初めて飛行機に乗って行った場所がどこだったか、どれくらいの人が記憶しているだろうか?
「初めて親元を離れて海外まで来て、正直、飛行機もまったく乗ったことがなかったので、ちょっと緊張してたんですけど、こういう風に楽しく滑ることができてよかったです」
2009年生まれの吉沢恋(ここ)にとって、初めて乗った飛行機の最終目的地はイタリア・ローマ。ストリート・スケートボード・ローマ2022(6月26日〜7月3日)に参加するためである。
夢の世界が現実に
ストリート・スケートボード・ローマ2022に参加している女子10選手の中で、吉沢恋は最年少の中学1年生。
「7歳くらいのときにスケートボードを始めた」という吉沢は、昨年開催された東京オリンピックを遠い存在のように感じていた。
「まだそのときは、ここ(ローマ大会)に出るのも夢みたいだったので、いつかそういうところに出られたらなって思いながら、(東京オリンピックを)見ていました」
東京2020オリンピック以降、日本では2021年12月に日本選手権、2022年4月に日本オープンが行われ、そこで好成績を残した吉沢は、東京大会からおよそ1年後の今、パリオリンピックの予選大会のひとつとなるローマ大会の選手リストに名を連ねた。
5本目のトリックを決めファイナルへ
6月29日に実施されたローマ大会のオープン予選は、世界ランキングトップ5および東京オリンピックのメダリストらシード選手を除くスケーターが参加し、世界ランキングの低い順にヒート1から割り当てられ、世界ランキングがついていない吉沢はヒート1で予選に登場した。
ラン2本のみで行われた予選で、吉沢は2本とも70点台の安定したパフォーマンスを見せると、予選2位で準々決勝進出、さらには16人で競われる準決勝へと駒を進めた。
吉沢が強さを見せつけたのは、7月2日準決勝のベストトリックの最後の1本である。
スケートボードのストリート種目は、ラン2本のうちの高い方の得点と、ベストトリック5本のうちの高得点2つが加算され、最終的な成績となる。
決勝に進めるのは準決勝に参加した16選手のうち8選手。トリックの2〜4本目を連続して失敗し、順位は二桁台に沈んでいた吉沢だったが、5本目で86.51点をマークして一気に4位まで順位をあげると、オリンピック金メダリストの**西矢椛や、銅メダリストの中山楓奈**(ふうな)とともに決勝進出を決めた。
「決めなきゃいけないというか、決めたら上がれるというのはわかっていたんですけど、決められるか落ちるかのどっちかで…。緊張していたんですけど、最後乗れて(決勝に)上がることができて嬉しかったです」
「初めての国際大会で、ここ(準決勝)まで上がってこられたのがそもそも奇跡だったので、不安とかはあまりなかったです」と、吉沢はOlympics.comに語る。
目標はパリオリンピック
今回のローマ大会はパリオリンピックの予選大会に位置付けられ、選手らにはポイントが与えられ、それがオリンピック出場をかけたランキングにつながる。
初の国際大会、初の海外旅行、初の飛行機など、吉沢にとって初めてづくしの1週間にわたる大会は、いよいよ7月3日にクライマックスを迎える。
「明日(7月3日の決勝)は今日よりももっと完璧でカッコよくて誰からも憧れられるようなスケートをしたいと思います」
「パリオリンピックを目指して頑張っていきたい」という吉沢の活躍を見届けたい。
決勝の模様はOlympics.comで視聴可能。