躍進するクライマー安楽宙斗、クライミング世界選手権へ

パリ 2024

ワールドカップのボルダー、リードのそれぞれで優勝するという日本人初の快挙を成し遂げたクライマー、安楽宙斗。日本人トップクライマーのひとりへと急成長した16歳、安楽宙斗のこの1年間の飛躍を辿った。

1 執筆者 Chiaki Nishimura
Anraku Sorato Lead
(Jan Virt / IFSC)

今からちょうど1年前のクライミング世界ユース選手権2022で表彰台に立っていた安楽宙斗(あんらく・そらと)が、1年後の現在、今度はシニアの世界選手権の舞台に立つ。だが、無名の選手としてではない。世界のトップアスリートにも引けを取らない勢いで、安楽はその戦いに挑もうとしている。

8月1日にスイス・ベルンで始まったスポーツクライミングの世界選手権では、12日までの日程でボルダー、リード、スピード、ボルダー&リード複合などの種目が行われ、それぞれの世界一が決まる。

パリ2024オリンピックの出場権がかかるこの大会の初日となった8月1日、国際スポーツクライミング連盟は、ボルダー予選に登場した安楽のパフォーマンスを投稿し、大会が開幕したことを伝えた。

積み重ねる「経験」と「実績」

高校2年生・16歳の安楽宙斗は、この世界選手権の注目選手のひとりとしてあげられる日本人クライマーのひとりだ。

4月に行われた国内大会のボルダー&リードジャパンカップで、安楽は前年11月に行われた前身となるコンバインドジャパンカップ2022に続く2連覇を達成した。前回大会では、東京2020オリンピックで4位に入賞した楢﨑智亜や、緒方良行、藤井快などが不在の中での優勝だったが、4月の大会では日本のトップ選手を抑えての勝利。2ヶ月前に行われていたボルダー、リードのジャパンカップではそれぞれ7位に沈んでおり、安楽は自らの成長を実感した。

「優勝することができました。素直に嬉しいです!成長もとても感じられました。今年は『経験』の年にできるよう精一杯頑張ります」(ソーシャルメディアより)

シニアデビューの今年を「経験の年」と位置付けた安楽だが、蓋を開けてみれば「経験」だけにとどまらない「実績」も積み重ね、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を遂げている。

スポーツクライミングの主要な国際大会として最も知られている大会は、世界各地を転戦し、年間18戦(ボルダー6戦、リード6戦、スピード6戦)が行われるワールドカップだ。

千葉県の高校に通う安楽は、2023年4月に八王子から始まったボルダーの大会でワールドカップデビューを果たし、初戦から6人で行われる決勝に進出して5位で戦いを終えると、その手応えをこうつづった。

「初めてのワールドカップで喜び、悔しさ、たくさんのことを感じられました。まだまだ足りないところはいっぱいありますが、もっと強くなれると確信しています!」

2戦目のソウル大会こそ29位に沈んだものの、世界と戦う若きアスリートにとってはそれも競技人生を鮮やかに彩る経験のひとつ。3戦目のソルトレークシティ大会では、「強くなれるという確信」に導かれるように表彰台に立ち、最終6戦目では初優勝を飾ると、年間総合1位に輝いた。

しかし、安楽の躍進はそこからも続く。

リードのワールドカップが6月のインスブルック大会で幕を開け、初戦から現在までの4大会すべてにおいて決勝に駒を進め、直近のフランス・ブリアンソン大会では優勝。決勝ではトップまでのぼる「完登」をただひとり達成し、観客からの大きな声援を受けて力強いガッツポーズを決めると、勝利インタビューでは「世界選手権でも勝つ」ことを英語で宣言した。

世界選手権を前に世界のトップ選手たちが出場していなかったとはいえ、それは勝利以上の意味を持つ。安楽は、ボルダー、リードのそれぞれで優勝した初の日本人選手として日本クライミング界の歴史を刻むこととなったのである。

パリ2024オリンピックで実施されるボルダー&リード複合では、ボルダーとリードそれぞれに秀でたスキルが求められる。安楽の活躍は他の日本人アスリートにとって良い刺激となったことは間違いない。

世界選手権では経験豊かなベテラン選手から、新進気鋭の若手選手までが一堂に会し、それぞれのすべてをここにぶつける。計り知れない可能性をのぞかせる16歳の安楽はどのようなパフォーマンスを見せるのだろうか。

男子ボルダーは現地時間8月1日に予選、4日に決勝が行われ、男子リードは8月3日が予選、6日に決勝が予定されている。またパリ2024オリンピックの出場権がかかる男子ボルダー&リード複合は9日に準決勝、12日に決勝が予定されている。戦いの模様はJ Sportで配信される。

スポーツクライミング世界選手権2023の日程

以下すべて現地(スイス・ベルン)時間。日本は+7時間

8月1日(火)

  • 9:00〜18:00 男子ボルダー予選

8月2日(水)

  • 11:00〜18:00 女子リード予選

8月3日(木)

  • 8:30〜15:00 男子リード予選
  • 15:30〜22:30 女子ボルダー予選

8月4日(金)

  • 10:00〜12:30 男子ボルダー準決勝
  • 18:30〜20:30 男子ボルダー決勝

8月5日(土)

  • 10:00〜12:30 女子ボルダー準決勝
  • 18:30〜20:30 女子ボルダー決勝

8月6日(日)

  • 10:00〜12:30 女子・男子リード準決勝
  • 18:30〜20:30 女子・男子リード決勝

8月7日(月)

  • 休み

8月8日(火)

  • 9:00〜19:00 女子・男子パラクライミング予選

8月9日(水)

  • 9:00〜11:30 女子ボルダー&リード複合準決勝(ボルダー)
  • 13:00〜15:30 男子ボルダー&リード複合準決勝(ボルダー)
  • 20:30〜22:30 女子・男子ボルダー&リード複合準決勝(リード)

8月10日(木)

  • 9:00〜13:00 女子・男子スピード予選
  • 14:00〜19:00 女子・男子パラクライミング決勝
  • 20:00〜21:00 女子・男子スピード決勝 - パリ2024オリンピック出場枠

8月11日(金)

  • 19:00〜22:00 女子ボルダー&リード複合決勝 - パリ2024オリンピック出場枠

8月12日(土)

  • 16:00〜19:00 男子ボルダー&リード複合決勝 - パリ2024オリンピック出場枠

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