【フィギュアスケート】鍵山優真、松生理乃、オードリー・シン|GPシリーズで輝いた7つの新たな「新星」

鍵山優真、オードリー・シン、そしてフィギュアスケート界で忘れてはいけない5人の名前。不完全なグランプリ・シーズンで輝きを見せたアスリートたち。

1 執筆者 Nick McCarvel/翻訳:角谷剛
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フィギュアスケート界の動きは早い。

アスリートの氷上のスピードはもちろんだが、このスポーツそのものの動きが早いのだ。次のオリンピックでトップを争うような有望選手たちがそのオリンピックが行われる年まで、― それどころかオリンピックのシーズンが来る直前まで、シニア選手ではないということがあり得るのだ。例えば、のちに2018年平昌オリンピックで金メダリストとなるアリーナ・ザギトワがシニア部門にデビューしたのは2017年のことだ。

2022年の北京オリンピックまであとわずか15か月しかない。そして今シーズンのグランプリシリーズでは北京で話題を巻き起こしそうな何人ものスケーターたちがその存在をアピールした。

シリーズそのものは不完全だった。予定された6大会のうち4つしか開催されず、開催されたどの大会でも厳格な新型コロナウイルス対策が取られた。それでも、11月のNHK杯で金メダルを獲得した日本の10代選手・鍵山優真のように、国際ニュースのヘッドラインに躍り出る絶好のチャンスをものにした未来のスター・スケーターたちも現れた。

この数週間で起きた鍵山とそれ以外の6つの新たなストーリーを追ってみた。

鍵山優真(日本)

年齢:17

NHK杯 金メダル

大阪で行われた国際スケート連盟(ISU)のグランプリ大会に出場するにあたって、鍵山優真へ寄せられた期待は大きかった。1月にはローザンヌで行われたユースオリンピックで金メダルを獲得し、その数週間後には四大陸選手権で銅メダルも獲得していたからだ。

鍵山の父でありコーチでもある鍵山正和も1992年と94年のオリンピックに出場したフィギュアスケーターだ。この17歳の少年は、羽生結弦と宇野昌磨もが不在だったNHK杯において、その才能を余すところなく発揮した。

鍵山は2つのプログラムで4つの4回転ジャンプを成功させ、シニア部門でのグランプリにおけるデビュー戦で2位に50ポイント近い大差をつけて優勝した。男子シングル部門におけるデビュー戦での優勝は2013年の閻涵以来のことだ。鍵山は成熟したスケーティングを見せ、日本で他の競技者たちを寄せ付けなかった。特にフリープログラムでは失敗は1つだけで、アバターのサウンドトラックに乗って滑った。

「現時点ではあまり遠い将来のことは考えていません。全日本選手権に集中しなくてはいけないので」と鍵山は語った。全日本選手権は12月23から27日に行われる。

オードリー・シン(米国)

年齢:16

スケート・アメリカ 銅メダル

ローザンヌで行われたユースオリンピックでの7位入賞に続き、コロラド在住の16歳アメリカ人は、ラスベガスで今シーズン開幕戦で安定した滑りを見せた。2018年オリンピック代表のカレン・チェンを抑えて、彼女自身初めてのグランプリでのメダル獲得だった。

ニューヨーク出身のシンは11月にオリンピック・チャンネルのインタビューに応じ、この結果について「大きなサプライズでした。元々、今シーズンはジュニア部門だけで滑ることになっていましたから」と答えた。

シンの次の目標は1月に行われる全米選手権でカレン・チェン、マライア・ベル、ブレイディ・テネルらと競い、3月の世界選手権への代表切符を手に入れることだ。

また、シンは新たな技術に取り組んでいることも明かしている。トリプル・アクセルと4回転トウループだ。4回転トウループは練習では「あと4分の1回転ほど足りません」とシンは言った。

アポリナリア・パンフィロワ/ドミトリー・リロフ(ロシア)

年齢:17&19

ロステレコム杯 銅メダル

ロシアはペア部門で次々に好選手を輩出している。ロステレコム杯のチャンピオンであるアレクサンドラ・ボイコワとドミトリー・コズロフスキー組、同じく2位のアナスタシヤ・ミーシナとアレクサンドル・ガリャモフ組に注目を集める中、パンフィロワとリロフ組がシニア部門でのグランプリ・デビューをモスクワで果たし、銅メダルを獲得した。

このデュオは今まさに上り調子だ。2019年にジュニア・グランプリ・ファイナルで優勝、数週間後にはロシアのジュニア・チャンピオンとなり、続いて2020年にはユースオリンピックとジュニア世界選手権の両方で金メダルを獲得した。

2人ともまだ10代でありながら、既に洗練されたスケート技術と多才さを兼ね備えている。今シーズンの彼らはショートプログラムではアップテンポのロックンロールに乗って滑り、フリープログラムでは昨シーズンに続いて「No One Ever Called Me That」に合わせたバレエのようなソフトな演技を見せている。

松生理乃(日本)

年齢:16

NHK杯 銅メダル

10月に16歳になったばかりの松生はNHK杯で銅メダルを獲得する以前には国際大会での実績はわずかしかなかったが、この前週に行われた全日本ジュニア選手権での優勝の勢いをそのままグランプリ・デビューに持ち込んだ。

大阪での女子シングルは激戦だった。松生はショートプログラムの4位からフリープログラムでは2位に順位を上げ、2位の樋口新葉と2ポイント差で銅メダルを獲得した。松生は芸術点でも高得点を挙げ、樋口と優勝者の坂本花織に続いてこの部門の表彰台に上った。

男子シングルの鍵山と同じように、松生にも全日本選手権ではさらに厳しい戦いが待ち受けている。坂本と樋口に加えて、紀平梨花、宮原知子、さらに多くの強敵と競い合うことになるからだ。

ジェシカ・カララン/ブライアン・ジョンソン(米国)

年齢:25

スケート・アメリカ 銀メダル

カラランとジョンソンは昨シーズンのスケート・アメリカとスケート・カナダに出場しているので、今季がGPシリーズでのデビューだったわけではない。それでも、米国チーム内で勢いを維持したまま、ラスベガスでは新デュオのアレクサ・クニエリムとブランドン・フレイジャー組に続く2位に入った。

クニエリムとフレイジャーはともに南カリフォルニアで一緒のトレーニング仲間でもあり、カラランとジョンソンは今年1月の全米選手権で彼ら本来のパフォーマンスを発揮し始め、フリープログラムで1位、そして銀メダルを獲得した。

彼らはペアを組み始めてからまだ3シーズン目であり、オリンピックに2回出場したジェニー・メノーとトッド・サンドの指導を受けている。今後の課題として技術面と芸術面でのさらなるチューンアップに挑んでいる。

ピョートル・グメンニク(ロシア)

年齢:18

ロステレコム杯 銅メダル

この数か月間でミハイル・コリヤダが再びロシア男子スケーターのトップに返り咲くなか、18歳のグメンニクが次世代を引っ張る存在として台頭してきた。そしてそのすぐ後には17歳のアンドレイ・モザリョフがいる。

ロステレコム杯ではグメンニクはショートプログラムで素晴らしい滑りを見せて2位に入ったが、フリープログラムではモザリョフがさらに輝きを増して2位に入った。グメンニクが僅差を制して銅メダルを獲得したが、4位のモザリョフとはわずかに2ポイント差だった。

フィギュアスケート強国のロシアには、グメンニクとザリョフの他にも、17歳のエフゲニー・セメネンコや20歳のマカール・イグナトフなど、まだ大勢の「次世代」男子スケーターたちがひしめいている。

王詩玥/柳鑫宇(中国)

年齢:26

中国杯 金メダル

カラランとジョンソンと同じように、王と柳のペアも新人とは言えない。だが、普段はカナダ・モントリオールに活動の拠点を置くこの中国人デュオはグランプリで初めてのメダルを ―それも金メダルをついに獲得した。

中国杯での勢いに乗って、王と柳は2022年北京オリンピックへ向けてさらに力強さを増している。昨シーズンのグランプリでは5位以内に2回入賞し、2月の四大陸選手権では4位に入賞した。

追記: 2010年バンクーバー・オリンピックにおける男子シングルの銅メダリスト、日本の高橋大輔がアイスダンスに転向し、NHK杯でついに待望のデビューを果たした。高橋と村元哉中のペアは3位に入賞した。シングルからアイスダンスへの転向はあまり例がない。高橋は自身4回目のオリンピック出場へ向けて、新たな戦いの場で挑戦を続けている。今後の高橋から目を離せない。

原文:Kagiyama, Shin and more: 7 breakout stories from the Grand Prix Series

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