卓球・張本智和「この舞台を味わって楽しんで、笑顔で終える」パリ2024オリンピック

執筆者 Risa Bellino
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卓球・張本智和男子シングルス一回戦突破/パリ2024オリンピック
写真: 2024 Getty Images

卓球ニッポンのエースとして水谷隼(じゅん)からバトンを受け取った張本智和は、パリ2024での自身2度目のオリンピックで、中華人民共和国の強固な壁を打ち破ることを目指す。

しかし、東京2020から新種目として加わった混合ダブルスで、パリ大会1日目(7月27日)に第1戦を迎えたエースの張本と早田ひなペアは、リ・ジョンシク&ム・クムヨン(朝鮮民主主義人民共和国)と対戦し、ゲームカウント1−4でまさかの初戦敗退。痛恨の黒星発進となった。男子シングルス、男子団体戦にも出場する張本は、その悔しさをバネに2種目で表彰台を目指す。

張本にとって、今年は東京大会以上に特別なオリンピックとなる。それは、女子団体代表の座を掴んだ妹・美和とともに兄妹そろって挑むオリンピックだからだ。

ここでは、オリンピックイヤーに入ってから快進撃を続け、パリ本番に向けて益々期待が高まる張本の、家族4人で挑む大舞台への歩みを辿る。

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張本智和の強み、"やるからには、とことんやる" 初心を忘れない

国内外で次々と最年少記録を塗り替え、日本男子の不動のエースに成長した兄と、驚異的な成長で卓球界を沸かせる妹が、真摯に卓球に向き合う姿勢が崩れないのは、張本家の教えがあるからと言えるだろう。

Olympics.comの独占インタビューで、両親から教わった一番大切なことは?と質問すると、智和は「卓球を愛すること」と答えた。

中国出身の卓球選手だった父・宇(ゆう)さんと、世界選手権中国代表経験を持つ母・凌(りん)さんのもと、仙台で生まれ育った智和と美和は、お互いに2歳の頃から卓球のラケットを握り、彼らを取り巻く環境には常に卓球があった。

「すごく楽しく、ときには厳しく教わってきました」

智和が生まれた頃、卓球コーチとして活動していた両親だが、プロ選手としての難しさを知る二人は、卓球一本の英才教育ではなく、学業優先の教育方針のもと、兄妹を育てる。卓球の面白さに目覚めていった二人は、学校が終わると、卓球を少しでも長く続けるために、その日の勉強と宿題を終わらせて卓球場へ急ぐという、文武両道の学生生活を過ごしてきた。

成長するにつれ、世界の強敵と対戦し、大きな挫折や葛藤、さまざまな課題に直面するスポーツの世界。そこで両親が二人に教えたのは、原点を忘れないことだった。「卓球を好きでいることが一番大事だということを教わったので、そこは今もずっと心に留めています」と智和は語る。「第一線で活躍し続けられるのが当たり前ではないですけど、プレッシャーだったり、期待に応えながら、目標であるオリンピックで金メダルを取れるまでは全力で駆け抜けていきたい」と、力強く口にした。

我慢の一年から、パリへ向けて上昇気流へ

張本は、2023年の年末、「我慢の一年でした。何かが良くなれば何かが悪くなるような、常にあと一歩だった気がします。しかし、時には近道だけが正しいとは限らない、遠回りしないと気づけなかったことがたくさんありました」と自身のSNSでシーズンを振り返った。

2022年春に大学に入学し、所属先を変えて新しい環境でスタートを切り、「全力で走り抜いた1年」という張本は、アジアカップを制覇した11月に、自己最高で日本男子最高となる世界ランキング2位に上昇。初めて世界3位になった日から約4年を経て、自己最高記録を更新した。

しかしながら、2023年、パリオリンピック選考ポイントランキング首位で迎えた1月の全日本卓球選手男子シングルスで、前回王者の戸上隼輔に2-4で敗戦。5月の世界卓球2023では、準々決勝を全ゲーム2点差という僅差で敗れて惜しくもベスト8に終わる。国内のTリーグと全農CUPでは優勝を果たすも、国際大会シリーズWTTの最高順位はベスト4と、あと僅かのところでメダルに届かないシーズンとなった。

2024年の張本のオリンピックシーズンは、1月の全日本卓球選手権男子シングルスから始まった。決勝で2大会連続王者の戸上隼輔を激闘の末4-3で下し、6年ぶり2度目の優勝を飾り、最高のスタートを切る。

5月と6月に開催されたWTTシリーズでは、2大会でベスト4入りを果たすと、チュニスで開催されたWTTスターコンテンダーで、男子シングルス、男子ダブルス、混合ダブルスで金メダルを獲得。翌週の7月にバンコクで開催された同大会では、圧巻のプレーで2大会連続3冠の快挙を達成。大逆転で優勝した混合ダブルスではパリ2024の第2シードを決め、男子シングルスでも準決勝でリン・ユンジュ(林昀儒/Chinese Taipei)を破ったことで、日本男子を団体第4シードに導き、2週連続で格上を相手に優勝を果たしたことで2023年で11位にまで落ち込んでいた世界ランキングを9位に上げて、パリへ挑むこととなった。

張本智和、パリ2024での対戦相手

7月24日にパリ2024卓球競技の全種目組み合わせトーナメント表が発表された。

日本男子のエース張本は男子シングルスを第6シードで、準々決勝で世界卓球2連覇で世界ランキング4位のファン・ジェンドン(樊振東/中国)と当たる組み合わせとなった。初戦の相手、サウスポーのアレグロ・マーティン(ベルギー/同79位)を相手に、4-0でストレート勝ちし、2回戦へ進出した張本は、次にノシャド・アラミヤン(イラン・イスラム共和国/同51位)と対戦することになるだろう。3回戦では、今年のワールドカップ・モナコ大会で対戦し張本が4-2で下したマルコス・フレイタス(ポルトガル/同17位)との対戦が予想される。

男子団体戦の日本初戦はオーストラリアと対戦。その後、Chinese Taipei対エジプトの勝者と準々決勝で当たる。準決勝はドイツとの対戦が濃厚となるだろう。こちらも中国と韓国チームは別組みで決勝までは対戦しない組み合わせとなった。

東京2020で金メダル4個、銀メダル3つを獲得した強豪中国の壁を日本がどれだけ崩すことができるか。張本の2度目のオリンピックの挑戦がはじまる。

卓球日本代表、張本智和の主な戦績

2024年

  • 1月 天皇杯2024年全日本卓球選手権大会…男子シングルス優勝
  • 5月 WTTスターコンテンダー・リュブリャナ(スロベニア)…男子シングルスベスト4
  • 6月 WTTコンテンダー・ザグレブ(クロアチア)…男子シングルスベスト4
  • 6月 WTTスターコンテンダー・チュニス(チュニジア)…男子シングルス優勝、混合ダブルス優勝(ペア:早田ひな)、男子ダブルス 優勝(ペア:松島輝空)
  • 7月 WTTスターコンテンダー・バンコク(タイ)…男子シングルス優勝、混合ダブルス優勝(ペア:早田ひな)、男子ダブルス優勝(ペア:松島輝空)

2023年

  • 1月 天皇杯2023年全日本卓球選手権大会…男子シングルス2位、混合ダブルス優勝(ペア:早田ひな)、男子ダブルス優勝(ペア:森薗政崇)
  • 3月 WTTスターコンテンダー・ゴア(インド)…男子シングルスベスト4
  • 4月 WTTチャンピオンズ・マカオ…男子シングルスベスト4
  • 5月 世界卓球2023・ダーバン…男子シングルスベスト8、混合ダブルス2位(ペア:早田ひな)
  • 6月 Tリーグ NOJIMA CUP2023…男子シングルス優勝
  • 7月 全農CUP東京大会…男子シングルス優勝

2022年

  • 7月 WTT世界選手権・ブダペスト(ハンガリー)…男子シングルス 優勝
  • 8月 WTTスターコンテンダー・チュニス(チュニジア)…混合ダブルス優勝(ペア:張本美和)、男子ダブルス優勝(ペア:木造勇人)
  • 11月 ITTF-ATTUアジアカップ2022…男子シングルス 優勝
  • 11月 全農CUP TOP32船橋大会…男子シングルス 優勝

2021年

  • 1月 コンテンダー・ドーハ(カタール)…男子シングルスベスト4
  • 7-8月 東京2020オリンピック…男子シングルス9位、男子団体銅メダル
  • 9月 WTTスターコンテンダー・ドーハ(カタール)…男子シングルス 優勝

2020年

  • 2月 ITTFワールドツアー・ハンガリーオープン・ブダペスト…男子シングルス 優勝
  • 11月 卓球男子ワールドカップ…男子シングルス 3位

2019年

  • 8月 ITTFワールドツアー・ブルガリアオープン・パナギュリシテ…男子シングルス 優勝

2018年

  • 1月 全日本選手権…男子シングルス 優勝
  • 6月 世界卓球2017・デュッセルドルフ…男子シングルス ベスト8
  • 6月 ワールドツアー・ジャパンオープン・北九州…男子シングルス 優勝
  • 12月 ITTFワールドツアーグランドファイナル・仁川…男子シングルス 優勝

2017年

  • 8月 ワールドツアー・チェコオープン・オロモウツ…男子シングルス 優勝

2016年

  • 6月 ワールドツアー・ジャパンオープン・東京…男子シングルス U21優勝
  • 12月 世界ジュニア選手権・ケープタウン(南アフリカ)…男子シングルス優勝

2015年以前

  • 9月 ITTFジュニアサーキット・チャイニーズタイペイジュニア&カデットオープン…ジュニア男子シングルス優勝、ジュニア男子ダブルス3位(ペア:宇田幸矢)、ジュニア男子団体2位
  • 2010年~2015年 全日本卓球選手権大会…バンビの部、カブの部、ホープスの部優勝(6連覇)

パリ2024オリンピック、卓球の試合日程

以下すべて現地時間(日本はパリより7時間進んでいる)。日程は変更になる可能性もある

7月27日(土)

  • 15:00〜16:30 男子・女子シングルス予選ラウンド
  • 16:30〜18:00 混合ダブルス1回戦 第1〜8試合
  • 20:00〜23:00 男子・女子シングルス1回戦 第1〜32試合

7月28日(日)

  • 10:00〜14:00 男子・女子シングルス1回戦 第1〜32試合
  • 16:00〜18:00 混合ダブルス準々決勝 第1〜4試合
  • 20:00〜23:00 男子・女子シングルス1回戦 第1〜32試合

7月29日(月)

  • 10:00〜14:00 男子・女子シングルス1回戦 第1〜32試合
  • 17:00〜19:00 混合ダブルス準決勝 第1、2試合
  • 20:00〜23:00 男子・女子シングルス2回戦 第1〜16試合

7月30日(火)

  • 10:00〜12:00 男子・女子シングルス2回戦 第1〜16試合
  • 13:30〜14:30 混合ダブルス3位決定戦
  • 14:30〜15:30 混合ダブルス決勝
  • 15:30〜16:00 混合ダブルス表彰式

7月31日(水)

  • 10:00〜13:00 男子・女子シングルス2回戦 第1〜16試合
  • 15:00〜18:00 男子・女子シングルス3回戦 第1〜8試合
  • 20:00〜23:00 男子・女子シングルス3回戦 第1〜8試合

8月1日(木)

  • 10:00〜11:00 女子シングルス準々決勝 第1試合
  • 11:00〜12:00 女子シングルス準々決勝 第2試合
  • 12:00〜13:00 男子シングルス準々決勝 第1試合
  • 15:00〜16:00 女子シングルス準々決勝 第3試合
  • 16:00〜17:00 男子シングルス準々決勝 第2試合
  • 17:00〜18:00 男子シングルス準々決勝 第3試合
  • 20:00〜21:00 女子シングルス準々決勝 第4試合
  • 21:00〜22:00 男子シングルス準々決勝 第4試合

8月2日(金)

  • 10:00〜11:00 女子シングルス準決勝 第1試合
  • 11:00〜12:00 男子シングルス準決勝 第1試合
  • 13:30〜14:30 女子シングルス準決勝 第2試合
  • 14:30〜15:30 男子シングルス準決勝 第2試合

8月3日(土)

  • 13:30〜14:30 女子シングルス3位決定戦
  • 14:30〜15:30 女子シングルス決勝
  • 15:30〜16:00 女子シングルス表彰式

8月4日(日)

  • 13:30〜14:30 男子シングルス3位決定戦
  • 14:30〜15:30 男子シングルス決勝
  • 15:30〜16:00 男子シングルス表彰式

8月5日(月)

  • 10:00〜13:00 男子・女子団体1回戦 第1、2試合
  • 15:00〜18:00 男子・女子団体1回戦 第3、4試合
  • 20:00〜23:00 男子・女子団体1回戦 第5、6試合

8月6日(火)

  • 10:00〜13:00 男子・女子団体1回戦 第7、8試合
  • 15:00〜18:00 男子・女子団体準々決勝 第1試合
  • 20:00〜23:00 男子・女子団体準々決勝 第2試合

8月7日(水)

  • 10:00〜13:00 男子・女子団体準々決勝 第3試合
  • 15:00〜18:00 男子・女子団体準々決勝 第4試合
  • 20:00〜23:00 男子団体準決勝 第1試合

8月8日(木)

  • 10:00〜13:00 男子団体準決勝 第2試合
  • 15:00〜18:00 女子団体準決勝 第1試合
  • 20:00〜23:00 女子団体準決勝 第2試合

8月9日(金)

  • 10:00〜13:00 男子団体3位決定戦
  • 15:00〜18:00 男子団体決勝
  • 18:00〜18:30 男子団体表彰式

8月10日(土)

  • 10:00〜13:00 女子団体3位決定戦
  • 15:00〜18:00 女子団体決勝
  • 18:00〜18:30 女子団体表彰式

パリ2024オリンピックの注目競技・注目選手[日付別]

卓球・張本智和プロフィール

  • 生年月日:2003年6月27日(21歳)
  • 出身地:宮城県仙台市
  • 所属:智和企画
  • オリンピックの経験:東京2020(卓球男子団体銅メダル、男子シングルスベスト16)
  • ソーシャルメディア:XInstagram