円盤を遠くに投げる――極めてシンプルな競技は、古代オリンピックから行われていたという。一流の選手は遠心力を活用する「フルターン」という投法で、男子は2キロ、女子は1キロの円盤を渾身の力を込めて空に放ち、記録達成をめざす。
男子は2キロ、女子は1キロの円盤を投げる
陸上競技においてトラックの内外で行われる競技はフィールド競技と呼ばれる。円盤投もフィールド競技の一つだ。
円盤の重さは男子2キロ、女子1キロ。日常生活で言うと、男子は2リットルのペッドボトル一本分、女子は1リットルの牛乳パック一本分の重さにあたる円盤を片手で投げる。円盤の直径は男子が219〜221ミリ、女子が180〜182ミリとなっている。
直径2.5メートルのサークル内で選手が回転して円盤を投げ、その距離を競い合う。2.5メートルのサークルの中心から34.92度の扇形のラインが伸びており、選手たちはその範囲内に円盤を投げなければならない。円盤が線上、または線外に落ちるとファウルになってしまう。
投法は3種類ある。「スタンディングスロー」は足を移動させない「立ち投げ」で、体をフル回転させないため、飛距離が出にくい。「ハーフターン」は半回転のターンからの投てき。「フルターン」は最初の1歩を360度程回転させる方法で、国際舞台で活躍する選手はほとんどがこの方法をマスターしている。遠心力を活用して、円盤をより遠くに投げられるからだ。
競技の歴史は古い。古代オリンピックから種目に組み込まれていたと考えられている。古代ギリシャの陶器には、円盤投をする男性が描かれているものも存在する。
男女ともに世界記録は東ドイツ勢が樹立
男子の世界記録は74メートル08。1986年に当時東ドイツのユルゲン・シュルトが打ち立てたものだ。シュルトは1988年のソウル五輪で金メダルを獲得している。女子の世界記録も同じく東ドイツのガブリエレ・ラインシュによるもので、76メートル80という金字塔だ。
リオデジャネイロ五輪の男子円盤投では、ドイツ勢が健闘している。クリストフ・ハルティングが金メダル、ダニエル・ヤシンスキが銅メダルを獲得した。銀メダルを手にしたのはドイツの隣国ポーランドのピオトル・マラチョフスキだった。女子はクロアチアのサンドラ・ペルコビッチが金メダル、フランスのリーナ・ロベル・ミションが銀メダル、キューバのデニア・カバレロが銅メダルを首にかけた。
東京五輪での活躍が期待される日本勢の筆頭が、湯上剛輝(ゆがみ・まさてる)だ。1993年4月14日生まれ、トヨタ自動車所属のアスリートで、2018年の日本陸上競技選手権大会で62メートル16の日本新記録を樹立し、初優勝を果たした。同年8月のアジア競技大会では57メートル62の6位に終わったものの、日本陸上で3度も日本記録を更新してみせた勢いにさらなる伸びしろを感じさせる。
予選通過標準記録に達した選手全員が決勝に進むのが基本。決勝では、上位8番目までの記録の選手はさらに3回の試技を行い、合計6回のなかの最高記録によって順位が決まる。東京五輪ではオリンピックスタジアム(新国立競技場)が決戦の舞台となる。