奮闘する日本女子7人制ラグビー「サクラセブンズ」

リオ2016オリンピックからオリンピック競技として採用されている7人制ラグビー。2023年1月に行われたワールドラグビーセブンズシリーズ2023のハミルトン大会で過去最高6位という成績をおさめ、新たな歴史を切り拓いた日本女子ラグビー「サクラセブンズ」の活躍を辿った。

1 執筆者 Chiaki Nishimura
sakura sevens
(2023 Getty Images)

男子に比べると歴史が浅く、競技人口も少ない女子ラグビーだが、女子の勢いは男子に劣らず目を見張るものがある。

女子ラグビー界では、国際競技団体ワールドラグビーが「Women in Rugby(ラグビー界の女子選手たち)」という世界的キャンペーンを2017年から2025年にかけて展開しており、競技の発展が促進されている。

日本においても日本ラグビーフットボール協会を中心に女子ラグビーの普及が進められ、2014年に創設されたリーグ戦「ウィメンズセブンズ」は10年を迎えた。各地を転戦する形で試合が行われ、その模様はYouTubeでも配信されている。

サクラセブンズ、ベスト8の壁

7人制ラグビーがオリンピックで実施されるようになったのはリオ2016からだ。

「サクラセブンズ」の愛称で知られる女子ラグビー日本代表は、アジア予選を通じて出場権を獲得。オリンピック出場権を勝ち取った12チームが出場して行われたリオ2016では、第1戦でカナダ、第2戦で英国を相手に大敗を喫すなどしてグループステージ4位となったサクラセブンズは、9〜12位決定戦にまわって初戦でケニアとの対戦。ここで「1勝」をあげた。9位決定戦ではブラジルに敗れたものの、10位という結果でリオでの戦いに幕を下ろした。

その1勝を東京オリンピックにつなげるべく戦いを続けてきた日本女子代表だったが、開催国として出場権を手にした東京2020では、アメリカ合衆国、オーストラリア、中華人民共和国と同組となったグループステージで苦戦。9〜12位決定戦では再びケニア、ブラジルと対戦。最終的に全敗の12位という厳しい結果を突きつけられた。

だが、グラウンドを駆けるラガーウーマンたちに立ち止まるという選択肢はない。

パリ2024オリンピックに向けて強化が進められる中、オリンピック出場を目指す上で重要な戦いとの位置づけで臨んだ2022年8月のチャレンジャーシリーズ(チリ)では、東京オリンピックで敗北を喫したケニアや中華人民共和国が参戦する中、決勝でポーランドを破って優勝。世界最高峰シリーズとなるワールドラグビーセブンズシリーズ2023への昇格を決めた。

日本女子チームの昇格は、2015/2016と2017/2018シリーズ以来3度目。4季ぶりに世界トップチームと戦うチャンスを掴み取ったのである。

翌9月に南アフリカで開催された4年に1度のワールドカップ2022では、前回大会(2018年)で当時最高だった10位から、順位をひとつ上げての過去最高9位。ベスト8を目標に挑んだ同チームにとって、「ベスト8の壁」を突きつけられる悔しい結果となったものの、キャプテンの平野優芽(ひらの・ゆめ)は「サクラセブンズはしばらく良い結果が出せず、苦しい時期が続いていましたが、今回の9位は自信になると思います。ここからまた一体感が生まれて、さらに成長していきます」とポジティブに捉え、成長を誓った

過去最高の6位

現在行われているワールドラグビーセブンズシリーズでは、12チームがコアチームとして参加して今季7戦が行われている。2戦を残して日本女子は現在ランキング9位。

最初のドバイ大会で10位、次のケープタウン大会では11位となるなど苦戦し、2戦を終えた時点で総合ランキングは12チーム中10位に沈んだものの、今年1月中旬に行われたハミルトン大会で、日本チームは新たな歴史を刻むことになる。

1月21日、22日にニュージーランドで行われたこの大会で、決勝トーナメントに進出したサクラセブンズは、準々決勝でニュージーランドに43-12で敗れたが、5位決定準決勝でフランスを相手に12-19で勝利をおさめ、5位決定戦では英国と対戦。結果は10-14で敗れはしたものの、3シーズン目の挑戦にして過去最高の6位となる成績を収めた。そして目標としていた8位へとランキングを上げたのだった。

リオ2016オリンピックで主将を務めた中村知春は、「長く掛かりましたがやっと、ワールドシリーズで過去の自分たちを超えることができました」とその思いを日本ラグビーフットボール協会のウェブサイトで語った。

サクラセブンズは1月末のシドニー大会でも8位となったが、3月3日〜5日のバンクーバー大会で9位となり、2大会を残して現在総合ランキングは9位。

キャプテン平野は、「日本代表の強みや成長を感じながらも、まだまだ自分達は強くないことも再確認することが出来ました。どの試合もどの相手にも、コンスタントに精度の高いプレーを発揮できるよう力をつけていきたいと思います」と、次戦に向けて気持ちを切り替えた。

パリ2024オリンピックへの道

女子セブンズの世界の勢力図を見てみると、東京2020オリンピック金メダルのニュージーランド代表とオーストラリア代表が圧倒的な強さを示している。ニュージーランドは今季のワールドラグビーセブンズシリーズで4勝をあげており、すでにパリ2024オリンピックへの出場を確かなものとした。

同国に続くのが、リオ2016オリンピックを制したオーストラリアやアメリカ合衆国で、パリ2024が開催されるフランス代表も前回大会の銀メダリストとしてその力を発揮している。

ワールドラグビーセブンズシリーズ2023の現在(3月6日)のランキングでは、この4カ国にアイルランド、フィジー、英国、カナダが続き、9位が日本。カナダと日本、そして10位のスペインが勝ち点20点台で拮抗しており、安定してベスト8進出できるようになれば、日本はまたさらにレベルを上げたことになるだろう。

パリ2024オリンピックに向けては、まずは同シリーズの上位4チームにオリンピック出場権が与えられる。現在の状況をみる限り、ニュージーランドのほか、オーストラリア、アメリカ合衆国などがその枠を掴むことが予想され、そのほかのチームは大陸予選、オリンピック最終予選などを通じて出場権が割り当てられる。

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