神童・張本智和、頂点への道のり

15歳にして卓球界で旋風を巻き起こし、ユースオリンピックの銀メダルを獲得した張本智和は、憧れの存在でもある羽生結弦の後に続きたいと考えている。

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Harimoto new THUMB

張本智和にはいくつもの異名がある……。

この日本の神童は、卓球界のモーツァルトとさえも呼ばれてきた。

一般的な15歳の少年が目指すことといえば、学校の試験でいい点数を取ることかもしれない。しかし張本は、ブダペストでのITTF世界卓球選手権東京2020でのメダル獲得を狙っている。

日本の若きエースは世界ランキング4位につけ、トップを伺う勢いで急成長を遂げている。

 しかし、憧れの存在 羽生結弦の背中を追いかける張本は、頂点へと続く道のりが平坦ではないことを思い知るに違いない。

「世界ランク1位になり、世界選手権とオリンピックを制覇できるようベストを尽くしたい。卓球ファンの声援を糧に、これらの目標を達成したい」 - 張本智和はITFFにこう語った

日本の同世代の子供たちと同じように、張本もアニメシリーズ**『名探偵コナン』**の大ファンだ。

張本が一番の趣味に挙げるのはカラオケ。「とにかく歌うのが好き。ストレス発散にもいいので」と語った。

飛躍

これまでの選手生活において、張本はさまざまな感情と向き合ってきた。

 2017年8月のチェコオープンでは歴史を塗り替え、史上最年少の14歳61日でITFFワールドツアーを制覇。

翌2018年にはさらに大きな勲章を手に入れ、リオ2016男子シングルス銅メダリストの水谷隼を倒し、全日本選手権で最年少優勝記録を更新した

4月のアジアカップでは、かつてのアイドル、世界ランク1位のファン・ジェンドンにグループステージで勝利。最終的には準々決勝まで勝ち進む。

しかし、張本が本当の意味で世界を震撼させたのは、その2カ月後に北九州で行われたジャパンオープンでのことだった。

張本はオリンピック男子シングルス金メダリストマー・ロンを6ゲームで下し、準決勝へ進出。

そのマーにリオ2016決勝で敗れたロンドン2012王者ジャン・ジーカも退け、地元日本で大きな勲章を手に入れた。

15歳となった張本は、金メダルの有力候補としてユースオリンピックに臨んだ。

しかし、ブエノスアイレスでは決勝で中国のワン・チューチンに4-1で敗れ、銀メダルに終わる。

それでも張本の勢いは止まらず、12月には韓国の仁川で最も大きな勝利をつかんだ。

ワールドツアーグランドファイナルの準決勝では、ブラジルのウーゴ・カルデラノを圧倒。リン・ガオユエンとの決勝も4-1で制し、15歳172日で栄冠に輝いた。

グランドファイナルのシングルスで最年少優勝を果たした張本は、世界ランキングでも3位に浮上する。

翌2019年1月、ハンガリーオープンでYOG王者のワンを下したリンが優勝し、世界ランキングで再び張本を上回ったことを考えれば、世界トップ3に名を連ねたこの勝利には極めて大きな価値があった。

2019年の歩み

張本は連覇が懸かった全日本選手権に出場するため、ブダペストでのワールドツアー初戦を欠場。

しかし準決勝で大島祐哉に敗れ、10度目の優勝を果たした水谷に王座を明け渡してしまう。

それでも大阪では無冠に終わらず、木造勇人と組んだ男子ダブルスで優勝。混合ダブルスでも長﨑美柚とのペアで銀メダルを手にした。

2019年のワールドツアー初参戦となった大会は、3月末にドーハで行われたカタールオープンだった。

年間6戦行われるワールドツアープラチナイベントの初戦で、張本は準々決勝に進出。しかしスウェーデンのマティアス・ファルクにまさかの敗北を喫した。

その1週間後、張本は横浜でのアジアカップに臨んだ。

予選リーグの成績は2位。カタールで栄冠を手にし、調子を取り戻していたマー・ロンに1-3で敗れた。

それでも準々決勝に勝ち進むと、世界ランク6位の実力者、韓国のイ・サンスを4-1で退ける。

しかし、指を痛めていた張本は準決勝で力尽き、ファンに1-4で敗北。決勝でもファンがマーを下した。

そして4月、張本は第4シードでブダペストでの世界卓球選手権を迎えた。指の負傷は完治していないが、13歳にしてベスト8に勝ち進んだ2年前 の成績を上回りたいと意気込んでいる。

第2の張本を紹介

妹の美和もカデットで旋風を巻き起こしている。

兄・智和のジャパンオープン優勝から数週間後、10歳の張本美和は太倉での中国ジュニア&カデットオープンに出場し、ミニカデット(U-12)シングルスの栄冠を掲げた。

そして今年2月には、チェコオープンのカデット(U-15)で決勝に進出

同月末にはエーレブルーでのスウェーデンオープンで好成績を残した。

U-18ジュニアで準々決勝、カデットで準決勝にそれぞれ勝ち上がると、ミニカデットでは第1シードのアンナ・ハーシー(ウェールズ)をストレートで下して優勝した。

智和と美和の両親は、世界卓球選手権に出場した元中国代表のジャン・ユージャン・リン。張本兄妹のサクセスストーリーは、それほど驚くことではないのかもしれない。

ジャン・ユーは1998年にコーチとして来日し、仙台で生活。智和もジャン・ジーヘとしてこの街に生まれた。

一家は2014年に日本へ帰化し、名字を張本に改名。

2人の神童は昨年、「非公式」ながらも直接対決を楽しんだ。

東京2020出場を狙うには若すぎる美和だが、5年後には16歳でパリ2024を迎えることになる。

フランスでは兄妹で混合ダブルスのペアを組み、シングルスでは揃ってメダルを争う姿が見られるかもしれない。

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