【フィギュアスケート】北京五輪・ペア&アイスダンス、団体|ROC勢が牽引...日本勢もメダル獲得を狙う

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
combine_images
(Getty Images)

2月4日にスタートする北京五輪フィギュアスケート競技。個人戦に先んじて行われる団体戦で、日本は初のメダル獲得を狙う。また日本代表として三浦璃来/木原龍一が出場するペア、小松原美里/小松原尊のアイスダンスも団体戦と併せて展望する。

ペア:中国vsROC、日本は一桁順位に期待

この4年間、ペアの表彰台は、中国とロシアがほぼ全てを独占してきた。オリンピックイヤーの今季、その傾向はさらに強まっている。

中国はグランプリ(GP)シリーズには2戦しか選手を派遣しなかったが、そのいずれでも最高の成績を収めた。ウェンジン・スイ/ツォン・ハン組は2つの金メダルを持ち帰り、1大会のみ出場のチェン・ペン/ヤン・ジン組も、先輩組に次ぐ銀メダルを獲得した。

ロシアは3組がGPシリーズで優勝を分け合い、さらに別の3組も表彰台に。1月の欧州選手権ではアナスタシア・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組、エフゲーニヤ・タラソワ/ウラジミール・モロゾフ組、アレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組と、ロシアペアが表彰台を完全独占した。中でも高い技術力と強靭な身体能力とで、ロシア王者・欧州王者・世界王者へと一気に駆け上がった20歳ミーシナと22歳ガリャモフ組の、若い勢いはとどまるところを知らない。連戦連勝を続けるロシアペアに対して、経験豊かなスイ/ハン組は、11月以降はトレーニングのみで母国開催のオリンピックに焦点を合わせる。目標は4年前の平昌五輪よりもさらに1つ上の段に上がること。つまり中国史上2組目のオリンピック金メダルペアになることだ。

中国とROCの2強体制に、日本の三浦璃来/木原龍一組はどこまで割り入れるか。今季のグランプリ大会では表彰台に2度上がり、日本組としては10年ぶりの、日本人同士のペアとしては史上初のGPファイナル進出さえも決めた。

まさに快進撃を続ける2人は、渡航制限による問題を避けるため、全日本選手権をスキップ。拠点であるカナダで、オリンピックに向け最後の調整に励む。1992年アルベールビル五輪の日本ペア最高順位14位は、実力通りに滑り切ることさえできれば、間違いなく上回れるはずだ。8位入賞どころか、トップ5入りさえも期待できる。

アイスダンス:フランスとROCの頂上決戦

詩的で前衛的なプログラムで、アイスダンス界の風景をがらりと変えたフランスのガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組と、幸福で愛情あふれる世界を氷上で描き上げるROCのヴィクトリヤ・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ組。高く正確な技術力と繊細な表現力を併せ持つ、2組の新旧世界チャンピオンが、北京で金メダルを争う。2015年に世界の頂点を取って以来、パパダキス/シゼロン組に黒星をつけたカップルは、長らくテッサ・ヴァーチュ/スコット・モイヤー組しか存在しなかった。このカナダ組が、平昌五輪で2度目の金メダルを獲得と共に引退すると、再び無敗街道を突き進んだ。

しかし、ロシア組が2020年1月の欧州選手権で、流れを急激に変える。パパダキス/シゼロン組の6連覇を阻み、わずか0.14点差で逆転優勝。さらに2021年世界選手権では、フランス組は不出場ながらも、シニツィナ/カツァラポフ組は世界王座に上り詰めたのだ。北京五輪で両組は約2年ぶりの直接対決を行う。平昌五輪では衣装トラブルに泣き銀メダルで終えたパパダキス/シゼロン組にとっては、リベンジのオリンピックでもある。8年前のソチ五輪は別のパートナーと銅メダルを射止めたカツァラポフは、今度は人生のパートナーでもあるシニツィナと共に、最も美しい色のメダルを手に入れたい。

3位争いもまた熾烈となりそうだ。アメリカ合衆国のマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組とマディソン・ハベル/ザカリー・ダナヒュー組、さらにはカナダのパイパー・ギレス/ポール・ポワリエ組やROCのアレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキン組と、個性的な強豪チームは多数そろっている。

日本からは全日本チャンピオンの小松原美里/小松原尊組が、初めてのオリンピックに挑戦する。ティム・コレトが日本国籍を取得し、ついに手に入れた悲願の出場権。夢の舞台でベストを尽くし、日本アイスダンスカップルによるオリンピックでの過去最高順位15位(2006年・2018年)を上回る成績を残したい。

団体:日本もメダル争いに加わるか

出身地の威信をかけた真剣勝負。今回のオリンピックで3回目を迎える団体戦では、各参加選手たちの高い実力はもちろん、優れた戦略も必要とされる。

参加10チームは、男子・女子・ペア・アイスダンスの4種目いずれも、ショートプログラムとフリースケーティング(アイスダンスはリズムダンスとフリーダンス)とにそれぞれ1人もしくは1組ずつエントリーする。2本のプログラムに、異なる選手/組を選ぶことも可能だ。各種目各プログラムで1位10pt、2位9pt……10位1ptが配分され、合計得点の最も高い国に栄光がもたらされる。

優勝大本命に上げられるのがROCだろう。ソチ五輪で史上初の団体金メダルを獲得したフィギュアスケート大国の、最大の武器は層の厚さ。今回は女子、ペア、アイスダンスでも個人戦金メダル候補を有する。男子もまた、世界5位以内に食い込める選手をそろえる。特に女子とペアでは、たとえショートとフリーでどう選手を組み合わせようとも、悠々と首位に立つ実力がある。

米国は男子とアイスダンスで最大限のポイントを稼げる。個人ではメダル獲得が難しい女子やペアも、ショートとフリーの最善の人選で、積極的に上位を取りにいけるはずだ。どこよりも強い結束力もまた、米国の強みの1つ。

前回チャンピオンのカナダは、今回はいずれの種目にも突出して強い選手がいない。開催国の中国もペア以外は、やはり苦戦が予想される。イタリアはアイスダンスに加えて、男子やペアでも上位が狙えそうだが、女子に少々不安がある。

だからこそ日本も、メダル争いへの参戦が期待される。代表の男子3人は、ご存じの通り、いずれも世界最高峰のレベルを誇る。女子はROCの次にピタリとつけられるだろう。ペアもショート・フリー2本ともに、上位3位に食い込める実力がある。歯車が全てうまく噛み合えば、日本フィギュア界に、新たなメダルがもたらされるかもしれない。

もっと見る