男子バスケットボール「FIBAアジアカップ2022」が、7月12日(火)からインドネシアのジャカルタで開幕する。
Tokyo 2020で、女子日本代表を初のオリンピック銀メダルに導いたトム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)率いる「AKATSUKI FIVE」男子日本代表(FIBAランキング38位)はグループCに入り、13日にカザフスタン(同68位)、15日にシリア(同83位)、17日にイラン(同23位)と対戦。グループを首位通過すれば20日に準々決勝、2位もしくは3位であれば19日の準々決勝進出を争うプレーオフに進出することになる。
本大会に挑む日本代表12選手は以下の通り。
◆PG(ポイントガード)
- 富樫勇樹(★)
- 河村勇輝
- テーブス海
◆SG(シューティングガード)
- 須田侑太郎
- 西田優大
- 富永啓生
◆SF(スモールフォワード)
- 渡邊雄太(★)
- 佐藤卓磨
- 吉井裕鷹
◆PF(パワーフォワード)
- 井上宗一郎
- 張本天傑(★)
◆C(センター)
- エヴァンス・ルーク
★:Tokyo 2020日本代表
※ポジション表記は、JBA(日本バスケットボール協会)発表による。
◆スピード重視の戦術でアジアの頂点へ
今回の顔触れを見てみると、Tokyo 2020日本代表は富樫勇樹、渡邊雄太、張本天傑の3選手のみ。7月1日と3日に行われた「FIBAワールドカップ2023 アジア地区予選」のWINDOW3から9選手が名を連ねた。
日本は他チームに比べて平均身長が低くなるため、ホーバスHCは高さよりスピードを生かした戦術を採用。ディフェンスでは前線からの激しいプレッシャーでターンオーバーを誘い、オフェンスでは5人全員が3ポイントラインの外に位置して、リング下のペイントエリアへアタックを仕掛けていく。様々な動きを作ることでズレが生じ、フリーになった選手が3ポイントシュートを打っていくのだ。
今回のアジアカップでは、1971年大会以来の制覇を目指すとともに、Tokyo 2020後初の日本代表に選出された渡邊雄太と、ワールドカップアジア予選で結果を残した選手たちがどのように融合していくのかにも注目が集まっている。
◆中心的存在のNBAプレイヤー渡邊雄太
日本の中心的存在になるのが、昨シーズンNBAのトロント・ラプラーズでプレーしていた渡邊雄太だろう。Tokyo 2020で2大エースとしてチームを牽引した八村塁が不在のため、今回のアジアカップにおいては、渡邊により一層大きな役割が求められる。
渡邊は身長2mを超えているが、3ポイントシュートやペイントエリアへ入り込むカットインが得意でディフェンス力も高く、ホーバスHCが示した3つの武器「しつこいディフェンス、スピード、3ポイント」にあてはまる選手だ。
ホーバスHCは「彼が合流することをとても楽しみにしている」と渡邊に期待を寄せており、渡邊も「自分は日本代表の選手。そこへのモチベーションはもちろんある」と代表での活動に意欲を見せていた。並々ならぬ決意で合流するエースが、チームをどのようにアジアの頂点へ導いてくれるだろうか。
◆富樫と河村の「Wユウキ」とテーブス海がタクトを振るう
富樫勇樹は満を持して代表復帰を果たした。オーストラリアで行われたワールドカップアジア予選には帯同しなかったものの、スピードにおいてはこのメンバーに入っても飛び抜けている。Tokyo 2020とは違い主将を担うなど、今やチームを引っ張る存在。より一層代表への思いが強くなっているようだ。
得意の3ポイントシュートに加えて、昨季のBリーグではアシスト王に輝いた。機敏な動きからのペイントアタック、そこからの展開はまさにホーバスHCが掲げるバスケットボールを遂行させる力がある。Tokyo 2020で得た経験と自分の持ち味をアジアカップで生かすことができるはずだ。
その富樫とともに、ポイントガードとして選出されたのが、河村勇輝とテーブス海。河村はワールドカップアジア予選のチャイニーズ・タイペイ戦で代表初出場を果たした。
途中からコートに入った河村は、スピードを生かしたボールプッシュでペースアップをしていき、日本に良い時間帯をもたらした。14分間出場で8アシスト5スチールをマークし、攻守両面で持ち味を発揮。富樫と「Wユウキ」で期待がかかる河村には、富樫とは違ったスピード感をアジアカップでも見せてもらいたいところだ。
富樫や河村といった小柄な選手に対して、テーブスは身長188㎝とポイントガード3選手の中では最も長身となる。サイズがあるポイントガードは、アグレッシブなディフェンスがチーム方針である中で優位になるため、サイズのアクセントを出すことが可能。河村とともに新しい風を代表に送り込んでくれることだろう。
◆代表デビューした富永啓生の得点力に期待
前週のワールドカップアジア予選で代表デビューを果たした富永啓生は、オーストラリア戦とチャイニーズ・タイペイ戦で得点力の高さを見せつけた。
シュートリリースまでの速さを武器に、52-98と完敗したオーストラリア戦ではチーム得点の約3分の1にあたる18得点をあげると、89-49で快勝したチャイニーズ・タイペイ戦でもチームトップの17得点。ホーバスジャパンのエースに名乗りをあげた。
この2試合で富永は7本の3ポイントシュートを決めているが、ショットチャートを確認すると、チャイニーズ・タイペイ戦では、アウトサイドからのシュートはもちろんだが、ペイントエリアにも果敢に侵入していることがわかる。
ペイントアタックや3ポイントシュートは、ホーバスHCが掲げるオフェンスの軸と言っても過言ではない。それをワールドカップ予選の強豪オーストラリア相手にも臆することなくトライしている姿勢こそが、日本男子バスケットボールの発展には欠かせないのだ。アジアカップでもその姿勢を継続してもらいたい。
◆八村塁に続く存在となるのは?
インサイド陣に目を向けてみると、ホーバスHCが指揮官に就任後、帰化選手として全試合に出場しているのがエヴァンス・ルーク。身長203cmとセンターの選手としてはそこまで大きくないものの、機動力があるプレイヤーだ。
国際大会において帰化選手の枠は1つしかない。この枠を狙っている多くのライバルに対し、エヴァンスはアジアカップで、ホーバスバスケをしっかりと表現できる選手としてアピールをしておきたいところだろう。
他にも、Tokyo 2020にも出場した張本天傑や、ワールドカップアジア予選で代表初選出となり、身長201㎝とサイズがありながら3ポイントシュートを得意とする井上宗一郎が攻守に渡って存在感を発揮した。
日本人ビッグマンのポジションはワールドカップを見据えても、八村が筆頭にあがるのは間違いないが、2番手以降が流動的。今回選出された張本や井上は、これから日本代表へ招集され続けるためにも、今回のアジアカップが大事な大会になるだろう。