【パリ2024の新しいこと】カヤッククロスが新たに登場!
カヤッククロスが、カヌースラロームの新しい種目としてパリ2024オリンピックで初登場する。オリンピックデビューから50年以上が経過したカヌースラロームでは、カヤッククロスによって、タイムを競い合うだけでなく、初めて選手が1番にフィニッシュすることを目指して急流の中で激しく競い合うことになる。
Olympics.comでは、【パリ2024の新しいこと】と題して、今夏のオリンピックで新しく変わることをシリーズで紹介する。
パリ2024オリンピック・カヌースラロームの新たな種目:カヤッククロス
ミュンヘン1972オリンピックでデビューして以来、カヌースラロームは常に4種目から構成されていた。リオ2016までは、男子カヌーシングルス(C-1)、男子カヤックシングルス(K-1)、女子カヤックシングルス(K-1)、そして男子カヌーダブルス(C-2)が行われた。東京2020では、男子カヌーダブルスが女子カヌーシングルス(C-1)に置き換えられ、男女の種目数が同じになった。
パリ2024では、初めて男女カヤッククロスが追加され、さらにもうひとつの金メダルをカヌースラロームで獲得することができるようになる。
この種目が革新的である理由はこれだけではない。
「とてもエキサイティングな種目になるに違いありません」と、2022年世界選手権銀メダリストのキンバリー・ウッズ(イギリス)は、1年も経たないうちにパリで登場するこの新しい種目に期待を寄せている。
カヤッククロスでは、4艇がいっせいにスタートして4人の選手が同時に競い合う。
「スノーボードクロスやBMXレーシングと似ていると言えるかもしれません。新しいことがいっぱいで、それらに挑戦することは全てが新鮮です」とフランスのマルジョリー・デラスは話した。
「本当に素晴らしいです。レース自体楽しいはずですし、ひとりずつじゃなく他の女子選手たちと一緒にレースができるところがとてもいいと思います。全てが予測不可能で、他の選手が何を考えているのか、彼女たちがどのようなレース戦略でくるのか全く予想ができません」と、2023年ヨーロッパ競技大会で金メダルを獲得した後、ウクライナのヴィクトリア・ウスはOlympics.comに語った。
次にカヤッククロスのルールを見てみよう。これでこの新種目の魅力がさらに理解できるはずだ。
カヤッククロスについて知っておきたいこと
スタートからフィニッシュまで、カヤッククロスは他のカヌースラローム種目とは異なる。
まず、4人の選手が同時に競い合う。
選手4人は水上にあるランプからいっせいに着水してレースをスタートするが、このドロップインスタートはこの種目の大きな特徴である。
「スタートランプでは、すぐに始まるレースへの緊張感で心臓がバクバクしています。そして、『レディ』の合図の後、ランプからできるだけ素早くスタートしなければなりません」とウッズが解説する。
そこから、選手は最大6つのダウン(下流)ゲートと2つのアップ(上流)ゲートが設定されるコースで互いに競い合う。
カヤッククロスでは、根本的にカヤックシングルスと異なる心理状態が要求される絶え間ない戦いとなる。
「私たちは直接対戦するのです。多くの激しい接触があり、戦略が重要です。他の選手の動きや戦略に素早く適応する必要があります。ゲートを通過しようとする選手の動きを見越してどのように対応できるか?」とデラススは戦略を練る。
このイベントでは、ゲートに触れることは許されているが、1つでも通過することができないとそこで失格となる。
また、カヤッククロスには、もう1点、カヤックロールというユニークな特徴がある。
コースの定められたゾーンで、全てのアスリートはカヤックロールを行わなければならない。カヤックロールは、頭を完全に水中に入れて360度カヤックごと1回転する。
「レースでは速くなければなりません。時には、どこに最終的に行き着くかわからないこともありますが、とにかく次のゲートを確実に通過できるよう分析しながら進むのです。そこが難易度を一層高めています」と、カヤックシングルスで3度のオリンピックメダリストであるマイアレン・コラント(スペイン)は話した。
競技形式も異なる。まず、32人によるタイムトライアルが行われ、予選ラウンドのシードと組み合わせが決められる。予選ラウンド各4人による8レースでは、各レース上位2位が勝ち上がり、そこからトーナメント形式で最終的にメダルが決定するまで続けられる。
カヤッククロスについて選手はどのように考えているのか
41歳のリオ2016のカヤックシングルス金メダリストであるコラントを含め、多くの選手はこれまでとは全く異なる新しい種目へ挑戦することに興奮しているようだ。
「とても壮観でダイナミックな種目になるはずです。観客に、私たちの競技を観戦し、楽しんでもらい、好きになってもらえる貴重な機会となるでしょう。そして、これは私たちを何よりも鼓舞してくれる大きなモチベーションになります。私たちの競技の人気を高める推進力となるはずです。カヤッククロスは、オリンピックにエンターテイメントと情熱、感動をもたらすと確信しています」
デラスは、カヤッククロスを通じて、多くの選手たちが「異なる種類の喜び」を享受することができるだろうと言う。
「私たちがカヌースラロームで慣れ親しんでいること、つまりボートとゲート、そしてひとりで戦っていたこれまでの競技に大きな変化を与えます」
ウッズは、カヤッククロスがアスリートとファンの両者にとって大きな楽しみになると考えている。「とても楽しみでワクワクします。何が起こるかわからないですが、チャンスを逃さないように、目の前にある状況に対処しながら、ミスなく他の選手と戦わなければなりません。見ていて、とてもエキサイティングで楽しいはずですよ」
パリ2024オリンピック・カヌースラロームの注目の選手
ジェシカ・フォックス(オーストラリア)とジョセフ・クラーク(イギリス)は、世界選手権カヤッククロスで2度以上金メダルを獲得している唯一の選手であり、パリ2024の会場となるヴェール・シュル・マルヌ・ノーティカル・スタジアムでも優勝候補として注目されるだろう。
マージョリー・デラスの弟で、2022年世界選手権の銀メダリストのアナトール・デラス(フランス)は、自国開催のメリットを生かして戦う。
ヴォイテク・ヘガー(チェコ共和国)とマロリー・フランクリン(イギリス)は共に2022年ワールドカップのカヤッククロスを制覇し、パリオリンピックの舞台でも優勝を狙う。
カヤッククロスのパリ2024出場資格取得プロセス
2024年6月7日から9日にかけてチェコ共和国プラハで開催されるICFカヤッククロス世界予選では、男女それぞれに3つの出場枠が与えられる。
パリ2024オリンピックでは、残りの出場者は男女カヌーシングルとカヤックシングルに出場した選手から選出され、各国内オリンピック委員会から最大2人まで出場することができる。
パリ2024オリンピック、カヤッククロスの競技日程
新種目となるカヤッククロスは8月3日に始まり、5日まで繰り広げられる。
以下、現地時間と括弧内が日本時間。日本はパリより7時間進んでいる。日程は変更になる可能性もある。
8月2日(金)
- 15:30(日本時間 22:30)〜 女子タイムトライアル
- 16:40(日本時間 23:40)〜 男子タイムトライアル
8月3日(土)
- 15:30(日本時間 22:30)〜 女子予選
- 16:40(日本時間 23:40)〜 男子予選
- 18:05(日本時間 25:05)〜 女子敗者復活戦
- 18:45(日本時間 25:45)〜 男子敗者復活戦
8月4日(日)
- 15:30(日本時間 22:30)〜 女子予選
- 16:45(日本時間 23:45)〜 男子予選
8月5日(月)
- 15:30(日本時間 22:30)〜 女子準々決勝
- 15:52(日本時間 22:52)〜 男子準々決勝
- 16:15(日本時間 23:15)〜 女子準決勝
- 16:28(日本時間 23:28)〜 男子準決勝
- 16:43(日本時間 23:43)〜 女子準決勝
- 16:48(日本時間 23:48)〜 男子準決勝
- 16:55(日本時間 23:55)〜 女子決勝
- 17:00(日本時間 24:00)〜 男子決勝
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