スポーツクライミング・安楽宙斗「自分らしさ全開で」初出場パリ2024オリンピックへ
東京2020で新競技として採用されてから種目構成が変更され、ボルダー&リードの複合種目とスピード種目がふたつに分かれてパリ2024で初開催される、スポーツクライミング。
オリンピック競技となってからますます人気が上がり、競技人口が増えているスポーツクライミングにおいて世界が注目するのは、日本の次世代アスリートたちだ。長年日本のクライミング界を支え、牽引してきた東京2020銅メダリストの野口啓代(東京大会後引退)、銀メダリストの野中生萌、4位入賞の楢崎智亜に続き、若手の台頭が目覚ましいTEAM JAPANは、ここ数年のワールドカップで表彰台の常連となっている。
その中でも「ボルダー」と「リード」の単種目、さらに「複合種目」の3つで世界ランキングのトップに立ち(8月4日時点)、パリでオリンピックデビューを飾るのが、高校3年生の安楽宙斗(あんらく・そらと)だ。
パリ2024複合種目男子は、8月5日と7日に準決勝が行われ、ボルダーとリードそれぞれの結果を合計した上位8人が8月9日の決勝に進み、オリンピックメダル獲得を目指す。
ここでは、17歳でオリンピックの大舞台に挑む安楽の強み、パリまでの道のりについて紹介する。
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安楽宙斗の強みは『脱力クライミング』
小学2年生の時に、父親のダイエットに付き添って近所のスポーツクライミングジムに行ったことがきっかけでクライミングの楽しさに目覚め、一気にのめり込んだという安楽は、それからとにかく夢中で壁を登り続けた。
好きなこと、頑張ろうと決めた事は頑張れる性格だと語る安楽は、得意教科の数学の成績は学年トップクラス。海外遠征や世界でトップクライマーとして活躍するために、独学で英語の勉強にも没頭する、進学校に通う文武両道の現役高校生だ。
体格も筋力も異なる選手たちが、それぞれの得意とするスタイル・特徴を活かして課題を攻略していくところが魅力であるスポーツクライミングで、『脱力クライマー』と呼ばれる安楽のクライミングスタイルは、国内外で多くのファンを魅了する。168cmの細身の体型に、腕を開くと180cmを超えるという長いリーチを持つ安楽は、鍛え上げた指の力と体幹で、力まずに身体を上手く使って壁に吸い付くようにホールドを掴んでいく。
東京2020銅メダリストの野口啓代も、安楽の特徴について「ボディーバランスが素晴らしい選手」と表現する。難関課題を攻略する時には「バランス感覚であったり思い切りの良さがすごく出ている。勝負強い」と語り、彼のクライミングセンスはパリでも金メダル候補になると、日本テレビのGoing! Sports Newsで予想した。
「オリンピックで一番強い自分を出す」
2021年の東京オリンピック後から国際大会に出場し、世界ユース選手権のリードで2連覇、ボルダーでも銀・銅メダルを2年連続で獲得すると、「高校生の間に出場したい」と目標にしていたワールドカップに高校2年生の2023年の時に初参戦を果たし、ボルダーとリード4大会で優勝、2種目で年間総合優勝の快挙を成し遂げた。
飛躍の年となったオリンピックプレイヤーについて、「去年は成長が止まらない年で、大会を重ねる度にどんどん強くなっていく実感が増していって、楽しかったです」と千葉テレビのインタビューで語るように、自分でも驚くほどの急成長を遂げた。
しかし、8月に初出場したシニアの世界選手権で、リード種目で準優勝、ボルダー種目で4位に入るも、3位以内に入ればオリンピック内定となる複合種目で自身の力を発揮できず4位に終わった安楽は、悔しさで涙を流した。それは、パリオリンピックを意識しすぎたことで本来のクライミングを発揮できなくなるという、これまでにない経験だった。同年11月のオリンピック出場をかけたアジア大陸予選大会では、再び試合前に大きな緊張を感じるも、「緊張することは意味がない」と考えを切り替えることができた安楽は、ボルダーとリードの両方で出場者唯一の全完登を果たし、念願のパリ2024への切符を掴み取った。
結果を求められる大会で精神面のコントロールができるようになった経験は、パリ2024でも彼の大きな強みとなるだろう。
17歳の安楽が、パリで新種目として開催される複合で初代王者のタイトルを掴む瞬間を目撃することができるか、期待が高まる。
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スポーツクライミング日本代表、安楽宙斗の主な戦績
2024年
- 6月30日 IFSCクライミング・ワールドカップ(B)インスブルック大会 3位
- 5月6日 IFSCクライミング・ワールドカップ(B)ソルトレークシティ大会 優勝
- 4月14日 IFSCクライミング・ワールドカップ(L)呉江大会 3位
- 4月10日 IFSCクライミング・ワールドカップ(B)柯橋大会 2位
2023年
- 11月12日 IFSCアジア大陸予選・ジャカルタ(C)優勝
- 9月24日 IFSCクライミング・ワールドカップ(L)呉江大会 優勝
- 9月9日 IFSCスポーツクライミングワールドカップ(L)コペル大会 優勝
- 8月12日 IFSC クライミング 世界選手権・ベルン(L)2位(B)4位(C)4位
- 7月15日 IFSCクライミング・ワールドカップ(L)ブリアンソン大会 優勝
- 7月9日 IFSCクライミング・ワールドカップ(L)シャモニー大会 3位
- 6月18日 IFSCクライミング・ワールドカップ(B)インスブルック大会 優勝
- 5月22日 IFSCクライミング・ワールドカップ(B)ソルトレークシティ大会 2位
- 4月8日 ボルダー&リードジャパンカップ2023倉吉(C)優勝
2022年
- 11月12日 コンバインドジャパンカップ 優勝
- 9月1日 IFSCクライミング世界ユース選手権(L)優勝(B)3位
- 6月11日 ボルダリングユース日本選手権倉吉大会(C)優勝
- 5月14日 リードユース日本選手権南砺大会 優勝
2021年
- 12月18日 ボルダリングユース日本選手権倉吉大会 3位
- 8月31日 IFSCクライミング世界ユース選手権(L)優勝(B)2位
- 5月29日 リードユース日本選手権南砺大会 優勝
2020年
- 11月21日 ボルダリングユース日本選手権葛飾大会 優勝
- 10月10日 リードユース日本選手権南砺大会 優勝
2019年
- 9月14日 JOCジュニアオリンピックカップ大会(L)2位
- 5月18日 ボルダリング日本選手権鳥取大会 2位
- 3月23日 リードユース日本選手権印西大会2位
2018年
- 8月11日 JOCジュニアオリンピックカップ大会(L)優勝
- 5月19日 ボルダリングユース日本選手権鳥取大会2018 2位
※B=ボルダー、L=リード、S=スピード、C=複合
パリ2024オリンピック、スポーツクライミングの試合日程
以下、現地時間。スケジュールは変更になる可能性もある。
8月5日(月)
- 10:00 男子ボルダー&リード複合、ボルダー準決勝
- 13:00 女子スピード予選シード
- 13:40 女子スピード予選
8月6日(火)
- 10:00 女子ボルダー&リード複合、ボルダー準決勝
- 13:00 男子スピード予選シード
- 13:40 男子スピード予選
8月7日(水)
- 10:00 男子ボルダー&リード複合、リード準決勝
- 12:28 女子スピード準々決勝
- 12:46 女子スピード準決勝
- 12:55 女子スピード決勝戦
8月8日(木)
- 10:00 女子ボルダー&リード複合、リード準決勝
- 12:28 男子スピード準々決勝
- 12:46 男子スピード準決勝
- 12:55 男子スピード決勝戦
8月9日(金)
- 10:15 男子ボルダー&リード複合、ボルダー決勝戦
- 12:28 男子ボルダー&リード複合、リード決勝戦
8月10日(土)
- 10:15 女子ボルダー&リード複合、ボルダー決勝戦
- 12:28 女子ボルダー&リード複合、リード決勝戦
スポーツクライミング・安楽宙斗プロフィール
- 名前:安楽宙斗(あんらく・そらと)
- 生年月日:2006年11月14日(17歳)
- 出身地:千葉県八千代市
- オリンピック歴:初出場
- 出場種目:ボルダー&リード複合
- ソーシャルメディア:Instagram、threads
※年齢は2024年7月26日パリ2024オリンピック開会式当日を基準とした。