W杯に向けたチーム作りの真っ只中
EAFF(東アジアサッカー連盟)E-1 サッカー選手権 2022 決勝大会が7月19日に開幕する。今大会は東アジア王者を決める大会で、日本(FIFAランキング13位)、中国(同16位)、韓国(同18位)、チャイニーズ・タイペイ(同40位)の4カ国が総当たりで頂点を競う。
当初は中国での開催が予定されていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大状況を理由に、日本での開催に変更された。なでしこジャパンは2021年10月に池田太監督が新たに就任。2023年7月から8月にかけて行われる女子ワールドカップに向けたチーム作りを進めている。戦術面では「奪う」をコンセプトに掲げ、攻守にアグレッシブな戦いを目指している。
高倉麻子前監督の下で戦った2019年大会(韓国・釜山)は、チャイニーズ・タイペイに9-0、中国に3-0、韓国に1-0で全勝し、4大会ぶりのタイトルを掲げた。今大会は2連覇をかけて戦う。
新チーム発足から3カ月で臨んだ1月のアジアカップでは、グループステージで韓国に1-1で引き分け、準決勝では中国に2-2からPK戦で敗れてベスト4に終わった。相手陣内の高い位置からボールを「奪う」守備は収穫も多かったが、決定力に課題を残した。
しかし、6月の欧州遠征ではセルビアに5-0、フィンランドに5-1と、アジアカップの鬱憤を晴らすようなゴールラッシュ。クロスからの得点パターンが多く、3人、4人が関わる多彩なコンビネーションからゴールネットを揺らした。
今大会では、アジアのライバル勢にその成果をぶつけたい。それに加えて、チームの進化が試されるのがゲームコントロール力だ。時間帯や点差、相手の出方によっても必要な判断は変わってくる。
「プレスの強度を保ちながら、カウンターを仕掛けてくる相手にどう準備して対応するかなど、相手の変化に対する対応は準備してトライしていきたいと思います」と、池田監督は言う。
前大会からのチームを取り巻く変化
今大会に向けて招集されたメンバーは25名。国際Aマッチデーの開催ではないため、各国サッカー協会に選手の拘束力がなく、日本は国内組が22名を占めた。
前回大会が開催された3年前と比べると、なでしこジャパンを取り巻く環境は二つの点で大きく変わった。一つは、海外組が増えたことだ。
前回大会開催時の海外組はDF熊谷紗希(当時オリンピック・リヨン/フランス、現FCバイエルン・ミュンヘン)、MF猶本光(当時SCフライブルク/ドイツ、現三菱重工浦和レッズレディース)のみ。現在は熊谷に加えて、FW岩渕真奈(アーセナル/イングランド)、MF長谷川唯(ウェストハム・ユナイテッド/同)、MF杉田妃和(ポートランド・ソーンズFC/アメリカ合衆国)の他、前回大会でMVPを獲得したDF南萌華(欧州移籍が決定済)、MF遠藤純(エンジェル・シティFC/米国)らが海外のチームに所属しており、今大会には参加しない。W杯やTokyo2020オリンピックで実績を持つ主軸選手たちだけに穴は大きいが、国内組にとっては絶好のアピールの場となる。
昨年9月に日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が発足したことも、大きな変化だ。サッカーに集中できるプロ選手が増え、個を磨く環境が向上した。その中で頭角を現してきた新戦力が今大会には名を連ねている。
池田監督体制になってからは、DF林香奈絵(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)、MF中嶋淑乃(サンフレッチェ広島レジーナ)、MF杉田亜未(ノジマステラ神奈川相模原)などが初招集。DF高平美憂(マイナビ仙台レディース)、FW井上綾香(大宮アルディージャVENTUS)は、出場すれば代表デビューとなる。
「シーズンを通して、WEリーグで自分(の強み)を表現できていた選手たちが、なでしこジャパンに入った時にどのような輝きを見せてくれるか、グループの中でどういう変化が起きるかを見てみたいと思っています」(池田監督)
注目選手を挙げるなら、まずはFW植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)だろう。池田ジャパンでは9試合で7ゴールと、抜群の決定力を見せている。アジアカップから5試合連続でゴールを決めており、岩渕不在のチームではエースの存在感を放つ。緩急自在のドリブルや、ヘディングの巧さ、献身的な守備で攻守の起点となりそうだ。
また、ここまで全9試合に先発してきた右サイドバックのDF清水梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)にも注目したい。スピードとスタミナを生かし、周囲と連係しながら右サイドを制圧する。W杯やオリンピックで、各国のスピードスターと対峙してきた経験値の高さがあり、1対1の強さにも定評がある。
韓国は守備の強度が高く、中でも一人で試合を決められるエースのチ・ソヨンには警戒したい。アジアカップで優勝した中国はフィジカルの強さと粘り強さがあり、少ないチャンスを生かせるタレントがいる。チャイニーズ・タイペイは2019年から日本人の越後和男監督が率いていたが、4月に顏士凱監督にバトンタッチ。しっかりと日本対策を練ってくるだろう。
その中で、なでしこジャパンは連覇を果たすことができるか。新たなヒロインの誕生にも期待しつつ、8日間の熱い戦いを見守りたい。