総合馬術の日本代表、弓良隆行(ゆみら・たかゆき)は落馬によって選手生命を脅かされる大けがに見舞われた。しかし、懸命なリハビリで復活を遂げると、2017年、2018年の全日本総合馬術選手権大会で連覇を達成。2度目のオリンピック出場へ向け、愛馬とともにさらなる鍛錬を重ねている。
2年連続の国内王者として2020年を見据える
馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術の3種目を同じ人馬で争う「総合馬術」において、弓良隆行(ゆみら・たかゆき)は2020年の東京五輪で活躍が期待される一人だ。1980年9月10日生まれ。東京五輪直後に40歳になる。
東京都荒川区出身で、小学5年生の時に初めて乗馬を体験した。競馬が趣味の父に連れられて行った、埼玉県の東武動物公園にある『東武乗馬クラブ&クレイン』で馬に魅了された。一般家庭で育ったため自分の馬を持つことはできなかったが、週に1回のレッスンに通い、複数の馬と触れ合うことで、馬とのコミュニケーションの取り方や乗馬の技術を身につけた。
競技者として頭角を現したのは中学3年時。ジュニアの全国大会で優勝を飾った。明治大学に入学後は本格的に馬術競技に打ち込み、卒業後は乗馬クラブのインストラクターとして働きながら、日本総合馬術界の第一線で活動している。
2010年と2018年のアジア競技大会の総合馬術では団体金メダルの獲得に貢献した。2012年、31歳の時には、ロンドン五輪の舞台にも立っている。長らくイギリスを主な拠点に活動していたため、全日本王者を決める全日本総合馬術大会には2017年、7年ぶりに出場し、見事に優勝、2018年にも同大会で連覇を達成している。総合馬術においては国内で最も東京五輪代表に近い存在と言えるだろう。
選手生命の危機を乗り越え、愛馬と完全復活
2011年から活動拠点をイギリスに移し、翌2012年には初めてのオリンピック出場を果たした。しかし、結果はクロスカントリーで落馬し予選敗退を喫す。団体戦でも12位と振るわず、不完全燃焼のまま大会を終えることとなった。4年後のリベンジを誓い、再びイギリスでトレーニングの日々を送っていたなか、弓良を悲劇が襲った。
2015年4月、ロンドン五輪後から新たに主戦馬として調教を始めたポーチャーズホープ号から落馬した際、馬の下敷きとなり、骨盤骨折という大けがを負ってしまったのだ。日本での約1年間のリハビリを経て、2016年春に競技への復帰を果たしたものの、リオデジャネイロ五輪出場はかなわなかった。
弓良は、再びポーチャーズホープ号とともに戦っている。トラウマになってもおかしくない大きな事故に遭っても、弓良は相棒ポーチャーズホープ号との再会を歓迎し、愛馬とともに完全復活を遂げた。
2017年の全日本総合馬術選手権大会でのタイトル獲得は、個人としての結果だけでなく、弓良とポーチャーズホープ号のきずなを深めるためにも、大きな意味を持つものだった。さらにアジア大会、2018年の全日本総合馬術選手権大会と成果を残すごとに、相棒同士の関係性は向上している。東京五輪で「名コンビ」が躍動する可能性は十分にある。