男子のFIVBバレーボールネーションズリーグが7月24日、イタリア・ボローニャで閉幕した。フルセットの攻防を制し、優勝したのはフランス。昨夏のTokyo2020に続いて世界の頂点に立ち、今月末にポーランド、スロベニアで開催される世界選手権に弾みをつけた。
そのフランスに準々決勝で敗れた男子日本代表・龍神NIPPONの最終成績は過去最高の5位。全体を通しても予選のフランス、アメリカ、ブラジル、さらに準々決勝で再戦したフランスに喫した4敗のみであり、優勝のフランス、準優勝のアメリカ、3位のポーランド、4位のイタリアに続く成績は躍進と言って間違いないだろう。
好成績を残した背景には、Tokyo2020までコーチを務めたフィリップ・ブラン氏が監督となり、戦術や取り組むべき形が選手により深く浸透したこと。同じくTokyo2020から主将を務める石川祐希が見せた抜群のリーダーシップ、バレーボールの「高さ」と「パワー」は決して身長だけでないことを見せつけ、186㎝ながら世界のオポジットとして存在感を発揮する西田有志の存在も大きい。
特に石川、西田のサーブは相手にとって脅威となり、試合序盤や中盤、さらには終盤の勝負どころでサービスエースを量産。たとえ相手にリードされていようと、サーブ順が回ってくれば「何とかしてくれるのではないか」という期待に見事に応える場面が何度もあった。
これまではどこかで「格上」と考え、試合前から勝つことよりも「どこまで勝負できるか」と見上げていたブラジルやアメリカに対しても互角の戦いを挑み、点差が離れてもサーブから追い上げる。ベストメンバーで臨んできたイタリアにも勝利するなど、目標としてきた世界のトップ8、決勝トーナメント進出が決してまぐれではないことを見せつけた。
また、石川、西田だけでなく、Tokyo2020に出場した選手たちの経験値が上がり、コートでのプレーや姿には逞しさが見られた。顕著だったのはミドルブロッカーの山内晶大やリベロの山本智大。山内は204㎝の高さを生かしたスパイクやブロック、山本はディグやサーブレシーブで貢献し、大阪ラウンドでは満員の観衆が詰めかける中、相手のブロック枚数や守備の布陣を後ろから指示する声も大きく響いていた。
さらにアウトサイドヒッターの髙橋藍もサーブレシーブの要として、安定したパフォーマンスを発揮。セッターの関田誠大はオリンピックを終えてすぐにポーランドへ渡り、世界屈指の強豪が集うリーグでしのぎを削った成果を見せ、堂々としたプレーで攻撃陣を操った。
東京で主軸となった選手がネーションズリーグでも同様に主軸として活躍したことに加え、オリンピックで悔しさを味わった選手の躍進も今大会では目立った。出場12名に選出されながらも、Tokyo2020では出場機会が限られたアウトサイドヒッターの大塚達宣は、ネーションズリーグの中盤から攻守において躍動。予選ラウンド第1週のブラジルラウンドでは14名のメンバーから漏れた高梨健太も第2週のフィリピンラウンドから合流し、攻撃力の高さを見せつけた。
さらにTokyo2020の出場が叶わなかったミドルブロッカーの髙橋健太郎はブロック、スパイクで世界のミドルブロッカーと互角に渡り合う姿を見せた。今大会が日本代表初選出となった村山豪も初戦のオランダ戦で途中出場を果たし、スパイク、ブロック、さらにサーブでも力を発揮、初戦の逆転勝ちに貢献するなど、それぞれが役割を果たし、強いチームとして戦う原動力となった。
間もなく始まる世界選手権へ向け、試金石となるはずだった準々決勝のフランス戦は、直前の練習で左足首を負傷した石川を欠く中での試合となったが、すでに石川は治療、リハビリに取り組み、世界選手権へ向け再始動が切られている。
本来ならばオリンピックまで4年サイクルであるはずが、Tokyo2020の延期に伴い3年という短いスパンで臨まねばならず、各国ともに新たな戦力を試し、戦術に取り組みながらも世界ランキングに直結するため勝利を求めなければならない。
難しい状況での戦いとなったネーションズリーグではあるが、この大会で得られた成果、課題を克服し、さらに上のステージを目指すのは日本のみならず、すべての国が同様だ。今夏にはポーランド、スロベニアで世界選手権が行われ、来年のオリンピック最終予選を経て、2年後にはパリ2024を迎える。
ネーションズリーグで得られた収穫、課題をどのように生かし、どんな進化を遂げていくのか。1つ1つの経験、自信を武器に強さを磨く日本代表にこれからも大いに期待したい。