【スノーボード】北京五輪・男子|夏の東京に出場した平野歩夢、冬の北京で悲願の金メダル獲得に挑む

1 執筆者 宮本あさか
平野歩夢
(2022 Getty Images)

日本勢のメダル獲得の期待がかかる北京五輪スノーボード競技。男子ハーフパイプの平野歩夢は、さらに突き抜けて、さらに強くなって帰ってきた。その平野歩夢が不在の3年間に、戸塚優斗は自らの立場をさらに確固たるものとした。2人の日本選手が最も美しい色のメダルをかけて、北京の空を飛ぶ。

ハーフパイプ:2人のエースが金メダルを狙う

銀メダルはすでに2つ手に入れた。15歳で乗り込んだソチ五輪で、平野歩夢はスノーボードにおける史上最年少オリンピックメダリスト(15歳74日)となった。平昌五輪でも再び銀メダル。もはや欲しいものはただ1つ。ゴールドの栄光だけだ。

できることなら憧れの人であり、ライバルでもあるショーン・ホワイト(アメリカ合衆国)を破って優勝したい。平昌五輪決勝で平野歩夢は逆転を許し、生ける伝説が自身3つ目の金メダルをさらった。しかも35歳大ベテランにとって北京五輪は、文字通りラストランとなる。あの日のリベンジを果たして、堂々と世界の頂点に上り詰めたい。

スケートボードでのTokyo 2020(東京五輪)出場からスノーボードでの北京五輪出場まで、わずか半年しか時間がなかった。だからこそ雪の上に戻ってきた平野歩夢は、猛スピードで成績を積み重ねた。4年ぶりのワールドカップ転戦では2勝をマークし、W杯総合首位にも駆け上がった。同じく4年ぶりのXゲームでも、軽々と2位に飛び込んだ。

なにより世界を興奮させた。昨年12月に史上初めて公式戦で「トリプルコーク1440」を成功させたのだ。続くXゲームではさらに悠々と、パーフェクトに着地してみせた。ただ、2大会ともに、直後のエアで失敗。滞空時間の長さ故か、スピード、タイミング、体勢のすべてを立て直すことは至難の業だ。もちろんトリプルコークを得点や結果に最大限に反映させるためには、予定している他のエアも成功させ、ラン全体を完璧にまとめなければならない。

また、戸塚も練習ではトリプルコークを成功させている。平昌五輪決勝2回目で転倒し、3回目を無念の棄権。その悔しさを晴らし、北京五輪で金メダルを手につかみ取るためには、やはりこの大技が鍵になる。

同時に20歳の戸塚は新しい自分を模索する。昨季はW杯2勝+総合優勝、世界選手権優勝、Xゲーム優勝と、あらん限りの栄光をつかみ取りながら、決して現状維持だけで満足しなかった。今季W杯表彰台は1度だけだが、その理由は今までとは全く異なる構成にあえて挑戦しているからだ。過去3年間連続で表彰台に乗ってきたXゲームも出場を辞退。北京五輪に向けて、自分を極めるトレーニングに集中することを選んだ。

日本人2人による金メダル争いの前に立ちはだかるのは、なにもホワイトだけではない。平昌五輪3位のスコッティ・ジェームズ(オーストラリア)もオリンピック金メダリストの称号が欲しいはずだ。世界選手権では過去4大会で優勝3、銀1。Xゲームでも現在7年連続表彰台で、うち優勝が4回と桁違いの強さは証明済み。

初出場の平野流佳、平野海祝の2人にも、先輩たちを脅かすだけの実力は十分すぎるほどある。3年前の世界ジュニア選手権覇者にして、2年前のユースオリンピック金メダリストの平野流佳は、今季はW杯3戦で優勝1回・2位1回と絶好調。平野歩夢に次ぐ総合2位につける。また歩夢の4つ年下の弟・海祝は初出場Xゲームで3位。2位の兄とそろってメダルを勝ち取った。つまりはハイスピードで成長を続ける19歳の2人も、やはり北京オリンピックの表彰台候補に違いない。

スノーボードクロス:4大会ぶりに日本選手が出場

オリンピックの正式種目として採用された2006年トリノ五輪を千村格が27位で終えて以来、実に4大会ぶりにオリンピックのスノーボードクロスに日本男子が参戦。時間をかけて、着実に実力も順位も伸ばしてきた24歳の高原宜希が、待望の大舞台へと滑り出す。

2016年ユースオリンピックで5位に食い込み、2019年冬季ユニバーシアードでは銅メダルを持ち帰った。この2年で成績は飛躍的に上昇。確実にW杯上位に食い込むようになり、シーズン総合成績も10位台に安定し始めている。W杯のビッグファイナル(4人による決勝)進出は1度だけだが、2021年12月には2大会連続で一桁成績も収め、その壁を越える日もきっと近い。

過去3季連続でW杯総合を制したアレッサンドロ・へーメルレ(オーストリア)や、1月に勢いよく2連勝をさらったマルティン・ノール(ドイツ)という優勝大本命たちにも競り負けない、力強い高速ランに期待したい。

スロープスタイル/ビッグエア:大技のエアを決められるか

ポテンシャルはとてつもなく高い。飛田流輝は、11カ月前の世界選手権、ビッグエアで4位に飛び込み、2シーズン前はスロープスタイルでW杯総合優勝も持ち帰っている。同じ世界選手権で濵田海人はビッグエア、スロープスタイルともに5位と素晴らしい成績を収めた。

最年少日本代表として平昌五輪を経験した國武大晃も、2019年世界選手権でスロープスタイル4位と手応えを得た。大塚健は、2018年ジュニア世界選手権で両種目優勝の快挙を達成。2019年の春にはビッグエアでW杯総合優勝も飾った。

もちろん、強力なライバルは少なくない。マーク・マクモリス(カナダ)はオリンピックと世界選手権でメダル3つ、W杯総合3冠、Xゲームではショーン・ホワイトを超える史上最多21のメダルを誇る。さらには昨季は種目別W杯総合優勝に加え、スノーボード総合優勝も達成したマルクス・クリーヴランド(ノルウェー)らが立ちはだかる。

それでもおのおのが磨き上げてきた大技を……。多くの日本選手がこだわるフラットスピン1800を本番で冷静に決めることさえできれば、不可能ではない。ソチ五輪スロープスタイルの角野友基8位入賞を上回る成績どころか、トップ5、表彰台さえも見えてくる。

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