全日本柔道連盟(AJJF)は2019年6月、Tokyo 2020(東京五輪)日本代表選考を3段階で実施すると発表。最速で同年11月に内定が出されると話題になった。しかし、実際に第1段階で内定となったのは、女子78キロ超級の素根輝のみ。ほかの階級はいつ決定するかを解説する。
大前提として、日本は開催国枠として各階級男女1人ずつ、合計14枠を確保している。柔道は国・地域ごとに各階級1名しか出場できないため、東京五輪出場を目指す日本人選手は、開催国枠の獲得を目指すこととなる。その選考方法は、AJJFによって決定されている。
■日本代表選考「第1段階」: 世界柔道とGS大阪で優勝
- 2019世界柔道選手権東京大会(2019年8月)で優勝
- グランドスラム大阪2019(2019年11月)で優勝
- 強化委員会で3分の2以上の賛成により内定
世界柔道とGS大阪の両方で優勝すれば「第1段階」で内定となる。まず、世界柔道で優勝した選手は以下の通り。
- 男子66キロ級 丸山 城志郎(ミキハウス)
- 男子73キロ級 大野将平(旭化成)
- 女子52キロ級 阿部 詩(日本体育大学1年)
- 女子78キロ超級 素根 輝(環太平洋大学1年)
この4選手はGS大阪で優勝すれば、内定はほぼ確実だったが、同大会における該当4階級の優勝者は以下の通り。
- 男子66キロ級 阿部 一二三(日本体育大学4年)
- 男子73キロ級 海老沼 匡(パーク24)
- 女子52キロ級 アマンディーヌ ブシャール(フランス)
- 女子78キロ超級 素根 輝(環太平洋大学1年)
男子66キロ級の丸山城志郎は、決勝で阿部一二三に敗れて銀メダル。男子73キロ級の大野将平は、負傷により欠場。女子52キロ級の阿部詩は、決勝でアマンディーヌ・ブシャールに敗れて銀メダルとなった。そうした中、素根輝だけが両大会で優勝。いち早く内定を勝ち取ることとなったのだ。
■日本代表選考「第2段階」: 3つの国際大会の結果で判断、注目ポイントは?
「第1段階」で決定しなかった場合、2019年12月から2020年2月までに開催される3つの国際大会、ワールドマスターズ青島(中国)、GSパリ(フランス)、GSデュッセルドルフ(ドイツ)の結果で判断。2月27日の全柔連の強化委員会で3分の2以上の賛成があれば、内定者決定となる。
男子60キロ級・永山竜樹や男子73キロ級・橋本壮市のように、ワールドマスターズとGSパリで優勝している選手もいる一方で、ライバルが火花を散らす階級もある。男子では、66キロ級の丸山城志郎と阿部一二三、100キロ超級の原沢久喜と影浦心の争いが注目される。100キロ超級は、これまで原沢の評価が高かったが、影浦はGSパリで10年間無敗の絶対王者テディ・リネール(フランス)に勝利。影浦に対する期待が、にわかに高まっている。また73キロ級の橋本は2大会で優勝しているものの、大野将平の存在は無視できない。女子では、52キロ級の阿部詩と志々目愛がしのぎを削っている。
■2019年12月12~14日 ワールドマスターズ(中国/青島)日本人結果
- 男子60キロ級 永山竜樹(了徳寺大学職員)優勝
- 男子73キロ級 橋本壮市(パーク24)優勝
- 男子73キロ級 海老沼 匡(パーク24)3位
- 男子81キロ級 藤原 崇太郎(日本体育大学3年)2回戦敗退
- 男子90キロ級 長澤憲大(パーク24)5位
- 男子90キロ級 村尾 三四郎(東海大学1年)7位
- 男子90キロ級 ベイカー茉秋(日本中央競馬会)負傷により欠場
- 男子100キロ級 ウルフ アロン(了徳寺大学職員)2位
- 男子100キロ超級 原沢久喜(百五銀行)優勝
- 男子100キロ超級 影浦 心(日本中央競馬会)3位
- 女子52キロ級 志々目 愛(了徳寺大学職員)優勝
- 女子57キロ級 玉置 桃(三井住友海上火災保険)2位
- 女子57キロ級 芳田 司(コマツ)5位
- 女子63キロ級 鍋倉那美(三井住友海上火災保険)優勝
- 女子63キロ級 田代未来(コマツ)3位
- 女子63キロ級 土井雅子(JR東日本)3位
- 女子70キロ級 新井千鶴(三井住友海上火災保険)3位
- 女子70キロ級 新添左季(自衛隊体育学校)2回戦敗退
- 女子70キロ級 大野陽子(コマツ)1回戦敗退
- 女子78キロ級 梅木真美(ALSOK)2回戦敗退
- 女子78キロ級 濵田尚里(自衛隊体育学校)負傷により欠場
■2020年2月8~9日 GSパリ日本人結果
- 男子60キロ級 永山竜樹(了徳寺大学職員)優勝
- 男子66キロ級 相田勇司 (國學院大学2年)4回戦敗退
- 男子73キロ級 橋本壮市(パーク24)優勝
- 男子73キロ級 海老沼 匡(パーク24)5位
- 男子81キロ級 藤原 崇太郎(日本体育大学3年)3位
- 男子90キロ級 長澤憲大(パーク24)2位
- 男子90キロ級 村尾 三四郎(東海大学1年)3回戦敗退
- 男子100キロ級 羽賀 龍之介 (旭化成)3回戦敗退
- 男子100キロ級 飯田 健太郎 (国士舘大学3年)2回戦敗退
- 男子100キロ超級 影浦 心(日本中央競馬会)2位
- 女子48キロ級 古賀 若菜(福岡・南筑高校3年)2位
- 女子52キロ級 志々目 愛(了徳寺大学職員)3位
- 女子57キロ級 玉置 桃(三井住友海上火災保険)3位
- 女子63キロ級 鍋倉那美(三井住友海上火災保険)2位
- 女子63キロ級 土井雅子(JR東日本)3位
- 女子70キロ級 大野陽子(コマツ)優勝
- 女子70キロ級 新添左季(自衛隊体育学校)2位
- 女子78キロ級 梅木真美(ALSOK)3位
- 女子78キロ超級(※)冨田若春(コマツ)2回戦敗退
※女子78キロ超級は素根輝が内定
■2020年2月21~23日 GSデュッセルドルフ 日本からのエントリー(2月14日、AJJF発表)
- 男子60キロ級 髙藤直寿(パーク24)
- 男子66キロ級 丸山 城志郎(ミキハウス)※負傷により欠場
- 男子66キロ級 阿部 一二三(日本体育大学4年)
- 男子73キロ級 大野将平(旭化成)
- 男子81キロ級 永瀬貴規(旭化成)
- 男子90キロ級 向 翔一郎(ALSOK)
- 男子100キロ級 ウルフ アロン(了徳寺大学職員)※負傷により欠場
- 男子100キロ超級 原沢久喜(百五銀行)※負傷により欠場
- 女子48キロ級 渡名喜 風南(パーク24)
- 女子52キロ級 阿部 詩(日本体育大学1年)
- 女子57キロ級 芳田 司(コマツ)※負傷により欠場
- 女子63キロ級 田代未来(コマツ)
- 女子70キロ級 新井千鶴(三井住友海上火災保険)
- 女子78キロ級 濵田尚里(自衛隊体育学校)
- 女子78キロ超級(※)朝比奈 沙羅(パーク24)
※女子78キロ超級は素根輝が内定
■日本代表選考「第3段階」:全日本選抜体重別選手権
「第2段階」までに決定しなかった場合、2020年4月に開催される全日本選抜体重別選手権の終了後に、強化委員会で選考を行う。この大会が最終選考対象となるため、これまで最重量級の最終選考会を兼ねていた全日本選手権大会(4月29日、千葉ポートアリーナ)は、選考の対象とならない。
全日本選抜は4月4日から5日にかけ、福岡国際センターで開催される。