リオデジャネイロ五輪の女子体操金メダリスト、シモーネ・バイルズ(アメリカ合衆国)が体操界の新たな扉を開いた。バイルズは5月21日から22日に行われたUSクラシック(米国インディアナ州)に出場。約1年半ぶりとなる競技復帰で女子として初めて「屈身メリサニディス」を成功させ、女子個人総合優勝を飾った。
「屈身メリサニディス」とは、ロンダートから後転とびで跳馬を越え、屈伸姿勢で2回宙返りをして着地するというもの。体操の歴史上、男子のみが成功させてきた技で、難易度はもちろん危険度も高い技とされている。白いレオタードに身を包んだバイルズは復帰戦でこの大技に挑戦。着地時に勢い余って数歩後退したものの、ほぼ完璧な演技で成功させてみせた。
ジャッジはバイルズの歴史的なパフォーマンスに16.100点のポイントを与えた。これは自身が金メダルを獲得した、リオ五輪の種目別跳馬決勝でマークした16.050点を上回るもの。もちろん、2021年のUSクラシックでトップのスコアだ。バイルズは跳馬だけでなく、平均台、ゆかでもトップのスコアを出し、トータル58.400点で総合優勝。ブランクを経てもなお、自身が類まれなアスリートであることを改めて世界に示した。
バイルズのレオタードにあしらわれたヤギは英語で「Goat」、「Greatest of all time(史上最高)」を意味している。この称号にふさわしいものは、彼女以外に見当たらない。リオ五輪で4つの金メダルを獲得し、世界選手権では男女通じて歴代1位の25個のメダルを勝ち取った。世界選手権で獲得した金メダルの数(19個)も史上最多だ。彼女の名前を冠した技は4つあり、この「屈身メリサニディス」は近いうちに5番目の技となるだろう。
Tokyo2020(東京五輪)でオリンピック連覇を目指す“体操界の女王”が、考えうる限り最もセンセーショナルな形でカムバックを果たした。