卓球グランドファイナルレビュー:「ダブルみゆう」が日本勢連覇を達成。混合ダブルスでは伊藤美誠&水谷隼が東京五輪へ弾み

女子シングルスでは、石川佳純がオリンピック3大会連続出場へ

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
高校2年生の長崎美柚(左)と中学3年生の木原美悠(右)。若い「ダブルみゆう」が女子ダブルスで優勝を果たした

卓球のワールドツアーグランドファイナルが開催され、女子ダブルスで長崎美柚&木原美悠ペアが日本勢連覇。混合ダブルスでは伊藤美誠&水谷隼ペアが初の銀メダルと快挙を果たした。一方で、シングルスでは中国勢を相手に苦杯をなめる結果となった。

女子ダブルスでは日本勢が連覇達成

2019年12月12日から15日まで行われた卓球のワールドツアーグランドファイナルで、日本勢はダブルスでの躍動が目立った。

女子ダブルスでは、高校2年生の長崎美柚と中学3年生の木原美悠の「ダブルみゆう」ペアが優勝という快挙を果たした。日本勢では、2018年の伊藤美誠&早田ひなペアに続く連覇達成だ。「ダブルみゆう」は今大会、準決勝で今年の世界選手権金メダリストの中国人ペア、孫穎莎(スン・イーシャ)&王曼昱ペア(ワン・マニュ)を撃破すると、決勝では今年10月のドイツオープン決勝で敗れていた韓国の田志希(チョン・ジヒ)&梁夏銀(ヤン・ハウン)ペアに3−0でストレート勝ち。11月のオーストラリアオープン、12月の世界ジュニアに続く国際大会での優勝を成し遂げた。

2020年の東京五輪で新種目として行われる混合ダブルスには、伊藤美誠&水谷隼ペアが出場し、日本初の銀メダルを獲得した。伊藤&水谷ペアはフランス代表との初戦を3−0のストレートで制すと、準決勝も香港代表ペアを相手にストレート勝ち。世界ランク1位の許昕(シュー・シン)&劉詩雯(リウ・シーウェン)ペアが待ち受ける決勝へと進んだ。

決勝では、伊藤&水谷ペアが先に2セットを奪って今年の世界選手権王者を苦しめた。しかし、第3、第4セットを続けて落としてフルセットまで持ち込まれると、最終セットは9−11と僅差で及ばなかった。金星とはならなかったが、今年7月に初めてペアを組んだばかりの2人は、今大会を含め国際大会で5度も決勝に駒を進めており、東京五輪でのメダル獲得の可能性を大いに感じさせる結果を残している。

東京五輪のメダル獲得に立ちはだかる中国勢の壁

シングルスでは、2連覇を狙った張本智和が準々決勝で敗退。伊藤美誠は準決勝で敗れ、佐藤瞳は初戦で中国の丁寧(ディン・ニン)を破ったものの、準々決勝では伊藤との日本人対決を0−4で落としてベスト8に終わった。また、水谷隼、平野美宇、石川佳純はいずれも初戦で姿を消した。

日本勢の前に分厚く立ちはだかる壁となったのは、やはり中国勢だった。

初戦で敗れた平野と石川はともに中国勢を相手に屈した。張本が準々決勝で敗れたのは世界ランク1位の許昕(シュー・シン)。張本はフルゲームまでもつれ込む激戦を演じたが、第6ゲームではマッチポイントを握りながら逆転を許す勝負どころでの弱さを露呈し、「涙を通り越して笑うしかない」と肩を落とした。これで許昕との対戦は7連敗。すでに出場が確実となっている来年の東京五輪に向けて、「ある意味、いちばん悔しい一年。来年は二度と後悔しない」と懸命に顔を上げた。

準決勝まで駒を進めた女子の伊藤も、世界ランク1位につける中国の陳夢(チェン・ムン)に及ばなかった。1ゲーム目を逆転で奪ったが、その後2ゲームを連取されると、4ゲーム目は多彩なレシーブで7−2とリードしながら、サーブで主導権を握った相手に逆転を許した。ゲームカウント1−3で後がなくなると、5ゲーム目は攻め急いだことが仇となり、ミスが続いてゲームセット。シングルスでは日本勢唯一のベスト4入賞を果たしたが、「どんな状況でも勝ちたい」と語る伊藤にとっては悔しさの残る一戦となった。

「目も卓球も慣れた」伊藤美誠は東京五輪に向け手応え

年内最後の国際大会を終え、シングルスのオリンピック代表切符をかけた争いにも決着がついた。

男子は、今大会での逆転を狙っていた水谷が初戦で敗れたため、世界ランクで水谷を上回る張本と丹羽孝希の出場が確実。女子は伊藤がすでに決まっており、残り1枠を争っていた石川と平野がともに初戦敗退となったことで、世界ランキングポイントでわずか135の差でリードしている石川の代表選出が確実となった。団体戦や混合ダブルスに臨む男女各3人目の代表選手は、日本卓球協会の推薦によって決まる。

東京五輪の前哨戦とも言えるレベルの高い選手が集まった今大会。伊藤&水谷の混合ダブルスにメダル獲得の可能性が広がったのは大きな収穫だが、一方で、シングルスや団体戦では中国勢の牙城を崩せない限り、表彰台の頂点に立つのは難しい。

伊藤は今年、中国勢を除いた外国選手との対戦では無敗を守ったが、中国勢には24試合で10勝と分が悪かった。ただ、中国勢に対して「目も卓球も慣れた」と手応えを感じたのも事実。目前に迫った東京五輪に向け、代表に決まった選手たちがさらなるレベルアップを図るのみだ。

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