宮澤ひなたが、自身初出場となったFIFA女子ワールドカップ2023のグループステージ初戦、ザンビア戦で2得点を挙げた時、彼女はまだサッカー界で名の知られる存在ではなかったかもしれない。
23歳の宮澤は、3-1で勝利したラウンド16ノルウェー戦で5得点目を挙げ、今大会のゴールデンブーツ(最多得点を決めた選手に授与される賞)の最有力候補になった。その時初めて、その名が世界で知られるようになった。
宮澤は今、母国代表チーム「なでしこジャパン」と共に強豪国スウェーデンとの準々決勝に臨もうとしている。8月11日から始まる準々決勝を前に、これまでの宮澤の活躍を振り返り、彼女の卓越したパフォーマンスの魅力に迫りたい。
FIFA女子ワールドカップ2023での宮澤ひなたの活躍
現在ゴールデンブーツのランキングで首位に立つ宮澤(5得点、1アシスト)は、今回のオーストラリア&ニュージーランド大会で最も突出した選手のひとりだ。しかし、その活躍を誰が予想しただろうか。
なでしこジャパンは、ラウンド16でノルウェー代表を3-1で下し、準優勝だった2015年カナダ大会以来の8強進出となった。これは、2019年フランス大会の結果(ラウンド16オランダ戦で敗退)をすでに上回っており、2021年に就任した池田太監督の指揮の下、今大会に向けて高めてきたチーム力が成果を挙げ始めていると言える。「誰を使っても戦力は落ちない」という選手起用を貫く同監督の方針の通り、誰もが得点力になり得る。その中で傑出した選手のひとりが宮澤だ。
なでしこジャパンは初戦のザンビア戦を5-0で快勝し、その時の宮澤は2ゴールを決めている。宮澤は、2-0で勝利した次のコスタリカ戦で約1時間プレーし、3戦目のスペイン戦でも華麗なパフォーマンスを発揮した。なでしこジャパンは、FIFAランキング6位の上位チーム、スペイン代表にポゼッション(ボール支配)率では大きく差をつけられたが、ゴール前では確実に得点をものにし4-0で同国代表を破っている。
宮澤は、この試合でも2ゴールを決め、またアシストによっても得点に貢献した。なでしこジャパンは、守備から攻撃まで多様かつ完璧な展開を見せ、全勝無失点でグループステージを締めくくっている。
ラウンド16からのノックアウトステージでは、ノルウェー代表との初戦に8強入りがかかっていた。この試合で、なでしこジャパンは初失点を許したものの、終始、相手にプレッシャーをかけ続けてはミスを誘い出し、ボールポゼッションを支配して一方的に攻撃を繰り出して3-1で圧勝した。このノルウェー戦での宮澤は、なでしこジャパンの見事なカウンター攻撃からのスルーパスに走り込んで自身5得点目となるゴールを決め、チームの準々決勝進出を決定的なものとした。
宮澤については海外からの評価も高い。「51分に1ゴール」という平均得点率を例に挙げて称賛する海外メディアも見られる。今大会のなでしこジャパンの攻撃の要としてさらなる活躍が期待され注目されている。
宮澤ひなたの勢いを止めることはできるのか?
宮澤のように試合ごとに勢いに乗ってくる選手を止めることは、たとえ強豪国でも難しいかもしれない。たとえ宮澤を止めることができたとしても、次の選手、また次の選手が続き、攻撃の手が緩まることはないだろう。これが、なでしこジャパンの強さだ。
宮澤は、これまでの4試合で6本のシュートを放ち、そのうち5本がネットを揺らした。ゴール前では非常に得点率が高いことを示している。このため、ノルウェー代表は、ラウンド16の対戦で宮澤をマークした。ミッドフィールダーのイングリッド・エンゲンを3人目のセンターバックとして使って守備を固めた。この戦略は一時的に機能したものの、なでしこジャパンの流動的な攻撃によって簡単に崩されることになった。
宮澤が決めたノルウェー戦での3点目は、相手のディフェンスの肩越しを移動しながら、決定的な瞬間に走り込む戦術をもって得点されたもので宮澤の持ち味と言えるだろう。彼女の最大の強みは、相手ディフェンスの背後を気づかれないように動くことだ。そして、チャンスが訪れたら間髪入れずに走り込む。このため、相手ディフェンスはその瞬間を捉えることが難しい。そこにチームメイトが抜かりなく決定的なパスをスルーさせてくるのだ。
世界4強をかけた準々決勝を目前に控え、世界はこの注目の1戦に期待する。今大会ベストスコアラー、宮澤ひなたを擁するなでしこジャパンの選手全員で臨む自在な戦術に対し、スウェーデン代表は、FIFAランキング3位という強豪国の威信にかけて容赦なく挑んでくるはずだ。なでしこジャパンは、この優勝候補の1つに挙げられる強国とどんな戦いを見せてくれるのだろうか。そして、宮澤はさらなる得点を積み上げることができるだろうか。両チームが激突する準々決勝から目が離せない。