5月15日に終了したバドミントンの国別対抗戦トマス&ユーバー杯で、日本は男女ともに準決勝敗退となったが、大会は個人戦のBWFワールドツアー、タイオープン(スーパー500)へと続いていく。
日本女子ダブルスでは、東京オリンピック出場の**福島由紀&廣田彩花(さやか)組、永原和可那&松本麻佑組、そして志田千陽**&松山奈未組が世界ランク上位に名を連ねているが、2024年のパリオリンピックでのダブルスの出場枠は最大で2枠。これからおよそ2年間、パリに向けて熾烈な戦いが繰り広げられることだろう。
その一角となるのが2022年3月の全英オープンを制すなど、勢いを増している「シダマツ」ペア。「パリまでの1大会1大会がすごく重要になる」と話す志田&松山組に注目した。
「シダマツ」飛躍の2021年
世界ランキング7位(2022年5月現在)の志田千陽と松山奈未が初めてコンビを組んだのは2014年、志田が高校2年、松山が高校1年のときだ。いろんな人と組んでみて相性の良さを感じたというふたりは、同年のジュニア韓国オープンで優勝し、世界ジュニア選手権で見事銅メダルを獲得した。
2021年12月の世界選手権前に行われた Olympics.comのインタビューで、志田は、「初めて組んだときからスピードも波長も合って、最初からけっこう組みやすいなって思いました」と、松山の第一印象を語る。松山も同じように感じた一方、「志田さんが1学年上のダブルスで一番強い人だったんですけど、その人と組むこと自体、本当に光栄なことで。何で組んでるんだろう? という感じでした」と、当時の戸惑いを振り返る。「でもコンビネーションは何も言わなくても合っていたし、すごい組みやすかったのは覚えてます」。
高校卒業後はともに再春館製薬所に入社して競技に励み、2019年の全日本総合選手権でベスト4に入ると、翌年、国内トップ選手が入る日本A代表に選出された。
2020年はコロナ禍のため思うように大会に出ることができなかったが、2021年には主要国際大会で好成績を残し、存在感を高めていく。
11月のインドネシアマスターズ(スーパー750)とインドネシアオープン(スーパー1000)の2大会で優勝、12月のワールドツアーファイナルで準優勝を収めて、2022年3月の全英オープン(スーパー1000)では優勝を飾った。
引っ張り役の志田と勝負師の松山
そんなふたりが息の合ったパフォーマンスを発揮できる要因はどんなところにあるのだろうか?
「お互い本能的に動くタイプで、お互いスピードもある。私は松山の前衛はすごいって認めていて、奈未が乗ってきたらもう負けないだろうっていう感覚があるので、それを引き出せればあとはついていくだけだって思っています」と志田。一方の松山は、感覚的にうまくいっているコンビネーションを、意識して考えてプレーできるようになったら、次のレベルに行けるのではないかと分析する。
ペアを引っ張るのは志田の役割。だが試合中に不安になることも当然ある。そんなとき、松山は「自分がいいパフォーマンスをすれば絶対戻ってきてくれるので、(何かを)言うというよりは待つ感じですね」と冷静に志田を支える。志田はそんな松山を「勝負師」として頼りにする。
ふたりの言葉から感じられるのは信頼関係。コロナ禍で試合に出られない中、不安な状況が続いたというが、コミュニケーションを大切にしながらお互いの理解を深め、練習内容も自分たちで話し合うなどして関係を構築してきたという。
パリに向け、1大会1大会が重要
2024年に行われるパリオリンピックでの活躍が期待されるが、その難しさも実感している。
志田は「ランキングを上げていけるようにしていきたいね、っていう話をしていて、私自身、技術の面でもまだまだなので、もっと磨いていかなきゃいけないなって思います」とし、松山は「パリまでの1大会1大会がすごく重要になってきますし、その中でもし負けたとしても、それがいい経験につながるようにしていきたいです」と、パリを見据えた意気込みを語った。
バドミントンは今後、5月17日に始まるタイオープンのほか、6月のインドネシアオープンなどが続き、8月には東京での世界選手権が予定されている。ふたりの成長に注目したい。