【バスケットボール】男子日本代表、東京五輪予選ラウンド全敗も成長に手ごたえ

Rui Hachimura

8月7日、さいたまスーパーアリーナ(埼玉県さいたま市)にてTokyo 2020(東京五輪)の男子バスケットボールの決勝戦が行われた。アメリカ合衆国代表対フランス代表というマッチアップとなり、米国が87-82の勝利でオリンピック4連覇を達成した。

フランスは米国に敗れたものの、シドニー五輪(2000年)以来の銀メダル獲得。そして3位決定戦でスロベニア代表を破ったオーストラリア代表が、同国初となる悲願のオリンピックメダルを銅メダルという形で獲得した。

■世代交代を感じさせる大会に

これまでメダルの常連国だったスペイン代表やアルゼンチン代表の姿はなく、トップ4カ国を見るだけでも全体的な世代交代を感じさせる大会となった。

アルゼンチンのルイス・スコラは自身5度目のオリンピック出場を果たし、準々決勝で豪州相手に敗退した試合終盤、スコラがベンチに下がる際には対戦相手の豪州の選手、コーチ、レフェリー、運営スタッフなど会場全体からスタンディングオーベーションが贈られた。

同じく準々決勝で米国相手に敗退を喫したスペインは、長年チームを支えてきたパス・ガソルとマルク・ガソルの兄弟が「若い世代がプレーする必要がある」と話し、代表活動を引退する意向を明らかにした。

一方で新たな勢力として大きな爪痕を残したのが、オリンピック初出場を見事4位で終えたスロベニアだ。NBAのスーパースターであるルカ・ドンチッチが得点ランキング2位(23.8)、アシストランキング1位(9.5)、スペインのバレンシアでプレーするマイク・トービーがリバウンドランキング1位(10.5)と、スロベニアの選手たちは個人スタッツ部門でその存在力を示した。

■AKATSUKI FIVEも成長に手ごたえ

一方、1976年以来11大会ぶりのオリンピック出場を果たした日本代表は予選ラウンドでスペイン、スロベニア、アルゼンチンに敗れ、最終順位では同じ全敗となったイラン代表を得失点差で上回り、12カ国中11位という成績で終わった。

全敗という内容ではあったものの、同じく全敗に終わった2019年のFIBAワールドカップに比べると悲観するものではなかった。W杯後に自分たちの戦いぶりを「恥だ」と表現した渡邊雄太も、今回は悔し涙を流しながらも「まだまだ世界との差はありますが、確実に自分たちは成長できています」と手ごたえを語った。

出場した試合は予選ラウンドの3試合のみとなったものの、八村塁は今大会平均22.3得点を記録し、得点ランキングではリッキー・ルビオ(スペイン)、ドンチッチ、パティ・ミルズ(豪州)に次ぐ4位にランクイン。渡邊も平均17.7得点で9位と、トップ10に2人の日本人が名を連ねたのだ。

同時にそれは、八村と渡邊という日本が誇る2人のNBA選手への負荷が高かったことの現れでもある。平均出場時間のランキングでは八村が1位で37.6分、渡邊が2位で35.5分と、3位のトマーシュ・サトランスキー(チェコ代表)の33.8分に大きく差をつけるほど、出ずっぱりだったのが分かる。

11日にオンライン上で行われた東京五輪総括の会見でも、日本バスケットボール協会の三屋裕子会長は、海外でプレーする選手たちに対して「国内組をどう強化していくのか、そこのレベルまで近づけていくのかっていうのは、かなりチャレンジングな課題だと思っていますが、これをやっていかなければいけない」と、今後の課題として挙げた。

今大会、女子バスケットボールでは日本が見事銀メダルに輝いた。そんな女子代表も、12年ぶりに出場したリオデジャネイロ五輪(2016年)での経験を経て、チームとして大きくレベルアップをしたからこその大躍進だ。

男子も同様に、世界大会での経験を積み重ね、女子のあとを追っていきたい。総括会見では、東野智弥技術委員長も「W杯でアジア最高位を獲得して、毎回オリンピックに出るんだということが、その次その次のステップに上がる一番の部分だと思っています」とコメントした。

3人制バスケットボールの3x3が新種目として話題になり、5人制男子代表が海外組と国内組といった、いままで日本のバスケットボール界にはなかった概念でのチーム作りが注目され、そして5人制女子代表が銀メダルを獲得し感動を生み出した。この追い風に乗って、日本バスケットボール界はさらに前に進み続ける。

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