氷に対する繊細な感覚、そしてスケーティング技術。ジョーダン・ストルツ(アメリカ合衆国)はスピードスケート界でもトップクラスのスケーターだ。
多くのスケーターとは異なり、彼はただ速く滑ることや氷上で気持ちよく滑ることに執着しているわけではない。彼はパフォーマンスを向上させるためにブレードに注意を傾ける。
「ブレードを変えたんだ」
ストルツは日本開催のISU四大陸選手権とワールドカップ第1戦長野大会に出発する直前にOlympics.comのインタビューでそう語り、「それがスピードにつながってくれることを期待しているよ」と続けた。
本来彼に備わっているスピード、そしてパワフルなストライドと複雑なテクニックで、ストルツは昨シーズン、世界オールラウンド選手権で優勝。19歳だった彼は、1977年のエリック・ハイデン(当時18歳)に次ぐ最年少優勝者となった。
さらに世界距離別スピードスケート選手権では2大会連続で3冠(500m、1500m、5000m)を達成。「過去2回のように、またこの3つのタイトルを維持したい」と彼は続ける。
「でも今年は、総合ランキング、ワールドカップ総合ポイントで上位に入りたい。それはまだ達成できていないことだから」
ジョーダン・ストルツ、完璧なブレードを探して
米東北部で2つの湖に面するウィスコンシン州出身の彼にとって、氷上でのスケートは日常の光景とも言えるものだったが、2010年のバンクーバーオリンピックでアポロ・アントン・オーノ(ショートトラック)とシャーニー・デービス(スピードスケート)がメダルを獲得する姿を見て、彼は裏庭の池でスケートを始めた。5歳のときである。
それから15年近くが経ち、ストルツはこの競技をさらに高みへと押し上げるアスリートへと成長した。
そして今、ブレードについてこう考える。
「たくさんのブレードを試したよ。すべて同じブランドのものだけど、その中のいくつかは少し感覚が違うんだ」と満足げに語る。
スケーターが10分の1秒、あるいは100分の1秒タイムを縮めるためには、ブレードが大きな味方となる。
「新しいものをテストして、何が効果的かがわかってきた。それに改良を加えたんだ。だからうまくいけば、簡単で自由なスピードに変換できるはずだ。そのために調整する必要さえない。ただ、装備をうまく使いこなせばいいだけなんだ」
ストルツ「より速いタイムを滑ること」
昨年1月、ソルトレークで開催されたワールドカップで、男子1000mの世界記録(1分05秒37)を樹立したときも、ストルツは同じように「いいブレード」の感覚を得たという。
「世界記録か、あるいはそのあたりか、という感じだった。でも顔を上げてタイムを見た瞬間、信じられない気持ちだったよ」
同じ会場で2020年にパヴェル・クリズニコフ(ロシア)が記録した1分05秒69を上回ったストルツは、その瞬間を振り返る。
「あの日のコンディションは最高ではなかった。スプリットもラップタイムもクレイジーだった。まさか1分05秒3が出るとは思わなかった」
16歳だった2021年に国内選手権の500mで初優勝して以来、彼はバイクでのトレーニングを行ってきたが、今年はアプローチを変更した。
「今年は去年よりもウエイトトレーニングを多く取り入れたよ。バイクトレーニンをたくさんこなしていると、いいトレーニングができないんだ......この2つを混ぜるのは難しいよ」
「今シーズンは、5000mや10000mを滑る必要がないから、より短い距離に集中している。調子はいいよ。今は昨シーズンの初めよりも速いタイムで滑っているし、もっとレースをこなして調子を上げていけば、もっと良くなると思う」
全米スピードスケート選手権では男子500mで2勝し、1000m、1500m、マススタートでも優勝するなど圧倒的な強さを見せつけ、ワールドカップの代表メンバーに選出された。
ストルツ、2026年ミラノオリンピックに向けて
全米選手権での結果は、トロフィーに溢れたシーズンの幕開けになるかもしれない。彼は八戸で開催されたISU四大陸選手権の500m、1000m、1500mで優勝した。
スピードスケートのワールドカップは第1戦(11月22日〜24日)が長野で行われ、第2戦(11月29日〜12月1日)が北京で予定されている。
「いいテストになるだろう。氷が違うからトレーニングになるし、また連戦を始めるいい準備になる。国内でのレースよりも少しタフになるだろうけど、ミルウォーキーでのワールドカップにつながる。ミルウォーキーの氷はタイムが出やすいので期待しているよ」
昨シーズンはほぼすべての種目で無敵を誇った彼は、この調子を維持するためには多くのことが必要であることを知っている。
「1500mは大丈夫そうだ。1000mでは中国のニン(チョンイェン)が最大の脅威になると思う。彼が日本でどんな走りをするか楽しみだ。500mは、オランダのジェニング・デ・ブーとの競争が今年は少し激しくなりそうだ」
「彼らがどこまで迫れるか......本当にそうしなければならないなら、僕は彼らより前に出られるように自分を研ぎ澄ますことができると思う」
今年はもうひとつ別の目標が彼の中に芽生えている。
「ワールドカップの総合ポイント(での優勝)、これはまだ獲得したことがない。もしできることなら、3種目で成し遂げたい。それができれば大きな達成感を得るだろうね。オリンピックイヤーに向けて弾みになると思うよ」。