パリ2024トランポリン観戦ガイド! 注目ポイント・競技形式・試合日程
パリ2024オリンピック・トランポリン競技の出場枠をかけた世界選手権が2023年11月に英バーミンガム開催され、西岡隆成が個人男子で銅メダルに輝いたことで、日本代表男子1枠を獲得。女子は、ワールドカップ5大会で安定してポイントを重ねた森ひかるがポイントランキングの4位に入ったことで、日本に出場枠1をもたらした。
2024年5月に開催されたパリ2024日本代表選考会を兼ねたトランポリン・グランド・チャンピオンシップ(TGC)で森ひかるが優勝し、東京2020に続く2大会連続のオリンピック代表に内定。西岡は同大会で3位だったが、前年の世界選手権でパリ2024出場枠獲得をもたらした選手に与えられるアドバンテージが適用され、初のオリンピック日本代表の座を掴んだ。
パリ2024のトランポリン競技は、個人2種目が実施される予定で、8月2日(金)の1日ですべてが完結する。パリ2024では日本選手初となるメダリストが誕生し、日本体操界の新たな歴史を刻むことになるか。
ここでは、トランポリン競技の見どころ、日程や会場のほか、注目選手を紹介する。
パリ2024トランポリン観戦ポイント
長方形のトランポリンの上で、ひねりや宙返りなどを取り入れたアクロバティックな一連の技を行い、より高く、より美しい高難度の技に挑戦するトランポリン競技。選手たちは空中で最大10メートルの高さ(およそ3階建ての建物の高さ)に到達すると言われており、その高さから宙を舞いながら繰り出される力強くしなやかな技の数々が最大の見どころとなる。
トランポリンの醍醐味である高さや技の難度を上げると、バランスを失いやすくなり、フォームのみだれや移動(トラベリング)に繋がりやすいが、それをいかに鍛え抜かれた強靭な身体でコントロールし、安定した演技を生み出すかが選手の腕の見せ所だ。一瞬のずれが不安定さを生み出し、高い演技点が得られにくくなるため、選手はバランスを考慮しながら自分に合った自由演技種目を構成することがポイントとなる。
日本女子代表の森ひかりが武器としている、縦回転の3回宙返りに横回転のひねりを加えた大技「トリフィス」など、選手たちが繰り出す技の違いにも注目したい。
パリ2024トランポリン競技の注目選手
シドニー2000からオリンピック公式競技として採用されたトランポリン競技。過去6大会で授与された36個のメダルのうち、4個の金メダルを含む14個のメダルを獲得しているのが、強豪国・中華人民共和国だ。東京2020オリンピック女子チャンピオンのジュー・シュエイン(朱雪瑩)は過去12ヶ月間に出場したすべてのワールドカップで表彰台に上がり調子を上げており、男子は2度の世界チャンピオンに輝いたヤン・ランユーと17歳の新星ワン・ジサイがメダル有力候補となるだろう。中国勢以外では、東京2020男子王者のイワン・リトビノビッチ(AIN)、2度のオリンピックメダリストであるブライオニー・ペイジ(英国)、ニュージーランドに初めてトランポリンオリンピックメダルをもたらした、東京2020の銅メダリストのディラン・シュミットが注目選手となる。
この世界強豪選手を相手にメダル獲得を目指すのが、日本の森ひかると、西岡隆成だ。
2019年の世界選手権で、男女通じて日本勢初の個人種目優勝を勝ち取った森ひかるは、武器である高難度の3回転、高さと滞空時間の長さを見せつけ、東京2020日本代表に内定。この勝利で一気に世界中から注目される存在となった。しかしながら、初出場のオリンピックでは、プレッシャーで思うように心と身体をコントロールすることができず、予選で演技を中断、予選敗退という無念の結果で終えた。大会後は一時競技を離れる期間があるも、2022年世界選手権で3年ぶり2度目の世界女王に返り咲くと、2023年10月の全日本選手権で5年ぶり、3度目の優勝を果たし、2024年5月のパリ2024代表選考会で見事オリンピック代表の座を射止めた。「挑戦し続ける人にしかわからない、次々と出てくる色んな感情。そんな感情全てを楽しみ、トランポリンを通して成長し続ける」と、たくましい言葉を自身のInstagramで綴った森の、2度目の挑戦に注目したい。
男子は、東京2020で代表を逃し補欠だった西岡が、パリでその屈辱を晴らすために熱意を燃やしている。2020年から3年連続で全日本選手権を制し、高校3年の時に出場した2021年の世界選手権では、3回宙返りを7本入れた構成で、難度点世界記録を樹立して銀メダルを獲得。2022年はワールドカップで2連勝の好成績を残した。大会中に左膝の半月板を損傷し、3か月競技ができない期間もあったが、2023年の世界選手権では銅メダルを獲得し、着実に世界の強豪と戦える実績を積み上げてきた。パリで金メダルを取るために演技構成を見直した西岡は、5月のオリンピック代表選考会で、3回宙返りを6本と、2回転宙返り+4回ひねりを入れた高難度の演技を成功させ、その手ごたえを掴んでいる。20歳で初出場となるオリンピックで、日本トランポリン界初となる金メダル獲得を達成できるかが、見どころだ。
森ひかる
- 生年月日:1999年7月7日(25歳)※年齢はパリ2024開幕の7月26日時点で表記
- 所属:TOKIOインカラミ
- 出身地:東京都足立区
- オリンピック歴:東京2020
- ソーシャルメディア:Instagram、X、Youtube
西岡隆成
- 生年月日:2003年11月1日(20歳)
- 所属:近畿大学
- 出身地:大阪府東大阪市
- オリンピック歴:初出場
- ソーシャルメディア:Instagram
東京2020オリンピック、トランポリンのメダリスト一覧
女子個人
- 金メダル:ジュー・シュエイン(朱雪瑩/中国)
- 銀メダル:リウ・リンリン(劉霊玲 /中国)
- 銅メダル:ブライオニー・ペイジ(英国)
日本からは2選手が出場。宇山芽紅(うやま・めぐ)は5位入賞。森ひかるは予選敗退となった。
男子個人
- 金メダル:イワン・リトビノビッチ(ベラルーシ)
- 銀メダル:ドン・ドン(董棟/中国)
- 銅メダル:ディラン・シュミット(ニュージーランド)
日本からは2選手が出場。岸大貴が7位入賞、堺亮介は予選敗退となった。
パリ2024トランポリンの競技形式
パリ2024では女子個人と男子個人の2種目が実施され、男女それぞれ16名ずつ、合計32名の選手が出場する。選手は、スチールのスプリングでフレームに固定された約4.3m×2.1mの長方形の合成繊維製トランポリンベッドで、中央部にある7cm±3cmの赤十字の表示部分に着地するよう、技や身体をコントロールしながら跳躍を繰り返す。
男女ともに予選ラウンドから始まり、トップ8が決勝に進出するオリンピックでは、予選ラウンドの得点は決勝には引き継がれず、持点0点で新たに自由演技を行う。各演技は、10回連続で異なる技を行い、それぞれの得点を合計して順位が決められる。10回の技を演じるのに要する時間はおよそ20〜30秒で、技に入る前に行うストレート(伸身)ジャンプは予備ジャンプとして十分な高さに到達するまで行われ、技として回数には数えられない。また、連続して技を繰り出せなかった場合や、トランポリンベッド以外に身体が触れたり、外に落下した場合は競技が中断となり、その時点で演技が終了となる。
パリ2024トランポリンの競技日程
以下すべて現地時間(日本はパリより7時間進んでいる)。日程は変更になる可能性もある
8月2日(金)
- 12:00〜14:30 女子予選、女子決勝
- 18:00〜20:30 男子予選、男子決勝
パリ2024トランポリンの競技会場
ベルシー・アリーナ
フランスのパリ12区にあるフランス最大の屋内競技場、ベルシー・アリーナは、これまでに何百ものイベントで、3,000万人以上の観客を受け入れてきた。1984年に建設されたピラミッドのデザインが特徴的なベルシー・アリーナは、文化とスポーツを象徴する会場のひとつとして、ロレックス・パリ・マスターズ(男子テニスATPツアー)や2018年欧州女子ハンドボール選手権決勝ラウンドのような国際大会だけでなく、ダフト・パンク、マドンナ、ポール・マッカートニーなど世界的に著名なアーティストのコンサートなども開催してきた。
この会場では、トランポリンのほか、体操競技、バスケットボール、車椅子バスケットボールが開催される。