わずか12歳でエリトリアを脱出したタクロウィニ・ガブリエソスは、走ることと陸上競技を愛する気持ちとともに、一歩ずつ進んできた。
祖国エリトリアを経て、スーダンを北上し、エジプトでは砂漠を徒歩で横断してイスラエルにたどり着くという過酷な道を乗り越えてきた。
現在、彼はイスラエルの首都テルアビブに住んでおり、IOC難民選手奨学金の支援を受けながら、エメク・ヘーフェルというクラブでトレーニングを続けている。
23歳の彼は、今夏に開催される東京2020のIOC難民選手団入りを目指す、最もエキサイティングな才能の持ち主の一人だ。
中長距離ランナーであるガブリエソスは、3000m、5000m、10000m、ハーフマラソン、そして2020年と2021年にはマラソンに出場しており、努力の甲斐もあって着実に走破可能な距離が伸びている。
難民アスリートであるため、最初から大きな障害を経験したものの、肉体的かつ精神的な強さ、そして前向きな姿勢が彼というアスリートを物語っている。
ガブリエソスは、2021年6月に発表されるIOC難民選手団の一員として、東京2020の出場を目指している37人の難民アスリート奨学金受給者の一人だ。
ドーハ2019陸上競技世界選手権大会に難民選手団として出場する6人のアスリートの1人に選ばれたガブリエソスは、大会前に大きな挫折を味わった。
イスタンブールでの乗り継ぎの際にビザの問題が発生し、トルコの空港に27時間も滞在することになってしまったのだ。これは、世界最高の選手と対峙するエリートアスリートにとって、この影響は大き過ぎた。
2019年7月、ガブリエソスは5000mで14分15秒05の自己ベストを更新したが、ドーハでは14分28秒11を記録。
それでも前向きな彼は、World Athleticsにこう述べている:
「自分がトップレベルではないことはわかっている。けれど、トップレベルの選手と競い合うことがどういうことなのかがわかった」
その後、2020年10月には、ポーランドのグディニアで開催されたハーフマラソンの世界選手権に、再び難民選手団として出場する準備をしていたが、またしてもビザの問題が障害となって渡航できなかった。
難民アスリートにとって、トラック外での障害は、トラック上の相手よりも厄介で、時には大会出場が認められるだけで勝利に匹敵すると言える。
「自分は諦めない」 - タクロウィニ・ガブリエソス
挫折を乗り越え、さらにトレーニングを続ける能力こそ、今日のガブリエソスを恐るべきアスリートにしている。ポーランドでの失望から2ヵ月後、彼はハーフマラソンで1時間2分21秒という過去最高のタイムを記録した。
その3ヵ月後の2021年3月14日には、イスラエルのフラ・レイク・パークで開催されたマラソンに出場し、2時間10分55秒を記録し、難民アスリートとして初めてオリンピック出場権を獲得した。
ちなみに、彼にとっては2回目のマラソンだった。
ビザやステータスの問題、世界的なパンデミックによる混乱や制限など、まったく予測不可能な1年半の間、どういうわけかタクロウィニ・ガブリエソスは以前より速く走れるようになった。
2021年5月、彼はWorld Athleticsに「去年よりも調子がいいと思うけれど、パンデミックによる制限で肉体的にも精神的にもトレーニングは大変だった」と語った。
東京は、彼にとって目指すべき明確な目標だ。
「オリンピックはプロのアスリートとしての私の夢であり、IOC難民選手団の一員になることはとても名誉なこと」と語った。
「何事も成せること、諦めてはいけないということを伝えたい」