安楽宙斗銀メダル!パリ2024スポーツクライミング複合

執筆者 Risa Bellino
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安楽宙斗銀メダル!パリ2024スポーツクライミング複合
写真: 2024 Getty Images

8月5日から競技が始まったパリ2024オリンピックスポーツクライミングでは、8月9日にボルダー&リード複合種目の男子決勝が行われ、日本男子で唯一決勝に進出した17歳の安楽宙斗(あんらく・そらと)が、メダル獲得を目指して挑んだ。

複合種目では、最初にボルダー種目で高さ約4mの壁に設置された4つの課題(ルート)を、できるだけ少ないアテンプト(試行回数)で完登を目指し、その後、リード種目で高さ約15mの壁を制限時間内にどれだけ高く登れるかを競う。両種目の得点を合算して最終順位が決定する中、安楽はボルダーで見事に首位に立ち、リードでも中盤の苦しい場面を乗り越えて健闘するが、9.8点及ばず、初出場のオリンピックを銀メダルで終えた。金メダルは同じく初出場の英国代表トビー・ロバーツ。銅メダルは2大会連続でヤコプ・シューベルト(オーストリア)が獲得した。

1種目目の決勝ボルダーでは、全4課題中2課題を攻略した3選手が混戦となる中、その中でも第1課題で一発完登(1回のアテンプトで一番上のトップホールドまで登りきること)を果たした安楽が69.3点で首位に立ち、2位にアメリカ合衆国代表の20歳、ダフィー・コリン(68.3点)、3位に19歳のトビー・ロバーツ(63.1点)がつけた。東京2020金メダリストのアルベルト・ヒネス・ロペス(スペイン)は第1課題の0点が大きく響き、一つも課題を完登できずに24.1点で7位にとどまった。

2種目目の決勝リードでは、4番目に登場した東京2020銅メダリストのシューベルトが、ボルダー5位を払拭する96.0点のハイスコアをマークし、合計139.6点で首位に立つ。複合種目で安楽に続く世界ランキング2位のロバーツは、7番目に登場。得意のリードでトップホールド2手手前まで登り切り、92.1点を獲得し、合計155.2点でシューベルトを超えて暫定トップに立つ。最後は安楽がクライミングマットに登場。リードで86点を獲得すれば金メダル確定となる中で、76.1点の時点で落下してしまった安楽は合計154.5点で銀メダルとなった。陸に降りた後はすぐに得点を確認し、ロバーツを超えられなかったことを認識すると悔しそうにロープを解きながら、掲示板を2度見して残念そうにうつむいた。

「単純に1位を狙っていたけど叶わず、悔しいっていう気持ちが強いですね」と試合後のOlympics.comインタビューに応えた安楽は、決勝をこう振り返った。「ボルダーはやっぱり3、4(課題)どっちもチャンスがあったのに、3はムーブが読み切れずに落ちて、4は息が上がって落ちてっていう感じで。特にリードは中盤がぐちゃぐちゃで、すごい汚い登りをしていたので…それにしてはよく頑張ったのかなと思います」。

初のオリンピックの挑戦は、「観戦とかで浮き沈みなく、自分のメンタル一定で行きました」と精神面で落ち着きを維持できたことを評価し、「他の選手は体幹と腕とかで足がなくても安定して体とかを回転させたり、自由に操ることができるんですけど、僕はそこに重きを置いてなくて、他のところ、自分のスタイルを活かせるようにトレーニングをしてきたので、まさか今頃大苦手が見つかって、悔しいですけど良かったです」と、今回の経験を通じて大きな収穫があったことを前向きに捉え、今後の成長に活かす決意を示した。

安楽宙斗、決勝リードでスコアを伸ばせず悔しい表情を見せる/パリ2024スポーツクライミング複合

写真: 2024 Getty Images

決勝ボルダーでは、安楽の持ち味であるクライミングテクニックを存分に発揮し、身体のバランスを上手くコントロールしながら、脱力して無駄な力を省きつつ、指の力で吸い付かせるようにホールド(突起物)を掴み、第1課題を50秒で一発完登に成功。唯一の25点満点を獲得する。第2課題は、大きくて丸い滑りやすいスローパーをメインとした課題で、決勝進出7名が最初の10点のゾーンホールドを攻略することなく落下する中で、安楽はたったひとり絶妙なバランス感覚で、脚をジリジリと動かして重心を移動させ、摩擦力を利用してホールドを保持し、難関ポイントを超えて完登を果たす。第3課題はパワーを必要とするオーバーハングの難しい課題で、東京2020銅メダリストのシューベルトなど3人が0点で終える中、安楽を含む4人は10点ゾーンホールド一歩手前で落下。トビー・ロバーツのみが3度目のアテンプトで完登に成功した。第4課題も多くのファイナリストが苦戦を強いられた。トップホールド手前で振り子のように体を振ってジャンプする高度な課題をダフィー・コリンのみが完登したことで、TOP3が混戦となり、首位の安楽は4位以下に15点以上の差をつけて1種目目ボルダーを終えた。

決勝リードでは、31歳のアダム・オンドラ(チェコ)と決勝進出者最年長33歳のシューベルトが完登一歩手前となる96点をマークし順位を上げるが、ボルダーで先行していたロバーツが92.1点を出したことで金メダルを掴み取り、安楽が76.1点で銀メダルを獲得した。

スポーツクライミング複合男子決勝結果

  1. トビー・ロバーツ(英国)B63.1点(24.4、9.0、24.8、4.9)L92.1点:合計155.2点
  2. 安楽宙斗(日本)B69.3点(25.0、24.6、9.9、9.8)L76.1点:合計145.4点
  3. ヤコプ・シューベルト(オーストリア)B43.6点(24.7、9.3、0.0、9.6)L96.0点:合計139.6点
  4. ダフィー・コリン(アメリカ合衆国)B68.3点、L68.1点:合計136.4点
  5. ヘイミッシュ・ヘイミッシュ(英国)B53.9点、L72.0点:合計125.9点
  6. アダム・オンドラ(チェコ)B24.1点、L96.0点:合計120.1点
  7. アルベルト・ヒネス・ロペス(スペイン)B24.1点、L92.1点:合計116.2点
  8. ポール・ジャンフト(フランス)B24.4点、L54.0点:合計78.4点

決勝出場選手紹介で安楽宙斗が歓声にこたえる/パリ2024スポーツクライミング複合

写真: 2024 Getty Images

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パリ2024 スポーツクライミングの競技日程

以下、現地時間と括弧内が日本時間。日本はパリより7時間進んでいる。※日程は変更になる可能性もある。

8月9日(金)

  • 10:15(17:15)男子ボルダー&リード複合・ボルダー決勝
  • 12:28(19:28)男子ボルダー&リード複合・リード決勝

8月10日(土)

  • 10:15(17:15)女子ボルダー&リード複合・ボルダー決勝
  • 12:28(19:28)女子ボルダー&リード複合・リード決勝

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