アルペンスキーヤーか、スノーボーダーか?
オリンピックで両種目を制覇した**エステル・レデツカ**(チェコ)は、今でも自分を「二刀流アスリート」だと考えている。
2021/2022シーズンの開幕前に行われたアトミックのメディアイベントで、「まだ心の中では、自分は半分スノーボーダーで半分スキーヤーだと思っています」と話してくれた。
平昌2018でレデツカは、冬季オリンピックにおいて2つの異なるスポーツで金メダルを獲得した初めての女性となり、歴史に名を刻んだ。
ほとんど無名だった彼女は、まずオリンピックのスーパーG(スーパー大回転)でアルペンスキーのスピードスペシャリストたちを打ち負かし、その7日後には圧倒的な人気を博し、スノーボードのパラレルジャイアントスラローム(パラレル大回転)でもタイトルを獲得した。
レデツカは北京2022冬季オリンピックで再び両種目に出場するが、今回はスノーボードの日程が早く(2月8日)、スキーのスーパーG初戦(2月11日)のわずか3日前に予定されている。
「笑顔でオリンピックを楽しみたいと思っています」とOlympics.comに語る26歳のレデツカは、アルペンスキーワールドカップで、2回の優勝を含む6回の表彰台を獲得している。また彼女はスノーボードでさらなるキャリアアップも目指している。
そんなレデツカに、北京2022を前にOlympics.comは独占インタビューを行った。以下、一部を編集・翻訳してお届けする。
「オリンピック」は大会のひとつ
Olympics.com(以下、OC):オリンピックシーズンをどのように迎えようとしていますか?
エステル・レデツカ(以下、EL):私は、オリンピックだけに集中するタイプではありません。一般的には、このような考えではうまくいかないんですが(笑)オリンピックの他にも重要な試合はたくさんあると思っているので、それに向けて良い準備ができるように頑張りたいと思っています。もちろんオリンピックも楽しみにしていますよ。会場やダウンヒルを見て、凄く良さそうだと思いました。また、スノーボードの斜面にも挑戦してみましたが、とても楽しかったです。
OC: 平昌2018の前に、あなたのチームに「オリンピック」という言葉を使うことを禁止したというのは本当ですか?
EL:はい、本当です。このようなシーズンの見方をしている私はとても珍しいんだと思いますが、「よし、オリンピックに行くぞ!」というように毎日頭の中で考えているわけではないんです。
私の周りの選手だけでなく、多くのコーチも毎日のようにオリンピックのことを考えています。ただこれが『オリンピック・パニック』のようになってほしくない。オリンピックだけに集中するのではなく、他の試合にも集中してもらいたいんです。そうすることで、スタート地点に立つたびに、それがオリンピックであろうと、FISの試合であろうと何であろうと、ベストを尽くすことを自分に言い聞かせることができます。
だからこそ、チームの誰かが「(私たちは)オリンピックのために、これとあれをやるべきだ」と言うことに、少しだけアレルギーを感じるんです。
シーズンはとても長く、たくさんの試合があり、その中でいろいろなことが起こる可能性があります。しかし、どの試合にも100%の力で臨めるように準備をしなければなりません。これが私にとってのやり方です。そして、もし彼らが私のチームに入りたいのであれば、同じ考えで取り組むことで、彼らもうまくいくはずです。
OC:あなたのチームは「オリンピック」という言葉を使わずに、どのように大会についての話をするのですか?
EL:どうやって翻訳したらいいのかわかりません。私たちは「韓国フレンドシップレース」と呼んでいました(笑)他国の友人や、他のスポーツの友人がたくさん出場するので、それはまさに「韓国フレンドシップレース」だったし、今回は「中国フレンドシップレース」です。
2種目両方出場
OC:北京2022でもスノーボードとアルペンスキーの両方で出場を狙っていますか?どのような戦略で臨むのでしょうか?
EL:はい。正確なスケジュールは頭に入っていませんが、スノーボードがスキーの前に開催されると聞いているので、それをうまく使えればアドバンテージになると思っています。スノーボードとスキーの間に十分な時間があるといいのですが…。本当にスケジュールを見ていないんです!
私のコーチは、スケジュールとその対処法を知る必要があります。私はただシンプルでありたいと思っていますし、自分自身を楽しむためにそこにいます。スノーボード、スキー…そのうちにわかりますよ!
OC: 昨シーズンは、イタリアのコルティナ・ダンペッツォで開催されたワールドカップPGSで優勝しました。スノーボードはこの1試合しか出場していませんが、その理由は?
EL:当初予定していたものではありませんでした。腰に問題があったので、あまり無理をしないようにスキーに徹しました。
夏の間はすごく努力して昨シーズン弱かったところの筋肉をつけ、強化しました。今シーズンは、腰を守るためにも、全体的な健康を維持するためにも、そしてひとつのスポーツから別のスポーツへ問題なく切り替えられるようにするためにも、この筋肉が役立つことを期待しています。
OC:ここ数シーズンはスキーの出場が多かったのですが、少しずつひとつの競技に集中するようになったのでしょうか?
EL:まだ心の中では、半分スノーボーダーで、半分スキーヤーだと思っています。私たちは、スキーの総合ランキングの中で、自分の可能性を確認したかったんです。そのため、スキーのワールドカップに多く出場し、種目別や総合でトップ10に入れるかどうかを確認しました。私たちは何ができるかわからなかったのですが、(シーズンを通じて)それが可能であることを学びました。
問題は、これをやろうとするとスノーボードの試合と同時進行になるので、スケジュールを合わせるのがさらに難しくなることです。両方に出ようとすると、スキーの試合をいくつかキャンセルしなければならず、総合的なランキングでかなりのポイントを失うことになります。
例えば、スキーで世界を相手に戦うには自分の実力が必要ですし、スピード系の種目は可能な限りすべてのレースに参加しなければなりません。ですから、今シーズンのレースがどのようにスケジュールされるかにかかっています。
両方の競技でもう一度オリンピックに出場することに集中し、オリンピックを楽しみ、その後、シーズンの展開を見守りたいと思います。レースのスケジュールをどうするのかという質問をたくさん受けましたが、ほとんどの場合、シーズン中のその時の自分の気持ちやフィーリングに左右されます。そして、もし私がスノーボード一本で行きたいと思ったら、スノーボードに行く。それは誰にも止められないことです。
スキーワールドカップでTOP10の実績
OC:昨シーズンはワールドカップのスピード種目で常にTOP10に入っていましたが、メジャー大会でクリスタルグローブやメダルを狙うためには、何が必要ですか?
EL:私のキャリアを見てもらえれば、一歩一歩、一年ごと上達していることがわかると思います。平昌2018のようにトップに立ってから順位を落としてしまうということはありません。すべての結果を見ると、平昌シーズンも上達していました。ただ、シーズンを通して何度も表彰台に上がれるようなレベルではなかった。
でも、次のシーズンには一歩前進して、さらに上達していきました。自分が正しい方向に進んでいることは確かだと思います。
今ではスキーがかなり上達して経験も豊富になりましたが、すべてのレースに勝つために必要な経験はまだありません。
私はそれを目指していますし、今でもトレーニングやターンのたびに経験を積んでいます。
OC:すでに多種目で二冠を達成していながらオリンピックに出場することを、どう思いますか?
EL:ふたつの気持ちがあります。まずひとつ目は、私はまだ3回転と4回転ができると思うし、まだまだ改善の余地があるということ。ふたつ目は、すでにオリンピックチャンピオンとしてオリンピックに臨むということは、誰にも奪うことができないものだということです。
もしゴールできなかったとしても、(前回大会の)オリンピックチャンピオンであることに変わりはないので、それは素晴らしいことだと思います。最速でゴールするためにベストを尽くし、それを楽しむつもりです。すでにこれは私のポケットに入っているボーナスのようなものです。
OC:今シーズンのあなたのマントラやモットーは何ですか?
EL:私はそういったものはあまり好きではありませんが、私は人生の中で自分の好きなことに挑戦しているので、すべての滑りを楽しみたいと思っています。もし今シーズンもこうやって楽しむことができたら、すべての滑りで負けてしまったとしても、私にはそれで十分です。