アンバー・グレンにとって、2024年は「初めて」づくしの1年だった。25歳のグレンは12月7日、自身初のISUグランプリ(GP)ファイナルで躍進の2024年を締めくくった。
フィギュアスケートGPファイナルが行われたフランス・グルノーブルでの優勝は、またしても期待を上回るパフォーマンスによってもたらされた。グレンは今年、国内王者になったのを皮切りに、9月のチャレンジャーシリーズ・ロンバルディアトロフィーで国際大会での自身初優勝を飾り、11月にはGPシリーズで初優勝。しかも、2戦連続で表彰台の頂点に立った。
GPフランス大会と中国杯の勝者である彼女は、GPファイナルで自己ベストに迫る活躍を見せ、得意のトリプルアクセルを皮切りに3回転ジャンプを7本成功させ、142.03点をマーク。グレンを除く5人が日本人スケーターという状況の中、2位との差は3ポイント以上。13歳から国際大会に出場している25歳のグレンにとって、GPファイナル初優勝となった。
多くの人の目には安定した演技だったように映ったが、グレンは演技後、自分のベストからはほど遠いと感じたという。
ショートプログラム(SP)のトリプルアクセルで転倒しそうになって恐ろしくなった彼女にとって、残りのジャンプを成功させるために気持ちを落ち着つかせるのは簡単なことではなかった。フリー直前の練習でもジャンプで2度転倒。しかし、最終滑走者の自分の名前がアナウンスされたときには落ち着いていた。
「氷上に出る前に、自分に言い聞かせたことのひとつは(自分は)『穏やかな野獣』だということ。私のコーチのひとりがある日、すごく調子の良い私を見て『穏やかな野獣のようだ』って言ったんです。だから、冷静でいること、ひとつひとつ丁寧にすることを心がけました」
グルノーブルで彼女が自分に言い聞かせた言葉の中には、「あなたはここにいる。ここまで来ることができた。あとはやるだけ」というものも含まれている。
そして彼女は、オーディオマシンの「I Will Find You 」とクランの「The Return」に合わせて感動的なスケートを披露した。
音楽が終わり、グレンがフィニッシュのポーズでひざまずくと、デイモン・アレン・コーチはすでに飛び跳ねて祝福していた。数分後、キスアンドクライで結果を待ったグレンは、スコアが発表されると「Oh my God!」と叫んで喜びを表現した。
「自分のベストを出せたかというとそうではないように思います。残念ながら、『やったー、興奮したー! 最高!』とか、笑顔になるようなスケートではありませんでした。私はやるべきことをするためにここに来て、自分の能力を最大限に発揮しました。パフォーマンスというよりも、技術のデモンストレーションだったように思います。国内選手権、そしてできれば世界選手権に向けて、この点を改善していきたいです」。
On Edge
2022年の冬季オリンピック北京大会に向けてトレーニングに励む、世界最高のアイスダンスペアの氷上と氷の外での個人的、感情的な挑戦を追いかける。