なでしこジャパン主将・熊谷紗希、多くの期待を背負いFIFA女子ワールドカップ2023に臨む

2011年女子ワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」のメンバーで、今も現役で活躍する熊谷紗希。3度のワールドカップ経験とオリンピック銀メダルを獲得したベテランDFは、4度目のワールドカップ(オーストラリア&ニュージーランド)に多くの期待を背負って挑む。

1 執筆者 Shintaro Kano
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(2011 Getty Images)

日本女子代表・なでしこジャパン主将、熊谷紗希は多くの期待を背負って、7月20日開幕のFIFA女子ワールドカップ2023を迎えようとしている。

2011年ワールドカップドイツ大会での優勝を経験しているキャプテンとして、そのDNAを新世代なでしこジャパンに引き継ぎ、差し迫る大会に向けてチームを引っ張らなければならない。長年一緒に戦ってきたチームメイトであり友人の岩渕真奈。今回、日本女子代表から落選した彼女のためにも戦いたい。

今回のワールドカップにおけるなでしこジャパン戦いは、日本の女子サッカーの将来にも大きく影響することになるかもしれない。だからこそ、今、熊谷はそれに立ち向かおうとしている。

「(日本女子代表チーム池田太監督からキャプテンに任命することを)直接言っていただけた。責任を持って『頑張ります』と伝えた。キャプテンとして、チーム全体としてやらなければならないことがあると思う」と、7月3日(月)、JFA夢フィールド(千葉)での合宿中の熊谷は話した。

「(チームの)みんなが熊谷についてきてよかったなと思ってもらえるようなキャプテンでいたい。そう思ってもらえるように、やれることをがんばりたいなと思っています」と、熊谷はキャプテンとしての抱負を語った。

池田率いる代表メンバー23人の中では最年長の現在32歳の熊谷。これまでに3度ワールドカップを経験しているベテラン選手だ。

盟友、岩渕が欠場する今回、熊谷は2011年ワールドカップで劇的な優勝を遂げた日本女子代表チーム、なでしこジャパンメンバーの最後のひとりとしてピッチに立つ。この時の優勝は、2011年3月11日の東日本大震災で未曾有の事態となった日本にとって希望をもたらす明るいニュースのひとつとなったことは、多くの日本人の記憶に残る。

熊谷は、2017年からなでしこジャパンをキャプテンとして引っ張っている。

12年前のワールドカップドイツ大会では、熊谷はアメリカ合衆国代表チームとの決勝戦で、延長戦の末行われたPK戦において優勝を決めた3点目のシュートをゴールに突き刺した。翌年のロンドン2012でも日本女子代表チームの銀メダル獲得に貢献した。

クラブチームでも活躍した熊谷は、2013年から2021年まで在籍したフランス・リヨンの女子サッカークラブ、オリンピック・リヨンでは、欧州サッカー連盟(UEFA)女子チャンピオンズリーグで5度の優勝、4度のトレブル(主要タイトル三冠)を経験している。

熊谷は、昨シーズン、所属のバイエルン・ミュンヘンでドイツの女子サッカーリーグ、ブンデスリーガで優勝を経験している。そして、今年6月、彼女にとって4つ目の欧州クラブとなるイタリア・セリエAのASローマと契約した。

日本女子代表監督、池田の信念は揺るぎないものだった。

「ミーティングの時に、このワールドカップは熊谷で戦っていくということは(本人と直接)話し、チームでも話した。(熊谷は)リーダーシップもあるし、いろんな人とコミュニケーションが取れる。ピッチ内外で、中心となってまとめてくれると思う」と池田は話した。

「11年(ドイツ大会)の優勝もあるので、大会に参加する以上は頂点を目指す。1試合、1試合しっかり戦うのも目標だし、前回大会を超えるのも目標」と、続けて池田は今大会を目前に意気込みを語った。

日本女子代表は、2019年のワールドカップフランス大会ではベスト16、東京2020では準々決勝で敗れており、今回、国際大会でのタイトルを何としても手にしたいところだ。

最近では、日本女子サッカーの人気が低迷している。国内女子サッカーリーグ(WEリーグ)の試合会場では空席が目立ち、7月20日にも始まろうとしている今回のワールドカップを目前に控えながら、放映権料の問題でいまだテレビ放送が予定されていない。

2011年当時、なでしこジャパンを監督として率いた現日本サッカー協会(JFA)女子委員会委員長、佐々木則夫は、「過去のもの(日本代表の2011年の優勝)を美化しても始まらないと思う」と述べた上で、「なでしこ(ジャパン)の活躍イコール普及面に直結すると思います。ワールドカップやオリンピックというのは大きな要素になります」と佐々木は話した。

「日本の女性にとってサッカーという競技はとても適しているんです。それを(多くの人に)わかっていただきたいと思います」

「アジアがもっと女子サッカーというものを本質的に盛り上げていかないといけない。(日本だけでなく)韓国も中国も、出場する国々がもっと(世界からの注目に)アプローチするチャンスだと思います」と、今回のワールドカップに臨むにあたり女子サッカーの将来への展望について語った。

ニュージーランドでの1次リーグでは、同グループのスペイン、コスタリカ、ザンビアとの試合に臨み、熊谷は過去のワールドカップで3度一緒に戦った盟友、岩渕の不在の中チームを引っ張らなければならない。

現監督の池田は、なぜトッテナム・ホットスパーに所属するベテランストライカー、岩渕を選ばなかったのか。その詳細な理由を明らかにはしていないが、経験よりも若手選手の勢いやアグレッシブさを優先したようだ。

熊谷は、岩渕の不在を寂しくは思うが、彼女の分まで自分が役割を担うことを特に心配していないようだ。何があっても、なでしこジャパンを頂上まで引っ張る覚悟はできている。

岩渕のために、日本のために、女子サッカーのために。

「年齢も近く、ユースの時からずっと戦ってきている選手、(岩渕)真奈はそういう選手なので、(彼女の)気持ちを改めて背負って、本人からも『応援してる、がんばれ!』という言葉もかけてもらえて、やるしかないなと思っている」

「選ばれた自分はピッチで答えを出すだけかなと思っています」

「チーム全体としてまとめる時に、しっかり選手たちのサポートを、コミュニケーションを取りながら、みんなで(チームを)作る形はできているかなと思っています。(岩渕がいなくても)何とかなりそうです」と、熊谷は自信を込めて明るく語った。

Been there, done that: Kumagai Saki lifting one of her five Women's Champions League trophies with Lyon.

(Getty Images)
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