陸上の桐生祥秀らが「今スポーツにできることリレー」を実施。競泳の瀬戸大也は自宅に簡易プールを設置【コロナ禍でのアスリートたち】

SNSではサッカー選手の子ども向けリフティング動画が流行

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
コロナ禍にあってもさまざまな工夫を凝らし、トレーニングに励んだりスポーツに向き合ったりしているアスリートたち。左上から桐生祥秀、山縣亮太、白石黄良々、渋野日向子。左下から乾貴士、野口啓代、水谷隼、瀬戸大也

猛威を振るう新型コロナウイルスの影響を受け、今夏に予定されていた東京五輪は来夏以降への延期が決まった。感染拡大防止のため、トップアスリートたちも一般人と変わらず“自宅待機”を強いられているが、各々が工夫を凝らしながらコンディション調整に努め、同時にスポーツファンを楽しませてもいる。

今スポーツにできることリレー」に桐生祥秀らが参加

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で多くのトップアスリートが多大な影響を受けている。試合開催はおろか、通常どおりの練習さえままならない困難状況だ。

日本では政府による緊急事態宣言が5月6日から5月31日まで延長され、さまざまな競技の強化拠点である味の素ナショナルトレーニングセンターをはじめ、選手たちの練習施設の多くが一定期間の閉鎖を余儀なくされた。アスリートでなくても、外出自粛にストレスを溜めてしまったり、運動不足に陥ってしまったりする人が増えているなか、トップアスリートたちは自宅でできる簡単なトレーニング方法などをSNSで積極的に発信している。

たとえば陸上短距離の桐生祥秀は、ソーシャル・ネットワーキング・サービスのツイッター上で「使った筋肉を固めずに次の日を迎えることが大事」と話し、ヨガマットの上でできる下半身のストレッチ方法を紹介している。

この動画は「今スポーツにできることリレー」と題され、桐生のほか飯塚翔太、山縣亮太、多田修平、白石黄良々なども参加し、陸上競技選手を中心にリレー式に取り組みの輪が広がっている。女子では短距離の小林歩未(あゆみ)、中長距離の高松智美ムセンビ、競歩の藤井菜々子などが参加した。ツイッター上で「#今スポーツにできること」「#いまスポーツにできること」で検索すると、さまざまなアスリートの発信が確認できる。

女子バスケットボール日本代表の渡嘉敷来夢(らむ)は、自身のインスタグラムにて、部位ごとによるさまざまなトレーニング方法を動画で掲載している。各メニューは10秒×3セット、10回×3セットと手軽に取り組めるものが多い。また、バスケでは渡嘉敷と田渡凌がテレビ番組の「Going! Sports&News」で紹介したチャレンジ動画もツイッターで見ることが可能だ。

足に加え、手にもスパイクを装着してリフティングを披露し、リフティングをしながらテーブルクロス引きにも挑戦した槙野智章のユーモアは、コロナ禍で暗くなりがちな世界にあって大きな注目を集め、海外のメディアからも取り上げられた。

卓球の水谷隼はラケットリフティングを推奨

トップアスリートにとって、活動自粛期間が長引くことにより懸念されるのは、競技の“感覚”を失うことに他ならない。そこで各々が工夫を凝らしながら、在宅でもできる練習に励んでいる。

スポーツクライミング日本代表として東京五輪出場を内定させている野口啓代は、自宅にクライミング壁を設置している。そのため、自粛期間中であっても人との接触を避けながら通常時と変わらないトレーニングを積んでおり、その様子はインスタグラムで確認できる。

リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得し、東京五輪出場も決めたカヌーの羽根田卓也は自宅トレーニングの模様をツイッター上で公開した。「#コロナに負けるな」というハッシュタグとともに、バスタブに水を張り、パドルで水をかく様子を発信している。

卓球男子日本代表の水谷隼は、月刊卓球専門誌とのコラボレーションでラケットを使ったリフティングの模様を公開した。初心者はラバーのみからスタートし、上級者になるにつれてサイドやグリップも取り入れていくことを推奨している。これなら卓球場に行かなくても、自宅で広い場所を取らずに実施することができ、ラケットを握る感覚、ボールを打つ感覚をキープし続けることができるという。

一方、驚きの練習風景動画をインスタグラムに投稿したのは、競泳日本代表の瀬戸大也だ。新型コロナウイルス感染を防ぐためプールも使用不可となっている施設が多いが、瀬戸は自宅の庭に簡易プールを設置し、水中でのトレーニングを実施した。

プールは瀬戸の体2つ分に満たない大きさだが、腰にゴムチューブを巻いて体を固定することにより、負荷をかけた状態でクロールや平泳ぎなどのダイナミックな泳ぎを披露。「水をキャッチする感覚や泳がないと動かない細かい関節や筋肉があるんです」とコメントした。東京五輪の延期が決まり、一時は「気持ちの整理がつかなかった」と言う瀬戸だが、苦境のなかでも懸命に前を向き、いつの日か必ず訪れる次の戦いに向け準備を進めている。

バスケ、バドミントンなど屋内競技は練習場所の確保が課題

もちろん、選手個々がコンディション維持に努めるだけでは限界がある。サッカーや野球、バスケなど団体競技は、人と人の接触を避けるためチーム全体での練習を行うことができない。なかでも屋内競技であるバスケは体育館が次々と閉鎖され、多くの選手たちは自主練習を行うこともできず、自宅待機を余儀なくされている。

バドミントンも練習場所の確保に頭を悩ませている競技の一つだ。リオデジャネイロ五輪金メダリストの高橋礼華&松友美佐紀ペアら日本代表選手を多く抱える日本ユニシスは、拠点である東京都江東区内の体育館が緊急事態宣言の発令前に閉鎖された。トレーナーから練習メニューが送られたり、テレビ電話を使ったりして、各自がトレーニングに励んでいる。桃田賢斗が所属するNTT東日本は、選手が生活する寮の敷地内に体育館があるため自主練習の場を提供しているものの、集団利用を避けるために全体練習は休止。なお、桃田賢斗は5月5日、自身が所属するマネジメント会社「UDN SPORTS」のインスタライブを行い、視聴者からの質問に答える時間を楽しんだ。

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