主に2人以上のチームで水上を漕ぎ抜くボート競技(ローイング)。漕手全員が息を合わせて水面を走り抜ける様は圧巻だ。男子だけでなく、女子部門も1976年モントリオール五輪に採用された。欧米を中心に人気となっている。
女子ボートはモントリオール大会から採用に
現在のような形の近代ボート競技となったのは18世紀頃とされ、イギリスの名門校同士のクラブレースの活況が発端となり、欧州を越えてアメリカでも人気となった。
日本での近代ボート競技は、明治維新直前、横浜山下町で発足された在留外国人レースクラブと寄港中だったイギリス軍艦クルーのレースが起源とされる。明治に入って間もなく日本人大学生によるボート熱が高まった。今日でもカレッジスポーツの印象が強いが、実業団のチームも多数存在している。
オリンピックでは、1900年の第2回パリ大会から行われている老舗競技だが、女子ボートは1976年のモントリオール大会から採用され、東ドイツが6種目中4個の金メダルを獲得した。
全身の筋力を駆使しながら、仲間との統一性で勝つ
川辺や海や湖の直線コース(五輪では2000メートル)で、オールを使ってボートを漕ぎ、順位を争う。ボートに足を固定し、スライドシートで前後運動を繰り返し、腕でオールを漕ぐ。全身の筋力を使う過酷なスポーツでもある。
漕ぐ(ストローク)と一口に言っても、パドルのブレード(水かき)を水面に入れる角度、押し出す角度など、その漕ぎ方には複数の行程とリズムがあり、これを最大8人で息を合わせて行う統一性が求められる。その統一性から生まれる美しいフォームとモーションが見どころ。競技のことを知らなくても、思わず見入ってしまうことだろう。
種目はスカルとスウィープで大別される。スカルはオールを右手と左手に1本ずつ、合わせて2本持って漕ぐ。スウィープはオールを1人1本ずつ持って漕ぐ種目だ。
東京五輪では、スカル系がシングル(1人:男子/女子)、ダブル(2人:男子/女子)、クオドルプル(4人:男子/女子)、軽量級ダブル(2人男子/女子)。スウィープ系が、舵手なしペア(2人:男子/女子)、舵手なしフォア(4人:男子/女子)、エイト(8人+舵手1人:男子/女子)となり、計7種目が行われる。
軽量級ダブルスカルは、男子が72.5kg以下かつ平均体重が70.0kg以下、女子が59.0kg以下かつ平均体重57.0kg以下が規定となる。
東京五輪、日本の開催国枠はシングルスカル
東京五輪の各国代表選考は、現地時間2019年8月29日~9月1日開催の『世界ボート選手権(オーストラリア・オッテンスハイム)』が第一弾となる。
その後、2019年から2020年にかけてシングル、ダブルスカル種目に絞った4大陸別の予選が続き、各種目2枠を争う最終予選が2020年5月17~19日スイス・ルツェルンで実施される。日本の開催国枠は、女子シングルスカル1枠だ。
ボート競技は、男女ともに全種目が東京湾に新設される『海の森水上競技場』で行われる。
初採用のモントリオール大会から欧州勢がリード
五輪における女子ボートは、初採用のモントリオール大会から2004年アテネ大会まで東ドイツ時代を含むドイツの独壇場だったが、近年は、ロシア・東欧勢、アメリカ、ニュージーランドも上位に食い込んでいる。
近代ボート発祥国イギリスも、女子部門が奮わない時期が長かったものの、ヘレン・グローバー&ヘザー・スタンニングのペアがスカルダブルでロンドン、リオデジャネイロを2連覇した。エイトに関しては、アメリカが北京五輪、ロンドン五輪、リオ五輪と3連覇しており、他国を圧倒する内容を出し続けている。
軽量級ダブルスカルで表彰台を目指す日本女子勢
日本の女子ボートは、男子以上に世界の壁に阻まれている。2016年のリオ五輪では、大石綾美(中部電力)と冨田千愛(現・福井県スポーツ協会)が軽量級ダブルスカル日本代表として決勝まで進出するも、12位で終えている。
日本ボート協会では、有望な学生や次世代のボート競技者を発掘すべく他競技からの転向者の海外合宿などをサポートしているが、現実的に日本女子勢が上位を狙えるのが、男子同様、実績のある軽量級ダブルスカルになってくるだろう。
大石、冨田は引き続き代表候補として期待がかかる。さらに、国体優勝で頭角を現した明治大学所属の高島美晴も注目株となっている。その高島と2018年のアジア大会でペアを組んだ瀧本日向子(明治大学)も、強化対象選手として合宿に参加。冨田とのペアで練習をこなしており、有力選手の裾野は広がってきている。
まずは東京五輪の出場権がかかる世界選手権の代表入りの争いに注目だ。