FIFAワールドカップの歴史に残る、5つの「番狂わせ」を振り返る

サウジアラビアがアルゼンチンに逆転勝利を収めて波乱の幕開けとなった、サッカー男子ワールドカップ。その歴史においてどのような「番狂わせ」が起こったのか。ファンを最も驚かせた5つの試合を紹介しよう。

1 執筆者 Olympics.com
Morocco
(2022 Getty Images)

11月20日に始まったサッカーワールドカップは、すでに数試合で「番狂わせ」が起こり、大会を盛り上げている。

3日目となった22日には、優勝候補であるアルゼンチンがサウジアラビアに敗れ、その翌日にはサムライブルー(日本代表)が、こちらも優勝候補とされるドイツとの一戦で逆転勝利を収めた。

FIFAワールドカップ92年の歴史は、数々の「番狂わせ」を目撃してきた。ここでは、ワールドカップ史に残る5つの試合を紹介する。

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アルゼンチン 1-2 サウジアラビア、2022年カタール

11月22日(火)に行われたアルゼンチン代表の敗戦は、数ある番狂わせの中でも最も予想外の試合と言えるだろう。世界ランキング第3位のアルゼンチンは、同第51位のサウジアラビアと対戦するにあたり、トラブルなど何ひとつもないはずだった。

しかし、アルビセレステスの愛称で知られるアルゼンチン代表は、2019年のコパアメリカ準決勝でブラジルに敗れて以来、3年以上ぶりに敗北を喫したのだ。

リオネル・メッシは前半10分にペナルティのチャンスを得て先制点をあげた。メッシにとってこれはワールドカップ20試合を通じて7度目のゴールで、同国の選手として初めて4大会(2006、2014、2018、2022)でネットを揺らした選手となった。それは、アルゼンチンが前半に大量得点を上げるのではという兆候のようにも感じられた。

その後アルゼンチンはサウジアラビアのゴールネットを揺らしたが、3つのゴールは認められず、後半10分のうちにサウジアラビアの逆転を許す形となった。

試合終了のホイッスルが吹かれたとき、メッシとチームメイトたちはがっくりと肩を落とした。サウジアラビアが演じた逆転劇は、ワールドカップの歴史の中で最も印象的なものとなるだろう。

フランス 0-1 セネガル、2002年大韓民国&日本

フランスのサッカーファンなら誰しもが記憶から消し去りたいと願う試合がある。大韓民国と日本の共同開催となった2002年のワールドカップの開幕戦で、セネガルのパパ・ブバ・ディオプがフランスを相手に前半に先制点を挙げ、試合はそのまま終了したのである。

当時世界ランキング68位だったセネガルにとって、初のワールドカップだったことを考えると、これは注目に値する結果だ。セネガルはグループリーグ2位で決勝トーナメントに進出した。

一方、前回大会で優勝していたフランスは、グループリーグで最下位に終わり、姿を消した。前回大会の王者がグループリーグで敗退したのは1966年以来の出来事だった。

2000年に行われた欧州選手権(ユーロ2000)で優勝していたフランスだが、このワールドカップでは3試合中1ゴールも決められず、大会を終えた。

セネガルは準々決勝まで進み、延長戦の末にトルコに敗れた。

(2002 Getty Images)

アルゼンチン 0-1 カメルーン、1990年イタリア

1986年のワールドカップで優勝したアルゼンチンは、優勝候補の筆頭として1990年のイタリアに降り立った。

しかし、12年後のフランスと同じように、アルゼンチンも開幕戦で敗れたのである。その相手となったのはカメルーンで、後半22分で先制点を挙げたカメルーンは、その後、2人の退場を出して9人となったものの1点を守り抜き、ディエゴ・マラドーナ率いるアルゼンチン代表に1-0の勝利を収めたのである。

この衝撃的な敗戦にもかかわらず、アルゼンチンは決勝トーナメントへの出場を果たした(当時は24チームでグループリーグが行われ、8チームのみがこの時点で敗退した)。ローマで行われた決勝戦では、ドイツに敗れて準優勝となった。

(1990 Getty Images)

北朝鮮 1-0 イタリア、1966年イングランド

1966年のイングランドで、ワールドカップ史上最も有名な試合のひとつが展開された。これはイングランドがドイツに延長戦の末に勝利した決勝戦の話ではない。

ワールドカップ初出場の朝鮮民主主義人民共和国と、1934年と1938年の大会を制したイタリアの戦いである。

この試合は、決勝の11日前にイングランド北東部のミドルズバラで行われ、北朝鮮は開幕戦でソ連に敗れた後、チリ代表と対戦した2試合目の終盤に同点ゴールを決められ、1-1の引き分けに終わっていた。

グループリーグ最終戦でイタリアに勝てば、準々決勝進出の可能性が残っていた北朝鮮は、イタリア代表との一戦でパク・ドゥイクが前半にゴールを決め、それがそのまま決勝点となり、彼はワールドカップの歴史にその名を刻むことになった。

準々決勝でエウゼビオ率いるポルトガルに敗れた北朝鮮は、2010年までFIFAワールドカップに出場することはなかった。一方のイタリアはグループリーグで敗退。4年後のワールドカップでは決勝に進出し、ブラジルに敗れて準優勝となった。

(Central Press/Getty Images)

アメリカ合衆国 1-0 イングランド、1950年ブラジル

第二次世界大戦前の3大会すべてを欠場したイングランドは、1950年、初のワールドカップに臨んでいた。

ブラジルで開催されたこの大会で、アメリカ合衆国とイングランドが初めて対戦。初戦でチリを破ったイングランドは、アメリカ合衆国を相手に快勝すると思われていたが、ジョー・ゲイジェンズの前半のゴールで衝撃を与え、それが決勝点となり試合は終了。現在でもワールドカップ最大の番狂わせのひとつとされている。

この大会ではイングランドもアメリカ合衆国も決勝トーナメントに進出することはできなかった。この初対決以降のワールドカップで、両者の対戦はイングランドが圧倒し、2022年ワールドカップにいたるまでの11回の対戦のうち、イングランドが8勝を挙げている。

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