【独占インタビュー】トム・ホーバス 男子バスケットボールHC 「新時代に向かいたい」

パリ2024の出場枠をかけた争いを兼ねる「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」に挑む "AKATSUKI JAPAN" こと、 男子日本代表候補メンバーが6月26日より国内強化合宿を開始。チームを指揮するトム・ホーバス ヘッドコーチが、Olympics.comの単独インタビューに応じた。

1 執筆者 Yukifumi Tanaka/田中幸文
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(2022 Getty Images)

4年に一度のサイクルでやってくる男子バスケットボールの興奮、沖縄を舞台にして行われるワールドカップまで、残り2ヶ月を切った!

フィリピン、日本・沖縄、インドネシアにて、史上初となる3ヶ国共催の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」が8月25日に開幕し、日本を含む地区予選を勝ち抜いた合計32チームが世界の頂点をかけて激突する。また、今大会は、来夏のパリ2024の出場枠をかけた争いも兼ねており、日本の場合アジアゾーンで最上位となれば、フランスで開催されるオリンピックの男子5人制バスケットボール出場権を手にすることができるのだ。

"AKATSUKI JAPAN" こと、バスケットボール男子日本代表は、ワールドカップ2023に出場する候補メンバー25名が発表(6月19日付・日本バスケットボール協会)され、26日より国内強化合宿を始めた。

招集されたメンバーは今後、8月23日に設定されている最終エントリー締切日までに、本大会に出場する12名に絞られるため、国内での合宿や強化試合、韓国遠征などを通じて、チーム内で鎬を削り合う。

合宿の初日には、トレーニングの様子が報道陣に公開された。その中で、Tokyo2020女子バスケットボールで男女通じて日本史上初となるオリンピック銀メダル獲得へと導き、今度は男子代表チームの指揮を任されたトム・ホーバス ヘッドコーチ(HC)が、Olympics.comの単独インタビューに応じ、沖縄アリーナで開催されるワールドカップ2023グループステージに向けた意気込みを語ってくれた。

英語インタビュアー:Shintaro Kano

「楽しそうに戦う彼女たちに、わたし自身が気付かされた」

- いよいよ、合宿初日を迎えました。今の心境はいかがですか?

「ワクワクしています。ナショナルチームとして、この2、3ヶ月はメンバーと顔を合わせることがありませんでした。その期間は、やるべきことが山積して、クレイジーな日々でもありました。だけど、こうして今、選手たちと一緒にコートに戻ってくることができて、本当に興奮しています」

- 候補メンバー25名の選抜は、難しいタスクだったのではないでしょうか?

「そんなことはないです。1年半かけてずっと、60人近い選手を見てきましたから。ワールドカップのアジア地区予選では、6ウィンドウ(=期間)を指揮しましたので、誰がキープレーヤーになるのかも、十分に考えることができました」

- Tokyo2020では男女通じて日本史上初となるオリンピック銀メダル獲得に大きく貢献されました。女子から男子へチームを指揮することの変化について、どのように感じていらっしゃいますか?

「男女のバスケットボールに大きな違いはないです。なので、わたしのスタイルに変化はありません。才能ある選手を、最適なポジションに配置するための作業は、少し時間を要したかもしれません。わたしは、ハングリーで、エナジーに溢れた選手が大好きですから」

「これまでの合宿や試合を通じて、彼らと様々な組合せや練習を重ねて、本当に素晴らしい成果があったと思っています。やればやるほど、いいチームになっていきましたので」

「女子チームを指導している時は、NBAのやり方や哲学、ヨーロッパスタイルなどを取り入れました。いわば、男子バスケットボールの指導法です。(東京2020)オリンピックに向けて、ハードな日々であったにも関わらず、彼女たちは厳しい練習を楽しんでいて、ワクワクしながら試合に出場し、ハッピーな表情をしていました」

「コーチという立場になると、目標達成に向かって、ものすごくフォーカスして、それだけに縛られてしまうこともあります。楽しめない瞬間にも、時には出くわします。ですが、楽しそうに戦う彼女たちに、わたし自身が気付かされました。もっとわたし自身も楽しむということを。なので今は、ほんの少しかもしれないですが、自分がやっていることを楽しみながら、男子チームをコーチングすることを心がけています」

「ここが、わたしたちのスタート地点」

- 候補メンバー発表の会見時、ラグビーやサッカーのように、バスケットボールをもっと盛り上げていきたいというコメントが登壇者からありました。

「わたし自身も同じ考えです。バスケットボールの新時代に向かいたいと思っています。東京オリンピックで女子チームが見せたように、今度は男子の番だと皆さんが期待しています」

「Bリーグは年々進化しています。なので今こそ、ナショナルチームとBリーグが相互に共鳴していくべきだと考えています。Bリーグのファンの皆さんのバスケットボールに対する愛を感じていますし、次はナショナルチームの番だという期待も伝わっています。ですから、ここが、わたしたちのスタート地点だと思っています」

- 沖縄のワールドカップまで、9マッチの強化試合が予定されていますが、なにか実験的なことをするお考えはありますか?

「トライアウト(=適正確認)の機会ですからね。今日(26日)の時点で18名が合宿に参加していますが、彼らが強化試合の実際のコートの上でどんな輝きを放つのか、しっかりチェックしたいと考えています」

- 最後の強化試合となるスロベニア戦(8月19日)後に、代表メンバーの最終決定をするお考えですか?

「わたしは事前に何も決めません。今だって、何も決めていません。候補メンバーの中には、(代表になるか)フィフティ・フィフティの選手もいます。最後の最後まで全員を見たいと思っています。ワールドカップに向けて、驚くようにステップアップする選手もいますから」

「ドイツ戦に向けて80%フォーカス」

- 沖縄でのグループステージ初戦は、強敵・ドイツですね。そして、フィンランド、オーストラリアと手強いチームと対戦します。

「そうですね。東京オリンピックの女子チームのグループ分けでも、日本は "死のグループ" に入りました。フランス、アメリカ、ナイジェリアと同じグループです。わたしたちは、初戦のフランス戦に80%近くフォーカスしていました。そして、残り20%で、他2チームの情報収集や研究などに取り組んでいました。ですから、(1次リーグ突破という)結果については、わたしたちにとってはサプライズではなかったのです」

「あの時と同様に、わたしは今、ドイツ戦に向けて80%フォーカスしています。大会が近づいてくれば、フィンランドの情報収集を始めます。オーストラリアは、アジア地区予選でも戦っていますので、よく分かっています。わたしたちと極めて似たようなシステムで動いていますし、大きく変化することはないでしょう。ロースター(=候補メンバーリスト)の顔ぶれをチェックしたいと思います」

◾️ワールドカップ2023までの主なスケジュール

※2023年6月19日 日本バスケットボール協会 発表

◾️ワールドカップ2023 AKATSUKI JAPAN対戦スケジュール

  • 会場:沖縄アリーナ(沖縄県沖縄市)

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