小野光希インタビュー「自分がどこまで変われるか楽しみ」スノーボード・ハーフパイプ

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックのプレシーズンとなる2024/2025シーズン。スノーボード女子ハーフパイプの小野光希がOlympics.comのインタビューで北京からの3年間と今季のプランを語った。

1 執筆者 Chiaki Nishimura, Machiko Wada
Mitsuki Ono wins the bronze medal during the FIS Snowboard World Championships Men's and Women's Halfpipe on March 3, 2023 in Bakuriani, Georgia
(2023 Getty Images)

「(北京オリンピックは)あっという間に終わってしまって…」

スノーボーダー小野光希(みつき)は、17歳だった高校3年生の冬、北京2022冬季オリンピックでオリンピックデビューを飾った。結果は女子ハーフパイプ9位。

「当時すごい悔しかったんですけど、今振り返ってみたら、なるべくしてなった結果だなと自分でも思っていて」

「あのときは自分に足りないものがちゃんと分かっていなかった。だけど、時間が経って改めて振り返ってみたら全然ダメだったなと感じています」

その「全然ダメたった」から3年。小野は「なるべくしてなった結果」を受け止め、北京大会以降の2シーズン連続ワールドカップ(W杯)年間優勝を果たすなど躍進を続けてきた。

小野光希、憧れのクロエ・キム

国内トップのスノーボーダーたちは、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)が主催するW杯のために初冬から初春にかけて世界各地を転戦する。小野に話を聞いた2024年12月上旬のこの日も、20歳の小野はW杯開幕戦参戦のため中華人民共和国のシークレットガーデンにいた。

ハーフパイプではシーズンの間に6大会ほどが行われ、それぞれの大会で上位3人が表彰されるほか、各大会でのポイントをもとにシーズン終了時には年間優勝者が決定する。そしてその選手には「クリスタルグローブ」が贈られる。

小野はW杯参戦4年目となった2022/2023シーズンに初めてクリスタルグローブを手にし、翌シーズンつまり昨シーズンに2連覇を達成した。

「北京オリンピックが終わってからは順調に成績を残せるようになったなとは思ってて」と小野は自身が歩んできたこの2年間を振り返る。

「だけどその中でもクロエだったり、トップ選手との差っていうのはまだ埋まってないなって自分でも自覚してて…。(昨季は)実力不足を感じて悩んだりする部分もあったシーズンだったなと思います」

小野が名を挙げる「クロエ」とは、オリンピック女子ハーフパイプ2連覇中のクロエ・キム(アメリカ合衆国)である。キムは北京大会の後、自身のメンタルヘルスを最優先に考え、翌シーズンには雪そして競技から離れる決断を下した。そして2024年1月にスイスで行われたW杯の大会で競技に復帰し、復帰戦を優勝で飾った。

4歳年上のキムは、小野にとって憧れの存在だ。

「時々一生超えられないんじゃないかって思うくらい、人間離れしすぎているというか。すごいとしか言えない」と小野は続ける。

そのキムの存在や、その他の世界のトップ選手たちの背中を追い、20歳の小野は進化を続けてきた。

「練習でも大会でも技がうまくいったり、今までできなかったことができるようになったりするときは、みんな素直に褒めてくれたり、盛り上がってくれたり。もちろんそれはインスタとかでも(同じ)。他の選手がすごいトリックをやっているのを見たらお互いシェアしたりっていうのはすごいいいカルチャーだと思います」

「そういうのに影響されて、自分ももっと人と違うことやりたいなとか思ったりすることもあるので、すごい影響を受けてると思います」

女子ハーフパイプの進化「北京でのトリックだとミラノでは絶対にメダルはとれない」

昨季からのオフシーズンには室内施設やエアマットでいろんな技を練習し、ウエイトトレーニングで怪我しないための体づくりをしてきたと話す小野。もちろん適度な息抜きも欠かせない。「旅行が好きなので、旅行に行ったり、あと友達とご飯に行ったり。普通の感じで過ごしてます」と優しく笑う。

相手に安心感を与えるような表情で話す小野だが、スノーボードのトリックの話になるとキリッとした表情で現状を分析する。

スノーボードでは選手たちが常に難易度の高い技や高さのあるエアを追い求めて競技を新たなレベルへと押し上げている。小野は北京オリンピックでメダルを決定づけたようなルーティーンはミラノでは通用しないほどにレベルが上がっていることを実感し、それがモチベーションにもつながっている。

「北京でのトリックだとミラノでは絶対にメダルは取れないってくらい技が進化していたり、トリックのバラエティだったりオリジナリティだったり、もちろん高さの面でもすごい進化が進んでいる」

「私自身もギアをあげて難しい技だったり、難易度の高いようなトリックをやらないといけないと思っている」と続ける。

その進化のはやさに追いつくのが難しいと話す小野だが、その準備も着実に進めている。

「いくつか新しい技をルーティーンに入れられたらいいなと思っていて。その技の難易度とエアの高さだったり、そういうバランスをうまくとって、自分らしさを出せればなと思います」

シーズン後半には新たな技を組み込んだルーティンで挑戦するという小野は、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックのプレシーズンとなる今季、3月に行われる世界選手権を最も楽しみにしているという。

前回の2023年世界選手権で、小野は女子ハーフパイプで銅メダルを獲得。この2年でメンバーも少しずつ変わり、トリックも進化してきた。

「オリンピック直前の一番大きな大会というのもあるので、すごくそこで自分がどこまでできるかだったり、自分の技だったり、どこまで自分の滑りが評価されるかっていうのをすごく楽しみにしています」と語った小野は、「それに向けて自分がどこまで変われるかっていうところも楽しみです」と目を輝かせた。

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