柔道女子はアテネ五輪の5階級に次ぐ、4階級で金メダルを獲得。頂点に向かうまで、強敵が立ちはだかるものの、それぞれの特徴を生かして、難敵を倒して頂点をつかんだ。
■濵田尚里、難敵のマロンガを寝技に持ち込み頂点に立つ
78キロ級に出場した濵田尚里。初戦から得意の寝技で勝ち上がると、準決勝は2021世界選手権覇者のアナマリア・ワグナー(ドイツ)と対戦。ここでも序盤から寝技に持ち込み、腕挫十字固で一本勝ちして決勝に進出する。
決勝はマドレーヌ・マロンガ(フランス)と対戦。濱田がここ2年、日本人以外で敗戦した相手だった。直近はワールドマスターズ2021決勝で、この時はマロンガに大外返しで一本負けを喫し、2019世界選手権に続き連敗としていた。
その時以来の顔合わせとなった東京五輪の決勝で、濱田はマロンガが奥襟をつかんできたところを交わしながら、得意の寝技に持ち込んでいく。何度もしつこく寝技をかけていった濱田。マロンガも足をかけて抵抗するが、濱田は足を抜いて抑え込みの体勢に。寝技でつかんだ金メダルだった。
■素根輝、身長差の不利を克服し、個人・団体を通して無敗
78キロ超級には素根輝が登場。身長162㎝と重量級では小柄な部類に入るが、素根は自分の柔道を貫いた。初戦は体落で一本勝ち、準々決勝はカイラ・サイト(トルコ)と対戦し、体落と横四方固で合わせ技一本勝ちとして準決勝へ進出する。
準決勝の相手は、ワールドマスターズで2回準優勝のイリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)。180cmの巨体で器用さを兼ね備えている相手に対し、素根は下からあてがうように大内刈りで技ありを奪うと、そこから寝技に持ち込み、袈裟固で一本勝ちとした。
決勝では世界ランキング1位のイダリス・オルティス(キューバ)と顔を合わせた。数々の国際大会で実績を残してきたオルティスから放たれるオーラに負けることなく、素根は技を果敢に仕掛けていった。素根は延長戦に入っても攻め続け、オルティスへ3回目の指導がコールされた瞬間、素根の金メダルが決まった。
新種目の混合団体で日本はフランスに敗れて銀メダルとなったが、素根は日本選手で唯一勝利を収め、個人、団体を通して全勝でオリンピックを終了した。
■阿部詩、準決勝、決勝と延長戦を制し、兄と同時金メダルを達成
52キロ級には阿部詩が出場。初戦では釣腰で技ありを奪い、そのまま抑え込みで合わせ技一本勝ち。準々決勝では、チェルシー・ジャイルズ(イギリス)との組み手に苦戦するも、ジャイルズが不十分な組み手で巻き込んできたところを隅落で返して技ありとし、優勢勝ちとした。
準決勝はオデッテ・ジュフリダ(イタリア)との対戦。この日初めての延長戦を迎えた阿部だが、鮮やかな内股で技ありを奪って勝利すると、金メダルをかけた決勝戦では、ここまで調子の良さを発揮して勝ち上がってきた、アマンディーヌ・ブシャール(フランス)と顔を合わせた。
ブシャールとは6勝1敗と分が良いものの、直近で対戦した2019年のグランドスラム大阪では、阿部が敗れていた。準決勝に続き、延長戦までもつれこんだ決勝戦では、4分に阿部が寝技に持ち込んで、崩袈裟固で一本勝ちを果たし、粘り強い柔道で兄の一二三とともに金メダルを獲得した。
■新井千鶴、16分を越える死闘を制するなど、技と粘りで頂点に
70キロ級には新井千鶴が登場。初戦から足技を駆使して大外刈りで勝利を飾ると、準々決勝ではジョバンナ・スコッチマロ(ドイツ)相手に、体落で技ありを奪い、そのまま寝技に持ち込んで縦四方固を決めて、合わせ技一本勝ちとした。
銀メダル以上がかかった準決勝は、シード選手を下して勝ち上がったマディナ・タイマゾワ(ROC)と対戦。最初の4分では決着がつかず、延長戦に入るが、両選手にポイントがつかないまま10分が経過。新井が投げてもタイマゾワが柔らかい身体を生かして凌ぐという展開が続く。12分を迎え、足技でタイマゾワを倒した新井が送襟絞で16分を超える死闘を制した。
決勝は、2021世界選手権覇者のバルバラ・マティッチ(クロアチア)と、第1シードのサンネ・ファンダイク(オランダ)を下して勝ち上がった、ミヒャエラ・ポレレス(オーストリア)と対戦。開始1分に小外刈りで技ありを奪うと、マティッチの猛攻にも耐えて、そのまま優勢勝ちで優勝。足技と寝技で金メダルを勝ち取った。