5〜6mの高さを跳び越える棒高跳... 戦前は強豪だった日本は、栄光を取り戻せるか

使うポールは、素材も長さも特に規定はない。

2020年の東京五輪では、陸上競技の跳躍部門で男女ともに走高跳と棒高跳、走幅跳、三段跳の4つの種目が実施される。古代から行われてきた棒高跳は、戦前は多くの日本人選手が活躍した種目だ。近年では、男子の日本記録保持者の澤野大地がリオ五輪で7位に入る好成績を残した。

ポールの素材に規定はなし。何を使ってもOK

棒高跳は、助走をつけてバーに向かって走り、ポールを“ボックス”と呼ばれる地面の支点に突き立て、ポールの反発力を活かしてバーを跳び越える種目だ。

棒高跳では、走高跳よりもはるかに高い位置にバーが設置され、男子は5.5m、女子は4.5mを超える高さまで跳ね上がる。

ポールは表面が滑らかであればよく、材質や長さについては特に規定がない。近年はグラスファイバーやカーボンファイバーを使ったポールが一般的であるが、かつては竹を利用することが多かった。重さや太さも規定はないので、各選手が自分に合う重さや長さ、太さ、しなりやすさのポールを選択できる。

同じ高さのバーへの挑戦は3回までとされており、連続して3回失敗するとその時点で終了となる。最後に跳び越えたバーの高さが、その試合における選手の記録となる。なお、走高跳と同様、バーは高くすることは可能だが、低くすることはできない。

体がバーに触れても、バーが地面に落ちなければ試技成功となるが、バーがポールに当たって落ちてしまうと、チャレンジ失敗となる。バーを越えた瞬間にポールを走ってきた方向に押し戻すことも、棒高跳の大切なポイントだ。

同じ高さの記録が並んだときは、バーへのチャレンジ数が少ない選手が上位となる。全ての高さで試技を行う必要はなく、次の高さへパスすることも可能。競技者が2~3人に絞られた際などには、パスを使った駆け引きも見どころの一つだ。

世界記録保持者はブブカとイシンバエワ

男子棒高跳の世界記録は2014年2月15日にルノー・ラビレニ(フランス)が出した6m16である。ただし、この記録は室内記録である。屋外記録では、1994年7月31日にセルゲイ・ブブカ(ウクライナ)が樹立した6m14が世界一である。ブブカは室内でも歴代2位となる6m15を記録しており、世界陸上で6連覇を達成するなどし、「鳥人」の愛称で世界的に知られた。

女子棒高跳の世界記録は、2009年8月28日にエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が樹立した5m06の屋外記録である。イシンバエワは、2004年のアテネ五輪と2008年の北京五輪を連覇するなどの実力とその美貌で人気を博した。

日本記録は、男子は2005年5月3日に澤野大地が樹立した5m83。女子は2012年6月9日に安孫子智美が出した4m40だ。

近年は若手の台頭もあり混戦

男子では近年、ブブカのような“絶対王者”がおらず、20年以上五輪で連覇した選手はいない。東京五輪では、前述のラビレニ、2月19日現在で世界ランク1位のサム・ケンドリクス(米国)、昨年6m越えを記録した22歳のテイミュール・モルグノフ(ロシア)などが上位を争うだろう。

女子で世界ランク1位、2位に位置しているのは、リオ五輪で金を獲ったエカテリニ・ステファニディ(ギリシャ)と銀だったサンディ・モリス(米国)だ。東京五輪では、こん2人に加え、ベテランのヤレスレイ・シルバ(キューバ)や、リオで銅の22歳、エリザ・マッカートニー(ニュージーランド)がメダルを争うことになりそうだ。

日本はかつての栄光を取り戻せるか

第二次世界大戦前までは、日本は棒高跳の強豪国だった。1932年のロサンゼルス五輪では西田修平が銅メダルを獲得し、日本人選手として棒高跳で五輪初となる表彰台に上った。また、1936年のベルリン五輪では、西田修平と大江孝雄が同じ記録で銀と銅を手にした。

戦後、日本人選手のメダル獲得はないが、2016年のリオ五輪では前述の澤野が男子で7位の好記録を修めた。また、リオにも出場した山本聖途は、昨年の日本陸上競技選手権大会で2位と30cmもの差をつけて圧勝し、翌月のアジア大会では見事に金メダルを獲得。現在は世界ランク13位につけており、東京五輪での上位進出が期待される。

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