国際スケート連盟主催による世界ジュニアフィギュアスケート選手権が3月2日から8日までエストニアのタリンで開催された。日本からはローザンヌユース冬季五輪の金メダリスト鍵山優真やジュニアグランプリファイナル王者の佐藤駿、全日本フィギュアスケート選手権大会で3位に入った川畑和愛らが出場し、渾身の演技を披露した。
四大陸選手権で3位の鍵山優真に大きな注目
毎年3月ごろに開催されるこの世界ジュニアフィギュアスケート選手権は13歳から19歳までが出場可能。ペアとアイスダンスの男子選手のみ、13歳から21歳までが対象となっている。
日本代表として大きな注目を集めたのは鍵山優真だ。2019年の全日本フィギュアスケートジュニア選手権で頂点に立ち、今年1月のローザンヌユース冬季五輪で金メダルを獲得、2月の四大陸フィギュアスケート選手権で3位に入るなど大躍進中で、今大会もメダル獲得が期待された。男子シングルの出場選手には、昨年12月のジュニアグランプリ(以下GP)ファイナルで日本人男子として4人目の優勝者となった佐藤駿も選ばれた。
女子シングルには、全日本ジュニア選手権女王で、ローザンヌ五輪では4位入賞を果たした河辺愛菜(まな)と、昨年12月にシニアの全日本フィギュアスケート選手権で3位に入った川畑和愛(ともえ)が出場。アイスダンスには吉田唄菜(うたな)&西山真瑚(しんご)の「うたしん」ペアが選出された。
鍵山がフリーで日本勢として5年ぶりの表彰台入り
3月4日の男子ショートプログラム(以下SP)では鍵山が首位、ロシアのアンドレイ・モザリョフが2位となり、佐藤は5位の成績。6日のフリースケーティングではモザリョフがトップ、鍵山は5位、佐藤は6位となった。最終的にモザリョフが245.09点で優勝を果たし、鍵山は231.75点で準優勝、銀メダルを獲得している。佐藤は221.62点で6位に終わった。
ジュニアではもちろん、シニアクラスの大会でも着実にその力を発揮し始めている鍵山の演技には、世界中の注目が集まった。重圧の小さくない中での本番となったが、SPではノーミスの演技を堂々と披露。スピンはすべてレベル4、ジャンプも難なく決め、下馬評通りトップに立った。その後のフリーでは冒頭からジャンプのミスが続いて5位となり惜しくも総合2位に終わったが、日本勢としては同種目5年ぶりの表彰台入りを果たした。
一方の佐藤はSPで自己ベストを更新し大舞台での強さを見せつけたとはいえ、フリーでは序盤からジャンプのミスが重なりリズムをつかめなかった。その後は高い集中力で立て直したが、得点には納得がいかない様子で、悔しそうな表情を見せた。ジュニアグランプリ(GP)ファイナル優勝からの連覇を狙ったものの、総合6位に終わった。
「ダブル表彰台」は逃した男子だが、鍵山と佐藤の順位合計が「13」以内となり、来年の出場枠を最大3枠確保することに成功したのは大きな収穫だ。鍵山は試合後に「今まで出たジュニアの大会で一番大きく、自分の中でも大切にしている試合だったので悔しい」と結果に満足していないことを明かしたが、「この悔しさを一生忘れず、来季につなげていきたい」と前を向いた。来季はシニアへ転向する勝負の年となる。
試合後に悔し涙を流した佐藤も、シニア転向を予定しており「将来は世界で活躍できる選手になりたい」と決意表明。すべてを力に変え、シニアの舞台でリベンジを狙う。
女子金メダルの13歳には北京五輪で大活躍の予感
一方5日の女子SPでは、13歳のジュニアGPファイナル覇者、カミラ・ワリエワが圧巻の演技を見せ、ジュニアSP世界最高得点の74.92点を記録して首位発進を切った。河辺は8位、川畑は10位と苦戦した。7日のフリーでもワリエワが1位をキープして、総合227.30点で表彰台の頂点に立っている。河辺はフリーが13位で、合計169.62点の総合11位、川畑がフリー16位、合計159.47点で総合14位の成績だった。「うたしん」ペアはリズムダンス13位、フリー8位で、合計149.61点の12位で大会を締めくくっている。
女子SPでは河辺がスピンのレベルを一つ下げたものの、ほぼミスのない演技を見せたが、男子同様、フリーで得点を伸ばすことができなかった。トリプルアクセルで転倒すると、ラストのスピンもカウントされず。本人は「失敗してはいけないという気持ちが緊張につながった」と振り返った。それでも伸びしろは十分。複数の舞台で経験を積み、「本番での強さ」を身につけていくことが、この世代の課題となっていく。
女子で圧倒的な強さを見せつけたのは、「ロシアの若き天才」として早くもそのスター性を発揮するワリエワだ。精巧なスピンとステップでレベル4を獲得すると、長い手足から繰り出されるジャンプでも驚異の高さを記録。今大会がデビュー戦という事実が信じがたいほど、異次元の滑りで観客から大喝采を浴びた。平昌五輪女王のアリーナ・ザギトワや、アリョーナ・コストルナヤなどトップスケーターたちと同じく、エテリ・トゥトベリーゼに師事する新女王が、2年後の北京五輪で金メダル候補となる可能性は決して低くない。