10個の障害を越える400mハードル。東京五輪では野沢啓佑、久保倉里美に期待がかかる

過去の五輪準決勝経験者たちが再び世界の壁に挑む

リオ五輪で準決勝進出を果たした野澤啓佑(写真は2015年日本選手権)

2020年の東京五輪では陸上ハードル種目として、男子は110mハードルと400mハードル、3000m障害の3種目、女子は100mハードルと400mハードル、3000m障害の3種目が実施される。特に男子400mは為末大が長く活躍した部門だ。

トラック1周分、障害は10個

400mハードルは、ちょうどトラック1周分の距離で競う障害走だ。スタートから最初のハードルまでは45m、ハードル間は35m、最後のハードルからゴールまでは40mと定められ、飛び越えるハードル(障害物)の計10個となる。

短距離ハードルとは異なりカーブも走ることに加え、ハードル間が長いが故に逆足(飛ぶ足が逆になる)になりやすいため、男子は15センチほど、女子は8センチほど低い。

選手はスタート以降も決められたレーンを走るため、身体的な接触や妨害行為をするケースは少ないが、当然ながら意図的にハードルを倒すなどの違反行為がみられた場合は、失格とされる。また、カーブのときなどにハードルの外側に脚がはみ出しても問題ないが、後から越える抜き足がハードルのバーよりも低い位置を通ったときは失格となる。

東京五輪代表枠は男女各3枠

400mハードルにおける東京五輪の出場権は、2019年7月1日~2020年6月29日の間の対象大会ランキングやタイムによって決定される。出場枠は各国、男女各3名だ。

選考基準となるのは、世界陸上競技選手権大会、日本陸上競技選手権大会ほか計4大会のいずれかのランキング。さらに、国際陸連(IAAF)が規定する参加標準記録以内のタイムが条件だ。

指定国内外競技会8位以内(一部大会は1位)の日本人最上位者を基準とするが、指定大会で優れた成績を修め、五輪本大会において好成績を修めると期待できる選手は、上記の「IAAF規定タイム」を満たしている場合のみ、東京オリンピックへの出場権が与えられる。

世界のレベルと日本のレベル

他の短距離陸上競技同様、世界と日本のレベルには大きな差がある。特にアメリカはハードル競技において最強といって過言ではない。男女ともに、400mハードル世界記録10位のうちの6つの記録がアメリカ人選手によるものだ。

男子は1992年8月6日バルセロナ五輪で46秒78という前人未到の世界1位記録を叩き出したケビン・ヤングをはじめ、トップ25に12人が名を連ねる(2019年2月時点)。一方、日本記録1位は、2001年8月10日に為末大の47秒89だが、世界記録でみれば221位タイなのだ。

女子の世界記録は、ロシアのユリア・ペチョンキナが2003年8月8日に出した52秒34(日本記録は、2011年6月26日に久保倉里美の55秒34)で、世界1位を譲るものの、アメリカの女子選手も世界記録トップ25に13人が並ぶ。

メダルを狙う日本勢が警戒すべき有力選手

日本ハードル界を長きに渡ってけん引した為末大のみならず、400mハードルにおいては世界的にも長く活躍する選手が多い。2020年の東京五輪でも、2016年のリオ五輪のメダリストたちが活躍する可能性が濃厚とみることができるだろう。

リオの男子400mハードルで金メダルのケロン・クレメント(アメリカ)や銀メダルのボニフェスムチェル・ツムティ(ケニア)は、東京オリンピックでの活躍が期待されている。女子ではリオの金メダリスト、ダリラ・ムハンマド(アメリカ)、銀メダリストのサラスロット・ピーターセン(デンマーク)も要注目だ。

日本勢にとっていつまでも高い壁ではない400mハードル

2016年のリオ五輪・男子400mハードルでは、松下祐樹は予選で敗退、野澤啓佑は準決勝まで進出した。女子400mハードルでは、日本記録保持者である久保倉里美が予選敗退に終わっている。しかし、近年の五輪大会では久保倉のロンドンでの準決勝進出などもあり、決して表彰台が遠すぎる競技というわけではない。東京オリンピックでも準決勝への出場、そして決勝レースへの出場を期待したい。

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