Tokyo 2020(東京五輪)のメンバー争いが続く男子バレーボール日本代表「龍神NIPPON」に、力強い男が帰って来た。世界最高峰のイタリア、セリエAでプレーする石川祐希だ。イタリア・リミニで開催されるFIVBバレーボールネーションズリーグ2021(5月25日開幕、男子は28日初戦)で、日本代表に合流する。
4月25日までイタリアでシーズンを戦い、レギュラーシーズン8位、プレイオフ6位で終えた石川は「勝てるチャンスもあっただけに、負けてしまったのは悔しい」と口にしたが、シーズンを通してほぼスタメン出場を果たすなど、個人としても常に高いパフォーマンスを発揮。来季も引き続き『パワー・バレー・ミラノ』と契約を結んだ石川は、まさに世界で戦う頼もしき日本のエースだ。
これまでも攻守において石川の存在は、日本代表にとって不可欠なものではあったが、今季はそこにキャプテンの称号も加わった。イタリアでのシーズン中、中垣内祐一監督から電話で打診を受けた石川はその場で「やります」と即答。
オリンピックイヤーの主将就任は異例のようにも見えるが、中垣内監督は「ここ数年、石川に対して高いリーダーシップを求めて来た。その期待に応え得る活躍をしてくれる選手なので、キャプテンを任せた」と語るなど、石川へ寄せる信頼は高い。
実は石川自身も「以前からキャプテンをやりたいと思っていた」と話したように、満を持してのキャプテン就任でもあった。その理由を石川が明かす。
(2016年の)リオデジャネイロ五輪最終予選で負けて、その後は東京がある。その頃から“キャプテンをやってみたい”と考え始めたと思います。
イタリアでプレーしてきた影響もありますし、イタリアで常に世界のトップレベルを感じていますし、僕自身個人としても『世界一のプレーヤーになりたい』という目標がある。そのためには高い意識でプレーすることが大切であり、そういう意識が芽生える中で自然に、キャプテンになることも必要だと思いました。
目指すキャプテン像はブラジル代表主将を務め、イタリアのモデナでともにプレーした経験もあるブルーノ・レゼンデ。セッターとしてチームを牽引するリーダーシップだけでなく、常に感情豊かにチームを鼓舞する、勝利を求める貪欲な姿勢に感銘を受けたという。
石川も「表現力やキャプテンシーが素晴らしく、僕も尊敬している選手。クラブでも、代表でも、ブルーノ選手はとにかく結果を出しているので、そういうところも意識して取り組んで行きたい」と意気込む。
イタリアからの帰国後、自主隔離を含む14日間の待機を余儀なくされ、5月1、2日の有明アリーナでの中国戦や、8、9日の高崎での紅白戦に出場はできなかったが、試合の様子は見ており、若い選手の成長とともに「チームの雰囲気は悪くないと感じた」と話す。
まだ合流して日が浅く、チーム全体までは把握できていないが、合流した16日の練習前に自ら「ひと言いいですか」と切り出した。合流が遅れたことを詫びるとともに「ネーションズリーグはオリンピック予選と同じぐらいの意味を持つ重要な大会。緊張感を高めて臨んで行こう」とチームを鼓舞した。
その姿を見た中垣内監督も「本当は(自分から)全体に向けて言葉を、と促そうかと思ったがあえて言わなかった。でも、石川自ら手を挙げて発信する姿を見てとても頼もしく、逆に自分が情けないと感じた」と称えた。
5月28日から始まるネーションズリーグの登録メンバーは17名。ここから東京オリンピック代表メンバーは12名へと絞られる。バブル方式の完全隔離された会場で3連戦が5週続く。肉体的にも精神的にもタフさが求められる大会となるが、石川に抜かりはない。
スケジュールもとてもハードなので、チーム全員の力が必要になる。1人1人個人の能力、個人技でも勝てるチームになるためにはいい経験ができる大会になるので、結果も求めつつ、個人としても成長したいです。
世界を見上げるのではなく、目標に見据え正面から戦う。新キャプテンで絶対エース。石川の活躍に注目だ。