オリンピックeスポーツシリーズ2023: チェスのグランドマスター、オレクサンドル・ボルトニクの2度目の挑戦
ウクライナ出身のグランドマスターが、オリンピックeスポーツシリーズ2023への出場と、それがチェスの発展にいかに役立つかをOlympics.comに語ってくれた。
2018年にオレクサンドル・ボルトニクがウクライナからテキサスに引っ越したとき、彼はストリーミングというものが可能であることさえ知らなかった。自国での生活ではTwitchにはまだ出会っていなかったから、チェスのストリーマーになることについて聞かれたときも、何から始めればいいのかわからなかったという。
「それを聞いたとき、「チェスのストリーマーって何?」と聞き返したのを覚えているよ」とボルトニクは振り返る。「2018年のウクライナではまだストリーミングは流行っていなかった。ここに来て知ったんだ。ゴミみたいなノートパソコンだったけど、最初の配信で200人の視聴者を集めた」。
それから5年以上経った今、ボルトニクはオンラインのチェスコミュニティに溶け込んでいる。グランドマスターは、Chess.comのストリーマーだ。オンラインで指導も行い、オンラインでの大会にも定期的に出場する。その中には、今週のオリンピックeスポーツシリーズも含まれている。彼はここで、ファイナル進出を目指している。
「Twitchはすべてを変えた」とボルトニクは言う。「パンデミックのおかげで、2年近くボードを使ったチェスはしていなかった。おかげですべてがオンラインに押し出された感じだ。多くのことがオンライン化された」。
ボルトニクは、この3年間でTwitchやYouTubeなどを席巻した急成長中のオンラインチェス・コミュニティの一員だ。彼は今でも対面でプレイするためにあちこちを旅しているが、彼が目にする活動の大部分は、Chess.comやその他のサイトで行われている。
もともと学校に通うためにテキサスに移住したが、中退してフルタイムでチェスをプレイすることにシフトした。するとアメリカでは、ヨーロッパとはかなり違いがあることに彼は気がついた。
「動き回りながらチェスをプレイしてお金を稼ぐことは難しい。ヨーロッパではイベントでプレイすることでお金を払うオーガナイザーもいる。多くはないけれど、良いことだ。彼らはグランドマスターになるための努力を評価してくれているんだ」。
オレクサンドル・ボルトニクが語る、ヨーロッパとアメリカのチェス大会の違いについて
チェスで生計を立てるのは、マドリードでもマイアミでも、簡単なことではない。多くのチェスプレイヤーは、たとえトッププレイヤーであっても、TwitchやYouTubeでのコンテンツ制作、コーチング、あるいはチェスとは別の仕事などでプレイする環境を賄う必要がある。その生活の中で、競技に勝つことは、娘を育てながら常に移動して仕事をしていく助けになる。
「ヨーロッパでの生活は、大陸中のオーガナイザーにメッセージを送ることに費やした」とボルトニクは言う。「スペインやフランスのオーガナイザーにメッセージを送り、大会に参加すればお金が払われるのかどうか聞いてみるんだ。彼らが何をオファーしてくれるかによってプランを決めていく」。
ボルトニクは過去5年間、プレーしながらシアトルからフロリダまでアメリカ中を旅した。アメリカでの初めての大会では、チェスセットを持参するように言われたことにカルチャーショックを受けたと振り返る。てっきり用意されているものとばかり思っていたからだ。
「これはアメリカだけのことだと思うから、びっくりした。主催者はたいてい、駒と時計とボードを用意してくれるんだ。あれがアメリカでのチェスライフってことだね」と彼は付け加えた。
ボルトニクは、オンライントーナメントに費やす時間が多くなっていることを自覚しているが、まだ旅も続けている。それが競争相手を見つける最適な方法であるからだ。しかし彼は、オンラインチェスの未来は明るいと信じている。
オレクサンドル・ボルトニク:オリンピックeスポーツシリーズに参加した理由
オリンピックeスポーツシリーズの厳しい予選に参加したのは、そのためでもある。ボルトニクは、複数の予選でノックアウトステージまで勝ち進んだが、最初の挑戦では2位どまりだった。
「最悪の負け方だった。一瞬、続けるべきかどうかとも考えた。でもやめることはできなかった。一度始めたらやめられないタチなんだ」そう語った彼は、熾烈な戦いを勝ち抜くには、ちょっとした運も必要だと続けた。「ランダムな要素がある。弱い相手との対戦でスタートすることもあるからね」。
オリンピックeスポーツシリーズに出場した複数のグランドマスターは、将来的にチェスがさらに影響力のあるゲームになることを望んでいる。より多くのトーナメントや、Twitchでのコミュニティの成長、そして新たなプレイヤーが出現すること。シンガポールでのファイナルズは、そのための恰好の機会だ。
ボルトニクは、「それが僕がプレイする理由の1つだ」と語った。「それからコンペティション。優勝するのはとても難しいフォーマットだし、2位では何も得られない。勝つしかないんだ」。
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