体操日本男子大逆転の金!あん馬で落下の橋本大輝、鉄棒で落下の中国...最後の鉄棒でエース橋本が決めた!
7月27日の予選を経て、8チームに絞られたパリ2024体操男子団体戦の決勝が、7月29日午後5時半からベルシー・アリーナで行われ、体操ニッポン男子は2大会ぶりの男子団体金メダル奪還を果たした。
男子代表メンバー最年少20歳の岡慎之助と、団体戦での貢献度を見込まれ代表入りした杉野正尭の初出場組が大舞台で臆することなく演技を決め、チームに勢いを呼び込み、2大会連続出場の橋本大輝、萱和磨、谷川航それぞれが役割を果たして、素晴らしいチームワークでライバルの中華人民共和国を0.532点差で大逆転。悲願の金メダルを掴んだ。
日本と中国は同じローテーションで、ゆか、あん馬、吊り輪、跳馬、鉄棒の順で決勝の演技を行った。2種目目のあん馬で橋本が落下し、日本の苦手とする吊り輪で一時順位を5位まで落とした日本は、4種目目終了時点で中国に3.267点差で金メダルは絶望的かと思われた。しかし、最終種目の鉄棒で中国2人目の演技者であったス・ウェイデ (苏炜德)が序盤でまさかの落下。会場は騒然とし、中国チームのコーチは頭を抱え、スは呆然とチームのもとに帰ると、そこで日本のエース、東京2020種目別鉄棒金メダルの橋本が日本の最終演者として登場。予選では着地で失敗していた橋本だったが、最大のプレッシャーがかかる中、ミスなく着地までぴたりと決め、ベルシー・アリーナに大歓声を巻き起こした。
橋本は会場のファンに少し応えてから、鳴りやまない観客の声援に指を立てて「シー!」というポーズをして観客を沈めさせ、まだ最終演者の演技が終わっていない中国のチャン・ボヘン(張博恒)の肩を抱き敬意を示した。チャンはさらに大逆転を目指して演技をミスなく終えるも、日本に及ばず銀メダルとなった。3位はアメリカ合衆国が入った。
体操ニッポン男子の大逆転劇
日本の最初の種目となったゆかでは、岡が橋本と同得点の14.633点を出し、ライバルの中華人民共和国に2.866点リード。2種目目のあん馬でも、日本チームのムードメーカーであん馬を得意する杉野正尭がDスコア(difficulty score、難易度などをもとにした点数)6.500の難易度の高い構成で14.866点をマークし、さらに日本に勢いをつける。しかし、続く橋本が手の入れ替えが重なり落下。再度あん馬に戻って演技を再開するが13.100点に沈む。
続く3種目目の吊り輪では、得意とする中国の会心の演技が続いた。2022年世界選手権同種目銀メダルのゾウ・ジンユエン(鄒敬園)が14.933点、東京2020種目別のつり輪王者のリウ・ヤン(劉力揚)が15.500点を出して大きくリードを奪う一方、吊り輪を弱点とする日本勢は谷川、萱、岡がベストを尽くしてなんとか耐えるも、3種目を終えた段階で日本は中国、アメリカ合衆国、英国、ウクライナに次ぐ暫定5位に。
4種目目の跳馬では、杉野が高いEスコア(Execution Score、出来栄えなどをもとにした点数)9.100点で完璧な演技を決めると、橋本があん馬の悔しさ取り戻す14.900点の高得点を出し、チーム全体に良い流れを取り戻した。5種目目の平行棒では、ゾウ・ジンユエン(鄒敬園)が16.000点の驚愕のハイスコアを記録し、このまま差が広がるかと思われたが、岡がしなやかな美しい演技で14.866点とチームを引っ張ると、谷川と萱も14.7以上の高得点でそえろえて全体の2位つけ、中国と3.267点差まで追い上げる。
最終種目、日本が得意とする鉄棒で、最初に演技を行ったのは杉野。難度の高い構成をしっかりと決め14.566点をマークすると、予選と同様観客に両腕を振り上げて歓声を求め、会場を盛り上げた。続く岡もミスなく着地まで美しく決めると、胸に手を置いてその重圧を解放させた。ここで、思わぬ展開が起こる。中国2選手目の演者となるス・ウェイデ (苏炜德)が、序盤の離れ技から滑り落下したのだ。会場にどよめきが起こり、中国チームはまさかの出来事に落胆の色が隠せなかった。スは、再度演技に戻り最後までやり通すも、11.600点という厳しい点数で終える。
ここで、日本に再び金メダル獲得のチャンスが訪れた。日本の最終演者、エース橋本の登場だ。最大のチャンスにここ一番の重圧がのしかかる中で、種目別で予選通過ができなかった悔しさを払拭するミスない演技に着地までを決めた橋本は、その大役を果たした。大歓声が沸き上がり、会場はすでに日本が勝利したかのようだった。会場のファンに橋本が鎮まるようにジェスチャーを送り、最大の注目となる中国最後の演者、チャン・ボヘン(張博恒)の演技が始まった。東京2020後、パリ2024までに橋本が個人総合で敗れた唯一の相手、チャンは、中国チームの大きな期待を背に演技を決めると、中国と日本の6選手の中で最高得点の14.733点を出したが、それはさらなる逆転には及ばなかった。
驚きのドラマが繰り広げられる中、体操ニッポンが手にした悲願の金メダル。東京2020では0.103点差でROCに敗れ銀メダルに甘んじたが、見事パリの舞台でその雪辱を果たした。
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