**サニブラウン・アブデル・ハキーム**が再起の道に立っている。
**東京2020オリンピック**の延期によって救われたアスリートがいた一方、予定通り大会が開催されることを願った人たちがいた。サニブラウンは、おそらく後者にあたるだろう。
2015年に100mと200mの両方でウサイン・ボルトの世界ユース選手権記録を破ったサニブラウンは、期待の新星として2020年に向けて大きな期待が寄せられていた。
2019年には100mを9秒97で走って日本新記録(当時)を樹立し、日本選手として10秒の壁を破った2人目のアスリートになったのである。
同年ドーハで行われた世界選手権の男子4×100mリレーでは、37秒43というアジア新記録にも貢献。サニブラウンにとって、すべてがうまくいっている時期だった。
しかし、2020年3月に東京オリンピック延期が決定したことで、すべてが崩れ始めた。
今年6月に大阪で開催された日本選手権でサニブラウンが明かしたように、彼はヘルニアと闘っていたことから東京大会の100mの代表選考会で思うような走りができず、落選した。
200mには出場したものの、21秒41とやや控えめなタイムで予選グループ6位。サニブラウンのオリンピックデビューはこの結果とともに終わりを迎えた。
しかし、東京大会からまもなく1年が経とうとしていた6月10日、日本選手権に出場していた23歳のサニブラウンは新たなスタートを切ったような活躍を見せた。
自身の課題であるスタートで出遅れたものの、100mで10秒08を記録し、3年ぶり自身3度目の優勝を飾ったのである。
そして、準決勝で記録した10秒04のタイムにより、7月15日〜24日に米オレゴンで開催される世界選手権の出場権を獲得した。
昨夏と比べると明らかに調子が良さそうに感じられたサニブラウンは、「(スタートの)反応が話にならないくらい遅かった」と大会を振り返ると、「トップの人たちと走るには、前半で置いていかれたら本当に話にならないので、そういったところをアメリカに帰って、これからの1カ月間で磨き上げられるように、本番に強い自分を取り戻せるように、もう一段階上げていければと思う」と語った。
「久しぶりに難なく走れて、試合前も『早く試合が来ないかな』と楽しみな状態で臨むことができた」
「(今回)10秒04まで来た。とりあえずは、『まずまずかな』という結果。予選・準決勝・決勝と、3本しっかりと量もこなすことができたので、あとはここからタイムを上げて、勝負強さを兼ね備えていければと思う」
「位置づけとしては、いい大会になったと思う」
オレゴンは彼にとって4度目の世界選手権となり、100m決勝進出を目標に据える。
サニブラウンは、「過去100メートルは不完全燃焼の大会が何回かあったので、今年こそしっかり走り切りたい」と前を向き、「結果も残さないといけない。満足いく走りをしたい」と続けた。
「過去3大会は置いておいて、新しい自分としてやる。チャレンジャーとして精いっぱいやれることをやって、満足いく走り、結果を出せたらいい」。