堀米雄斗、ルブラン兄弟、アリサ・トゥルーなどパリ2024オリンピックメダリストが明かす、栄光のメダルの保管場所
引き出しやバッグの中、ぬいぐるみ……そして靴下の中!? アスリートたちはパリ2024オリンピックで掴んで栄光の証をどのように保管しているのだろうか。
直径85mm、厚さ9.2mm、そしてエッフェル塔の金属片......。これらは2024年に最も注目を集めた褒賞、パリ2024オリンピックのメダルのことである。
アスリートたちはこのメダルのために厳しいトレーニングを重ね、フランスの首都パリで最高のパフォーマンスを発揮し、世界中のスポーツファンに多くの感動をもたらした。そして表彰台に立った選手たちの胸ではこのメダルが一層の輝きを放っていた。
しかし、閉会式が終わった後、そのメダルはどうなったのだろうか? メダリストとなった選手たちにとってその円形の褒賞は何を象徴しているのだろうか? できるだけ多くの人の目につくように飾るのだろうか、それとも人目につかないように大切にしまっておくのだろうか。
ひとつ確かなことは、メダリストの数だけ選択肢があるということ。Olympics.comでは、2024年パリの表彰台に立ったアスリートたちのメダルの行方を辿った。
自宅のぬいぐるみ、靴下、カーテンレール
オリンピックメダリストという肩書きは、たとえメダルが首にかけられなくとも、永遠に続くものだ。表彰台でそのメダルを首にかけた後、選手たちは「保管場所を見つける」という嬉しい課題に直面する。家で保管するのか、それとも持ち歩くのか。
コンコルド広場に設置された表彰台で自身2つ目のメダルを首にかけ、日本国歌を聞きながら涙をこらえたというスケートボード男子ストリートの堀米雄斗は、遊び心に満ちた場所でメダルを保管している。保管というよりも「捧げている」と表現した方がいいのかもしれない。
彼の金メダルは、東京2020のメダルと同様に、ポケモンのキャラクター「カビゴン」のぬいぐるみの首にかけられている。Xゲームズなどでのメダルもかけられたカビゴンの写真を誇らしげにソーシャルメディアに投稿した堀米は、「東京オリンピック後からさらにパワーアップしたカビゴン」とコメント。ひょっとすると、このカビゴンは最も成功したポケモンかもしれない。
同じくスケートボーダーで、女子パークで優勝したアリサ・トゥルーも自宅で保管する。「私の金メダルは、私の部屋の引き出しの中にあります」と語る。パリで金メダルをとったらアヒルを飼いたいと家族におねだりしていたトゥルー。メダルとアヒルのご対面もありうるのだろうか。
フランスのシルバン・アンドレは、BMXレーシング男子で手にした銀メダルを、居間のカーテンレールという意外な場所に飾っている。彼は世界選手権のメダルもカーテンレールにぶら下げており、オリンピックメダルは他とは違うと感じながらも同じ場所で落ち着いているのだそう。
フランス卓球界が誇るアレクシス・ルブランとフェリックス・ルブラン兄弟は、ルブラン家に3つのメダルを持ち帰った。
「僕のメダルは自宅のリビングルームにあります」と、男子団体で銅メダルを獲得したアレクシス。男子シングルスと男子団体で2つの銅メダルを手にしたフェリックスは「ひとつは僕の部屋にあって、もうひとつは、すぐ下に住むおばあちゃんの家にあります」と続ける。
ルブラン兄弟はあまりメダルを手に取って見ることはないと話す一方で、パリで2つのメダルを獲得したメキシコ代表の飛込選手、オスマル・オルベラは違う。
「今、僕のメダルは2つともCNAR(メキシコのハイパフォーマンスセンター)にある自分の部屋にありますが、普段は家に置いています。最近は、インタビューやイベントに持っていくことが多いので、よく眺めています。でもそういうきっかけがなくても、持ち歩いたり、触ったり、重みを感じたりするでしょうね」とオルベラは言う。
肌身離さずハンドバック、靴下の中
関心の的となるオリンピックメダルを持ち歩くアスリートももちろんいる。
近代五種競技のエロディー・クルベル(フランス)は、「立派な」箱の中に銀メダル専用の保管場所を設けている。その箱はリオ2016のメダルなど大切な品物で満たされた棚に置かれる。しかし、それは理論上の話である。実際に彼女のメダルは、ほとんどの時間をハンドバッグの中で過ごしている。
「今のところ、メダルはいつもバッグの中にあります。オリンピックから4カ月が経った今でも、どこに行くにもメダルを持ってくるように求められるんです」
アーチェリー女子個人で銅メダルを獲得したリザ・バルベラン(フランス)のメダルも頻繁に移動している。
「イベントで外出することが多いから、いつもバッグの中に入れています。そして頻繁に取り出しています。そろそろどこかに置きたいのですが、今のところ難しそうです」
彼女がメダルを身近に置く理由は他にもある。それはあの最高の夏が夢ではなかったことを実感するためだ。
「いつも眺めています。そのメダルが本当に自分のものなのか、少なくとも週に1度は確認しないといられません」
バルベランがバッグを頼りにしている一方で、3×3バスケットボールのスヴェーニャ・ブルンクホルスト(ドイツ)は金メダルを持ち運ぶための独創的な解決策を見つけた。それは靴下。「メダルはとても重くて、(ずっと持っていると)イベントの途中でとても疲れるから」と語る。
「メダルはよく取り出すけど、自分のためというより、他の人のため」
時にオリンピックメダルよりも輝いているのは、それを見た人々の目だ。それはアスリートやそのチームにとっても同じだ。ブリアンダニエル・ピンタド(エクアドル)は競歩で2つのメダルを獲得し、そのひとつをコーチに捧げた。
「金メダルをとったとき、コーチのアンドレス・チョチョに『もし混合種目でもう1つメダルをとったら、その1つは彼にあげる』と約束しました。嬉しいことにそれは実現して、アンドレスがその銀メダルを持っています。僕は金メダルを特別な場所に隠しています。悲しいときやモチベーションが必要なときに手に取って見るようにしています。これが本物だと確認するために見ることも時々あります」
オリンピックメダルが世間に与える影響も、そのメダルが持つ意味と同様に大きい。
フェンシング女子サーブル個人で金メダルを獲得したマノン・アピティブリュネ(フランス)は、このことをよく知っている。彼女のメダルはフランス・フェンシング界において歴史的な意味を持つが、同時に国民をも虜にしている。
「メダルをみんなに見せると、みんな信じられないような反応をするんです。喜んだり、放心状態になったり、感動したり。このメダルがとても好きです。メダルは私のものであり、そのために費やした努力の証であり、忘れられない一日を思い出させてくれるものだからです。でも他の人にとっては、メダルは手の届かない魔法のようなものなんです。それを分かち合い、人々に実際に見てもらうことが私にできることだと感じています」
カヌースラロームでオリンピック王者になったニコラ・ジェスタン(フランス)も同じような考え方を持っている。金メダルという夢によって自らを奮い立たせてきた彼は今、自分のメダルが次の世代の人々が夢を追い求めるきっかけになることを願う。
「メダルはよく外に持ち出すけど、それは自分のためというより、他の人のためです。それを見て自分の聖杯と呼ぶことに個人的な喜びを感じるというよりは、それを手にすることで誰かが自分の天職を見つけたり、夢を実現したりするきっかけになるのであれば、価値があることだと思います。私にとっては、個人的に楽しむよりも分かち合うことなんです」
箱の中、バッグの中、靴下の中…どこに保管されていようと、オリンピックメダルはアスリートとスポーツ・ファンの心の中で永久かつ特別な存在なのだ。