馬と一体となって優雅な舞を競う馬場馬術...技の正確性と芸術性が見どころ
男女の区別なく同じ条件で実施される競技
1900年のパリ五輪で初めて行われた馬術競技は、人馬一体となって繰り出される華麗な技が魅力だ。特に「馬場馬術」は、音楽に合わせ舞い踊るように演技する馬たちの姿に目を奪われる。日本勢はヨーロッパの強豪国を押しのけ、存在感を発揮できるか。一人でも多くの選手の入賞が期待される。
動物とともに行う唯一のオリンピック種目
馬術はオリンピック競技のなかでも、非常にめずらしい競技だ。男女の区別なく同じ条件で実施され、選手の身体能力だけでなく動物を扱う能力も求められ、選手たちは燕尾服(えんびふく)や乗馬服、シルクハットを着用してエレガントな雰囲気のなか技を競う。他競技とは違った魅力で大会を盛り上げる。
20メートル×60メートルのアリーナで演技の正確さと美しさを競う「馬場馬術」、コース上の障害物を飛び越えタイムを争う「障害馬術」、そして障害、馬場、クロスカントリーの3種目を3日間にかけて行う「総合馬術」で構成されている。個々の選手のパフォーマンスは個人成績として、さらに各国の3人馬の合計点が団体成績としてカウントされる。
馬場馬術は、馬が優雅にダンスを踊っているようにも見える点で、ひと際観客の目を引く。演技の正確性と美しさを評価する規定演技、そして必須の要素を盛り込みながら音楽とともに走る自由演技がある。勝負の分かれ目となるのは「選手から馬への指示が最小限かどうか」。馬が人間の厳しい合図によってではなく、自ら舞っているようないきいきとした演技を披露すればするほど評価は高くなる。
強豪国として君臨してきたのは、馬術が文化として根づいているドイツだ。オリンピックの馬術競技で通算26個の金メダルを獲得しているように、表彰台の常連となっている。近年ではオランダやイギリスといった国々がライバルとして台頭が目を引く。イギリスは2016年のリオ五輪の馬術団体で銀メダルを獲得している。
日本勢は1932年以来の表彰台をめざす
日本の馬術の歴史のなかで、唯一のメダルとして刻まれているのが1932年ロサンゼルス五輪の「障害飛越」で西竹一(にし・たけいち)が勝ち取った金メダルだ。華族として乗馬に親しんでおり、「バロン西」という愛称を持っていた。
2012年のロンドン五輪では71歳という年齢で馬場馬術への出場を果たした法華津寛(ほけつ・ひろし)が話題を集めた。法華津は1964年の東京五輪にも障害飛越の選手として参加しており、2020年も代表の座を勝ち取れば最年長79歳でのオリンピック出場という偉業を成し遂げることになる。
2020年の東京五輪に向けて、日本勢の視界は決して悪くない。2018年8月にインドネシアで行われたアジア競技大会では、馬場馬術の団体で優勝を果たしている。6大会ぶりの金メダル獲得に貢献した佐渡一毅、高橋正直、照井駿介、黒木茜の4選手は2020年の東京五輪での活躍が期待される。同大会の馬場馬術の個人戦で4位に入った高橋と5位に食い込んだ照井は、ともに本場ドイツでのトレーニング経験を持ち、オリンピックの大舞台でも欧州勢に引けを取らない演技を見せられるだけの実力を備えている。
馬術競技の熱戦の舞台となるのは、東京都世田谷区の馬事公苑。7月25日(土)、26日(日)には馬場馬術の予選、28日(火)、29日(水)には同決勝が行われる。