体操の内村航平が五輪2連覇。レスリングの吉田沙保里が3連覇で、伊調馨は前人未到の4連覇【2010年代の日本人メダリスト】
ボクシングで村田諒太が1964年東京五輪以来の金メダル
連覇や2冠といった充実の2000年代を経て、2010年代のオリンピックは女性アスリートの活躍が光った。ロンドン五輪ではサッカーのなでしこジャパンが銀メダル、リオデジャネイロ五輪ではバドミントンの髙橋礼華(あやか)と松友美佐紀による「タカマツ」ペアが金メダルを獲得するなど、ウーマンパワーがスポーツ史を彩った。
ロンドンでは女性アスリートが4つの金メダル
2012年のロンドン五輪で日本勢は7つの金メダルを獲得した。うち4つが女性アスリートが勝ち取ったものだった。
レスリングでは女子フリースタイル48キロ級の小原日登美(おばら・ひとみ)、同55キロ級の吉田沙保里、同63キロ級の伊調馨が金メダリストとなった。吉田と伊調はともにオリンピック3連覇の快挙だった。伊調が8月8日に景瑞雪(中国)との決勝を制すと、10日には吉田が北京五輪の銅メダリスト、トーニャ・バービーク(カナダ)との決勝に勝利した。
日本人女性のもう一人の金メダリストが柔道の松本薫だ。オリンピックはこの大会が初体験ながら、女子57キロ級の頂点に立った。1回戦、2回戦、準々決勝、準決勝はいずれも優勢勝ち。コリナ・カプリイオリウ(ルーマニア)との決勝戦は5分間の試合時間で勝敗が決まらず、延長で勝利をもぎ取った。
日本の女性ではサッカーの「なでしこジャパン」も存在感を見せつけている。2011年にワールドカップを制したメンバーを主軸に、カナダ、スウェーデン、南アフリカとのグループリーグを2位で通過。続くブラジルとの準々決勝に2−0、フランスとの準決勝に2−1で勝利し、決勝に駒を進めた。
強豪アメリカとの決戦、なでしこジャパンは後半の立ち上がりまでに2点のビハインドを負ってしまう。大儀見優季の3戦連続ゴールで追いすがるも、1-2で破れた。準優勝に終わったとはいえ、日本サッカー史上初となるオリンピックのメダル獲得は偉業と言っていいだろう。
男子勢ではボクシングで村田諒太、体操の男子個人総合で内村航平、レスリングの66キロ級で米満達弘が金メダルを獲得している。村田は世界的に激戦区と言われるミドル級で、1964年東京五輪の桜井孝雄以来となる48年ぶりの金メダリストとなった。内村は2つの銀メダルに終わった4年前の北京五輪の雪辱を果たすようなパフォーマンスを見せ、男子個人総合では1984年ロサンゼルス五輪の具志堅幸司以来となる金メダルを手にした。
ロンドン五輪で日本選手団は7つの金メダルに加え、14の銀メダル、17の銅メダルを持ち帰った。たとえば、入江陵介、北島康介、松田丈志、藤井拓郎による競泳の男子4×100mメドレーリレーの銀メダルは、世界規模でインパクトを残した銀メダルの一つと言っていいだろう。
快挙続発のリオデジャネイロ五輪
世界のスポーツ史上、初めて冬の時期に実施された2016年のリオデジャネイロ五輪で、日本勢は目覚ましいパフォーマンスを見せた。12枚の金メダル、8枚の銀メダル、21枚の銅メダルを獲得している。
金メダルでは快挙が続発した。体操競技の内村航平は個人総合でオリンピック2連覇。内村、加藤凌平、山室光史(やまむろ・こうじ)、田中佑典(たなか・ゆうすけ)、白井健三らによる体操の団体は、同種目で2004年のアテネ五輪以来となる3大会ぶり7度目の金メダルを獲得した。競泳の萩野公介は400メートル個人メドレーで、日本人初となるオリンピックの金メダリストとなった。レスリングの女子58キロ級の伊調馨は女性アスリートとして初となるオリンピック4連覇を成し遂げた。
日本選手団の偉業としては、バドミントンの女子ダブルスも挙げられる。髙橋礼華(あやか)と松友美佐紀による「タカマツ」ペアは1次リーグを3戦全勝で突破。マレーシアペアとの対戦となった準々決勝に2−1で勝利すると、準決勝では韓国ペアを2-0で退けた。デンマークペアとの決勝戦は第1ゲームを落としたものの、第2、第3ゲームを制し、見事世界の頂点に立った。
2008年の北京五輪では末綱聡子(すえつな・さとこ)と前田美順(みゆき)による「スエマエ」ペアが4位、小椋久美子と潮田玲子による「オグシオ」ペアが5位。2012年のロンドン五輪では藤井瑞希(みずき)と垣岩令佳(かきいわ ・れいか)による「フジカキ」ペアが銀メダル。先輩たちが果たせなかったオリンピック制覇という夢を、髙橋礼華と松友美佐紀は実現してみせた。
リオでは男子のチームワークが偉業をもたらす
ロンドン五輪と同様、伊調馨や「タカマツ」を筆頭に、リオデジャネイロ五輪でも女性陣が存在感を見せつけた。競泳では女子200メートル平泳ぎで金藤理絵、レスリングでは48キロ級で登坂絵莉、63キロ級で川井梨紗子、69キロ級で土性沙羅、柔道では70キロ級で田知本遥も金メダルを首にかけている。
一方、男子ではチームワークが光る好成績が目立った。
歴史的快挙として挙げるべきは、銀メダルを獲得した陸上競技の男子4×100メートルリレーだろう。山縣亮太(やまがた・りょうた)、飯塚翔太、桐生祥秀(きりゅう・よしひで)、ケンブリッジ飛鳥が表彰台に立った。日本人の上位進出は難しいと考えられてきた短距離走における2着でのフィニッシュ。金メダルのジャマイカから0秒33遅れての37秒60というアジア新記録は、受け手が体勢をあまり崩さずスピードに乗れる「アンダーハンドパス」の完成度の高さの産物だった。
男子勢では卓球の水谷隼(みずたに・じゅん)、丹羽孝希(にわ・こうき)、吉村真晴(まはる)が男子団体で銀メダルを獲得。日本卓球界において同種目初のメダルを勝ち取った。競泳では男子4×200メートルリレーで、萩野公介、江原騎士(えはら・ないと)、小堀勇氣、松田丈志(たけし)が銅メダルを手繰り寄せている。こちらは同種目で1964年の東京五輪以来のメダルだった。
2020年東京五輪の招致活動中に行われたロンドン五輪と、決定後に開かれたリオデジャネイロ五輪。2010年代のオリンピックは、日本にとって母国開催を見据えたうえで、女性陣の奮闘と、歴史的快挙が目を引いた2大会だった。