東京五輪カヌー競技、本場スロバキアで経験を積む日本人トップ選手と新戦力に注目!

リオ五輪でアジア人初の表彰台を飾った羽根田卓也が日本カヌー界に新時代をもたらしたはずが……

リオデジャネイロ五輪で羽根田卓也が銅メダルを獲得し、にわかに盛り上がりを見せるカヌー。2020年の東京五輪では、羽根田ら強豪国のスロバキアで武者修行をしているトップ選手や、新世代の選手の活躍が期待される。

世界のカヌー競技における日本のレベル

カヌー競技は、小舟をパドル(櫂)で漕いで速さを競うイギリス発祥のスポーツだ。静水面上の直線コースを一斉にスタートする「スプリント」と、激流のコースの中で吊されたゲートを順に通過し、タイムを競う「スラローム」に大別される。

さらに、競技で使われる船とパドルの形状で種目が分かれる。ブレード(水かき)が片端のみのブレードパドルで漕ぐ「カナディアン」、両端にブレードがあるパドルでの「カヤック」に種別される。

ヨーロッパが本場の競技ということもあり、ドイツやハンガリー、また欧州文化の影響も大きいカナダなどが強豪国に挙げられる。そうした中、注目すべき国がリオ五輪でもメダルを独占した東欧のスロバキアだ。

リオ五輪では、日本の羽根田卓也がスラロームの男子カヤックで銅メダルを獲得。アジア人初のカヌー競技でのオリンピック表彰台だった。羽根田のメダル獲得は間違いなく、日本カヌー界にとって追い風となったことだろう。

ところが、日本国内には多くの河川があるにも関わらず、カヌーの競技環境は十分とは言えない。実際、羽根田や八木愛莉といった日本のトップ選手は、カヌー競技の中心地である東欧での経験値を積むため、本場スロバキアを拠点に移して練習を行っている。

一方で、三浦伊織のように高校から競技を始めた選手がインターハイで優勝、わずか2年で世界大会に出場している。本人の才能と並外れた努力の賜物であることは間違いないが、裏を返せば、競技があまり普及しておらず、選手層が厚くないということでもある。

日本カヌー連盟は、学生選手の育成強化や多種目からの転向者の受け入れに力を入れているが、東京五輪後を見据えた将来的な取り組みであり、即効性のあるものではない。

そこで東京五輪に向けて注目するとなれば、やはり上記の3選手だろう。特に羽根田はリオ五輪に続いて、東京でも2大会連続のメダル獲得が期待されている。

羽根田卓也(スラローム・カナディアン)

1987年7月17日生まれ、愛知県出身。2006年に名鉄学園杜若高校を卒業すると同時に、カヌーの強豪国であるスロバキアにわたり、現地のコメニウス大学を拠点にして、トレーニングに打ち込んできた。2008年のアジア選手権で優勝を果たすと、同年の北京五輪の出場し、14位という成績に終わるも、2012年ロンドン五輪では7位入賞を果たして、着実に成績を上げてきた。

2013年からミキハウスに所属し、2016年リオデジャネイロ五輪では、スラロームのカナディアンで銅メダルを獲得。オリンピックのカヌー競技におけるアジア人初のメダルとなった。2018年、第41回NHK杯全日本競技大会で4年連続12回目の優勝を達成。同年にインドネシア・ジャカルタで開催されたアジア大会では金メダルを獲得した。

これまでスロバキアに拠点を置いてきた羽根田だが、2019年5月に東京五輪の会場となるカヌー・スラロームセンターが完成することから、練習拠点を日本に移す計画を昨年秋に明らかにしており、アジアのトップアスリートとして、東京五輪での表彰台を目指している。

八木愛莉(スラローム・カナディアン)

1994年11月29日生まれ、神奈川県出身。アウトドアアクティビティを志向する幼稚園に入園したことをキッカケに、3歳で初めてカヌーに乗る。萌明幼児館カヌークラブに所属し、小学校3年生で公式戦に初出場。6年生のときに、B&G杯全国少年少女カヌー大会で優勝。中学生からスラローム競技に専念し始めた。

2010年、神奈川県立上溝南高校に進学。スラローム・カヤックのジュニア日本代表として世界選手権などの国際レースに出場した。2013年、早稲田大学に進学後、2014年に肩の手術を行い、カナディアンに転向。練習拠点も2015年からスロバキアに移した。2017年、早稲田大学を卒業し、同年4月にANA Cargoに入社。その年のアジア選手権U-23で優勝を果たした。2018年の世界選手権は準決勝で敗退となった。

三浦伊織(スプリント・カヤック)

三浦は、1997年5月1日生まれ、山梨県出身。カヌー競技を始めたのは2013年、山梨県立富士河口湖高校に入学してからだ。2年生で全国高等学校総合体育大会(インターハイ)に出場すると、スプリント・カヤック200メートルで3位、同500メートルで5位といきなり頭角を現す。

翌年の3年次には両種目で優勝を果たした。全日本ジュニアでも両種目で金メダルを獲得する。2016年に日本体育大学に進学。シニアとしては、まだ満足な結果を残せていないが、東京五輪に向けての飛躍が期待される。

自然に恵まれた日本。環境を生かし、東京五輪を機に強豪国へ!

日本には多くの河川がある。その意味では、カヌーという競技に最適な環境が整えられるはずなのだが、競技そのものの普及、練習環境の整備という点で、ヨーロッパなどと比較するとまだまだ遅れていると言わざるを得ない。そのため、スロバキアなどの海外に練習拠点を置いている選手も少なくないのだ。

しかし、リオ五輪で羽根田が日本人でもメダリストになれることを証明した。続く東京でも、日本人選手がメダルを獲得すれば、日本国内でカヌー競技の普及が進むだろう。東京で開催されるオリンピックは、日本のカヌー界にとって重要な意味を持つ大会であることは間違いない。

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