笹生優花、2連覇をかけ全米オープンへ 今度は日の丸を背負って

日本人の父とフィリピン人の母を持つゴルファーの笹生優花。大きな決断を経て、さらに大きな偉業を達成するため、連覇がかかる2022年の全米女子オープンに挑む。

1 執筆者 Ken Browne
Yuka Saso of the Philippines celebrates with the Harton S. Semple Trophy after winning the 76th U.S. Women's Open Championship at The Olympic Club on June 06, 2021 in San Francisco, California. Saso won following a three-hole playoff against Nasa Hataoka of Japan. (Photo by Ezra Shaw/Getty Images)
(2021 Getty Images)

2021年の全米オープンで、当時19歳だったゴルファーの**笹生優花**(さそう・ゆうか)がサンフランシスコのオリンピッククラブのレイクコースに足を踏み入れたとき、多くの人は彼女の名前さえ聞いたことがなかった。

しかし、大会の終わりには、笹生が男女を問わずフィリピン選手として初めでメジャーを制してゴルフの歴史に新たな1ページを刻む瞬間を多くの人が目撃したのだ。しかも、笹生は朴仁妃(パク・インビ)に並ぶ史上最年少優勝者となったのである。

笹生はプレーオフ3ホール目でバーディーを奪い、日本の畑岡奈紗を破って劇的なフィナーレを飾った。

その後、新型コロナの影響を受ける中でのLPGAツアーや、フィリピンと日本の国籍について大きな決断を迫られるなど、さまざまなことが起こった。

笹生は2001年、日本人の父とフィリピン人の母のもとに生まれ、フィリピン代表として国際大会に出場してきた。

2018年にブエノスアイレスで開催されたユースオリンピックでは4位となりメダルを逃したものの、同年のアジア競技大会では個人および団体で優勝。2021年の東京2020にフィリピン代表として出場した。

しかし、二重国籍が認められていない日本では、20歳になる前にどちらかを選択しなければならず、2021年6月、笹生は「とても難しい」決断を迫られた。

笹生はAFPのインタビューで、「フィリピンで育ち、自分の名前の横にフィリピンの国旗を掲げて大きな大会に出場してきたので、大きな決断でした」と語ると、「とても難しかった。私はプロゴルファーです。自分の仕事のために良い決断をする必要がありました」と続けた。

笹生優花、フィリピンと日本「国旗が違うだけで、同じ私」

フィリピンで生まれた笹生は、以前行われたOlympics.comのインタビューで、4、5歳のときに日本に移り住んだこと、それがいかに困難なことであったか、父・正和さんとゴルフが彼女の拠り所であったことなどを語っている。

「日本語を話せず、友達もいなかったので、父がゴルフ練習場やゴルフコースに連れていってくれました。それは私が唯一していたことです」

笹生は懸命に練習に励み、数えきれないほどのゴルフの映像を見て研究を重ねた。若い頃から自分が何を求めているかをわかっていた彼女は、「9歳のときに、『ローリー(マキロイ)のようなプロゴルファーになりたい』と父に言いました」。

少しずつ日本での生活に慣れてきた彼女は、両方の家族やアイデンティティに対して愛情を抱き、フィリピン人と日本人の両方の感覚を持つようになったという。しかし、国籍選択という決断はツアー中の現実的な問題に帰結した。

笹生は「日本のパスポートがより強力であることは誰もが知っていると思います」とAFPに語り、「ゴルフ以外のことにおいて、より少ない労力で済むのです」と続けた。

「母親の国を代表して大会に出場できたことはとても光栄なことです。大きな大会に出場し、思い出もあります」

「フィリピンを捨てたと思われないことを願っています。私はフィリピンが大好きです。そして、日本も大好きです」

「国旗が違うだけで、同じ私なんです」

笹生優花の人生を変えた全米オープン優勝

2021年の全米オープンでの優勝は、笹生の人生を大きく変えた。

笹生にとって夢のような出来事で、これにより彼女はLPGAへの切符を手に入れ、世界ランキング40位からトップ10にランキングを上げ、米ツアーの5年間のシード権も手に入れた。

彼女にとってゴルフのスターであり、スイングのお手本となった**ローリー・マキロイ**は、自身のSNSで彼女にエールを送った。

「彼のスイングを真似しようとしたのは本当です」とAFPの取材で語った笹生は、2021年の東京2020オリンピックで憧れの人に会うこともでき、以来、2人は連絡を取り合っているという。

「彼の忙しさを知っているので、あまり邪魔したくはありません。でも、私が何か質問すると、彼はいつも返事をくれて、アドバイスをしてくれるんです」

「いつか彼と一緒にプレーするのが私の夢のひとつです」

昨年の全米オープンで優勝したことにより、その才能を世界に知らしめ、あらゆる女子トップゴルファーからも一目置かれる存在となった笹生。

自分の名前を有名にした大会に再び出場し、タイトルを守るということにプレッシャーを感じているのだろうか。

今年2月にフィリピンのメディアに答えた笹生は、「個人的には、1週間ごとに(トーナメントを)受け止めていて、目標を遠くに設定しないようにしています」と語り、「私はただすべての瞬間を楽しんでいます。とても大切なことです。それは、すべてのゴルファーに望むことでもあります。何事にもプレッシャーをかけすぎず、ただゴルフを楽しんでほしいのです」と続けた。

パインニードルズに挑む笹生優花

6月2日に始まる2022年の全米オープンは、笹生にとって全く異なる挑戦となる。

会場となるノースカロライナのパインニードルズ・ゴルフコースは、風が強く、砂が多いため、彼女のゴルフに合わないかもしれない。練習する中で、本人もその難しさを認めている。さらに、彼女の前に立ちはだかるのは、並み居る強豪たちだ。

オリンピック・チャンピオンの**ネリー・コルダは手術後、ティーグラウンドに戻り、世界No.1のコ・ジンヨンはタイトルを狙い、51歳のアニカ・ソレンスタム**はパインニードルズにその経験をすべて持ち込むことだろう。

さらに、競争力の高いオーストラリアのミンジー・リー、ニュージーランドのリディア・コが加わるとなれば、昨年の快挙を再び成し遂げることの難しさがわかるだろう。

しかし、彼女は杞憂することなく、自分で掴んだ夢を日々歩んでいるようだ。国旗が変わっただけの、同じ笹生優花という人物として。

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