倒し、圧倒的な強さで優勝した。その後、同大会では一度も敗れることなく大会6連覇を果たしている。福原愛の7連覇に次ぐ記録で、男子では史上初の快挙だった。
人生を大きく左右する決断が迫られたのは、小学4年生の時。全日本選手権で「一般の部」に出場するには日本国籍が必要だった。いずれ中国に戻ってコーチになろうと考えていた両親にとっては複雑な心境だったという。だが、無邪気に卓球と向き合う息子の思いを尊重することに決めた。2014年、日本卓球界の推薦も受け、父、妹の美和とともに日本国籍を取得した。
2016年にはJOCエリートアカデミーに入校。すると同年には18歳以下で争う世界ジュニア卓球選手権において、13歳で最年少優勝を飾る。2018年には、水谷隼の記録を上回る14歳205日の最年少で全日本選手権初優勝を果たし、男子シングルスの国内チャンピオンとなった。
日本卓球史上男子最年少でオリンピックの出場権を獲得した張本。さらなる伝説が生まれそうな兆しは見える。
選手プロフィール
- 張本智和(はりもと・ともかず)
- 卓球選手
- 生年月日:2003年6月27日
- 出身地:宮城県仙台市
- 身長/体重:175センチ/64キロ
- 出身校:稲付中(東京)→ 日本大学高(神奈川/在学中)
- 所属:木下マイスター東京
- オリンピックの経験:なし
- ツイッター:張本智和(@ktbMh4Ou53hEvzR)
- インスタグラム:張本智和 Harimoto Tomokazu(harimoto__tomokazu_1711)