【サッカー】実力者揃いの“パリ世代”、U-21日本代表がU23アジアカップ制覇に挑む

1 執筆者 飯尾篤史
サッカーJリーグ/競り合う西尾隆矢と細谷真大
(時事通信)

久保建英(RCDマジョルカ/スペイン)や堂安律(PSVアイントホーフェン/オランダ)、冨安健洋(アーセナル/イングランド)らを擁して4位になったTokyo2020から10カ月――。

パリ2024を目指す“シン・オリンピック代表”(現U-21日本代表)はすでに始動している。

初陣となった2022年3月のドバイカップでは、U-23クロアチア代表、U-23カタール代表、U-23サウジアラビア代表を撃破して優勝。6月からはウズベキスタンで開催されるAFC(アジアサッカー連盟)U23アジアカップ2022に出場する。

チームの指揮を執るのは、2018年のAFCチャンピオンズリーグで鹿島アントラーズをアジア王者へと導いた大岩剛監督である。この熱血漢に率いられたチームには、早くもこんな評価が生まれている。

東京を上回る歴代最強の世代――。

というのも、所属クラブでスタメンを張る選手の人数が、Tokyo2020代表の同時期と比べて圧倒的に多いのだ。

今季すでに6ゴールのFW細谷真大(J1・柏レイソル)をはじめ、FW藤尾翔太(J2・徳島ヴォルティス)、MF鈴木唯人(J1・清水エスパルス)、MF松岡大起(同)、MF山本理仁(J2・東京ヴェルディ)、DF馬場晴也(同)、DF畑大雅(J1・湘南ベルマーレ)、DF半田陸(J2・モンテディオ山形)、この3月に青森山田高校を卒業したばかりのMF松木玖生(J1・FC東京)……。

U23アジアカップは負傷やコンディション不良のために未招集・辞退となったが、MF荒木遼太郎(J1・鹿島)、MF田中聡(J1・湘南)、MF小田裕太郎選手(J1・ヴィッセル神戸)、DF西尾隆矢(J1・セレッソ大阪)もいて、両手で数えても収まりきらない。

さらに、MF斉藤光毅(ロンメルSK/ベルギー)、DF内野貴史(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)、DFチェイス・アンリ(VfBシュトゥットガルト/ドイツ)、GK小久保玲央ブライアン(SLベンフィカ/ポルトガル)と、海外クラブに所属する選手もいる。

鈴木、松岡、西尾、荒木の4人に至っては1月、ウズベキスタン代表との親善試合に向けたA代表・SAMURAI BLUEのメンバーにも選出されている。

新型コロナウイルス(COVID-19)オミクロン株の感染拡大を受けてウズベキスタン戦は中止となり、流通経済大学との練習試合に変更されたが、A代表の森保一監督が身近で見てみたい、チャンスがあれば親善試合で起用したい、と思った選手であることに違いはない。

まさにこの「A代表」が、U-21日本代表の大きなキーワードとなっている。大岩監督は選手たちに力強く訴えている。

「A代表の選手たちが、オリンピックに出るようにならないといけない」

かつては「アテネ経由ドイツ行き」というように、オリンピック出場後にA代表へ食い込み、2年後のワールドカップのメンバー入りを目指すのが、この世代のスローガンだった。

しかし、Tokyo2020代表とA代表の指揮官を兼任した森保監督は「A代表経由オリンピック行き」を打ち出した。それを実践してみせたのが久保、堂安、冨安、中山雄太(PECズヴォレ/オランダ)、板倉滉(シャルケ04/ドイツ)らであり、大岩監督もそれをチームのスタンダードにしようというわけだ。

U-21日本代表は今のところ、3月上旬に3日間のトレーニングキャンプを行い、3月下旬にドバイカップに出場。5月上旬に3日間のトレーニングキャンプを行ったにすぎない。しかし、それでも大岩監督のカラーは少しずつ見えてきた。

前線からハイプレスを仕掛けて、アグレッシブな守備を敢行。攻撃はディフェンスラインから狙いを持って組み立てていく。その際、中盤や前線の選手は立ち位置を意識し、ボールを効果的に、効率的に動かす。フォーメーションも4-2-3-1、4-3-3、4-4-2と相手を見ながら臨機応変に戦っていく狙いがある。

大岩監督はドバイカップでの戦いぶりを、こう評価する。

「試合前のミーティングでも、動き方、立ち位置を訴えてきたつもりです。練習は数回しかなかったんですけど、ミーティングでしっかり理解して、あれだけ意識してくれた。そこは、今後も強みにしていきたいと思います」

U23アジアカップ(前回大会まではU23アジア選手権)は14年に第1回大会が行われ、2年に1回開催されているため、今回が第5回大会となる。オリンピックイヤーの大会はアジア最終予選を兼ねることでも知られている。

日本は、14年のオマーン大会ではベスト8敗退、16年のカタール大会(リオデジャネイロ2016アジア最終予選)は優勝、18年の中国大会はベスト8敗退、20年のタイ大会(Tokyo2020アジア最終予選)はグループステージ敗退という結果を残している。

大会名は「U23」、一方でチーム名は「U-21」と、2歳の開きがあることにお気づきだろう。原則23歳以下の選手たちが出場する2年後のパリ2024に向けて、日本は今大会にU-21代表チームを送り込む。

つまり、今大会はあくまでもパリ2024への強化の一環である。

しかし、大岩監督はきっぱりと宣言する。

「日本を背負って戦う試合に、負けていい試合はないと思っていますし、決勝まで進めたら6試合戦えるわけです。選手たちの成長や経験を考えると、6試合戦いたい」

グループステージの相手はアラブ首長国連邦(UAE)代表、サウジアラビア代表、タジキスタン代表。いずれもU-23代表チームでの参加が濃厚だ。とりわけサウジアラビアとは3月のドバイカップ決勝で対戦したばかり。セットプレーから細谷がヘディングで決めたゴールを守り抜き、1-0で勝利をもぎ取ったものの、相手の猛攻に晒されたゲームだった。大岩監督も気を引き締めている。

「ドバイカップでは相手のプレッシャーが強かったので、自分たちからボールを放棄してしまったところがあった。自分たちがいかにゲームをコントロールし、スペースをコントロールするかが重要なので、そうした意識付けを選手たちにしていきたいと思います」

オリンピックのアジア最終予選2年前の大会では(14年大会と18年大会)、チームを立ち上げたばかりかつ2歳下ということもあり、いずれもベスト8止まりとなっている。

過去の成績を上回り、この世代のポテンシャルを見せつけた上で、チーム作りを加速させられるかどうか――。

彼らはコロナ禍のために約2年間、国際大会を経験できなかった世代でもある。その鬱憤を今大会にぶつけてもらいたい。

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