2012年のインスブルック冬季ユースオリンピック(YOG)での成績は、多才で意志の強いスロバキア人アルペンスキーヤー・ペトラ・ブルホバ(26)の今後の活躍を予感させるものだった。
当時16歳だったブルホバは、アルペンスキー女子スラローム(回転)で1.49秒差をつける圧巻の滑りで優勝。大回転とスーパー・コンバインドでは僅差でメダルを逃したものの、その勢いのまま、イタリアで開催されたジュニア世界選手権で銅メダルを獲得し、同シーズンの後半にはワールドカップでシニアデビューを果たした。
「ずいぶん昔のことですが、素晴らしい経験でした」。 YOGをこう振り返るブルホバは、「インスブルック大会のスラロームで優勝し、私のキャリアが始まりました。スロバキアにとって大きな意味を持つものでした。その後、表彰台に上がることが増えていきました」と話す。
10年近くが過ぎた今、ブルホバはアルペンスキー界の頂点に君臨する。
スロバキアの北中部リプトフスキー・ミクラーシュ出身のブルホバは昨シーズン、ワールドカップ6勝と表彰台10回を成し遂げ、スロバキア人選手として初めてワールドカップ総合優勝を達成。元ワールドカップ・チャンピオンの**ララ・グート・ベーラミ(スイス)に160ポイント、ワールドカップ総合優勝を3度果たしたミカエラ・シフリン**(米国)に341ポイント差をつけて、その栄光を手にした。ハードなスケジュールの中、31戦すべてに出場した彼女は、スタミナと意志の強さを見せつけた。
派手さや饒舌さ、人の気を引こうとする素振りのないブルホバは、これから数ヶ月間、ワールドカップのタイトルを守るために冷静に自分のすべきことに集中する。その先には、スロバキア人選手初となるアルペンスキーでのオリンピックメダル獲得が待ち構えている。
(注:以下、インタビューはシーズン前に行われた)
Olympics.com (以下、OC): 昨シーズンの成績をどのくらい誇りに思っていますか? また、母国スロバキアの若者たちにどんな影響を与えていると感じますか?
ペトラ・ブルホバ(以下、PV):昨年、私はスロバキアで一番のアスリートだったので、多くの子供たちが私のようになりたいと思ってくれ、私の好きなスキーを始めたのではないかと思います。
私が彼らのアイドルとなり、彼らが何かのスポーツ、特にアルペンスキーを始めてくれればいいなと願っています。例えば、スロバキアには**ペーター・サガン**(自転車の世界チャンピオンに3度輝いたスロバキア人選手)がいますが、(彼のおかげで)多くの子供たちが自転車を始めました。
私たちはアルペンスキー大国になろうとしているのかもしれませんが、それは私ではなく他の誰かが言うことだと思います。
OC:今シーズンはマウロ・ピニ新監督に師事し、ワールドカップのタイトルを守る上で昨シーズンとの違いを感じていますか?
PV:監督が変わったので、私にとっては違うシーズンになりますが、目標はほぼ同じなので、同じようなものです。昨年は総合優勝を目標にしていましたが、今年のゴールとしてはオリンピックがあります。もちろんワールドカップも大事です。
私たちは量よりも質を重視するつもりなので、より大人しく過ごすことになります。すべての大会に出場しますが、例えば高速系種目で勝負するか、あるいは大回転やスラロームに専念するかといったことを、レース前に決めることになるでしょう。
OC:今シーズン、より多くのダウンヒル(滑降)大会に出場することがどれほど重要で、どれほど楽しいことなのかを教えてください。
PV:まず、私たちが集中したい種目は、スラロームと大回転です。もちろんパラレル、そして高速系もあります。高速系種目は好きですし、ダウンヒルやスーパーGにももっと出たいと思っていますが、優先順位としては、大回転とスラロームのほうが上です。
OC:昨シーズンのワールドカップ総合優勝者として、大きなプレッシャーを感じていますか?
PV:大きなプレッシャーは感じていません。冷静に自分のスキーに集中して、それ以上のことはしないように努めます。みんなが私を昨年の総合優勝者として見ていますし、世界トップの女子選手としてシーズンをスタートさせることになりますが、私は冷静に臨みたいと思います。
OC:今シーズンの総合優勝を狙う上で、主なライバルは誰だと予想していますか?
PV:強い女子選手がたくさんいるので、今年もこれまで通り厳しいシーズンになることは間違いないでしょう。名前を挙げることは控えますが、多くの女子選手で総合優勝や種目別優勝を争うことになると思います。私はその中でトップに立てるように頑張ります。
OC:3度目の冬季オリンピックになることが予想されます。2月の北京大会に向けての抱負や展望を聞かせてください。
PV:今はオリンピックのことは考えていません。今シーズンは量より質を追求することにしました。もしかしたら、12月に落ち着いてオリンピックの準備を始めるかもしれません。
OC:まだ誰も中国のコースを経験したことがない中で、どのようにオリンピックに臨み、準備をする予定ですか?
PV:みんなが同じ状況ですから、誰かが有利になるということはないと思います。自分の中では、今はワールドカップに集中していて、(オリンピックの)その時が来たら、戦う準備をします。
OC:ここ数年、多くのスラロームスキーヤーが室内でトレーニングするようになりましたが、ご自身も室内で練習されていますか? 将来的に室内でのレースを楽しみにしていますか?
PV:室内でのレースはあまり好きではないので、行われないことを願っていますが、毎年、何度か室内でトレーニングを行っています。スラロームには向いていますが、大回転には適していません。同じようなコンディションで滑ることができるので、スキーを試すことはできますが、室内で滑るのはつらいものがあります。というのも、室内で2時間滑っていると、屋外で5時間滑っているように感じてしまうからです。しかし、トレーニングには適していますし、私も時々行っています。