東京五輪の個人メドレーは萩野公介や瀬戸大也、大橋悠依といった実力者の出場が見込まれ、金メダルの可能性も。戦前に2大会連続金メダルを獲得した男子4×200メートルリレー、個人種目の日本記録保持者による豪華布陣が期待できるメドレーリレーにもメダルの期待がかかる。
混合4×100メートルメドレーが新種目に
競泳には自由形、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライの4種目がある。それぞれが独立した種目として成り立っているが、一人の泳者がこの4泳法を順番に泳ぎ、タイムを競い合うのが「個人メドレー」だ。2020年東京五輪では男子と女子で、それぞれ200メートル個人メドレーと400メートル個人メドレーの合計4種目が行われる。200メートルは各泳法50メートルずつ、400メートルは各泳法100メートルずつで、泳ぐ順番はバタフライ→背泳ぎ→平泳ぎ→自由形と定められている。
一方、リレー競技は男子と女子それぞれ4×100メートルリレー、4×200メートルリレー、4×100メートルメドレーリレーの6種目に加え、新たに混合4×100メートルメドレーリレーが行われる。4×100メートルリレーと4×200メートルリレーは4人の泳者が自由形で100メートルずつ、あるいは200メートルずつ泳ぎ、4×100メートルメドレーリレーは4人の泳者が4泳法を1種目ずつ泳いでタイムを競う。泳ぐ順番は個人メドレーとは異なり、背泳ぎ→平泳ぎ→バタフライ→自由形となる。混合は男女2人ずつがリレーする競技で、男女どちらがどの種目を泳ぐかは特に定められていない。
個人メドレーの「怪物」フェルペス
個人メドレーは1964年東京五輪で男子と、女子の400メートルが、続く1968年メキシコシティ五輪で男子・女子200メートルが導入された。男子と、女子とも伝統的にアメリカが強さを発揮する種目であり、なか中でも圧倒的な実績を残してきたのが「“水の怪物」”ことマイケル・フェルプスだ。
フェルペスはバタフライを本職とするスイマーだが、その他の泳法でもハイレベルな実力を備えている。おり、男子200メートル個人メドレーでは2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドン、そして2016年リオデジャネイロと4大会連続で金メダルを獲得。アテネ五輪と北京五輪では男子400メートル個人メドレーでも金メダルを獲得するなど、オリンピック通算で金メダル23個、銀メダル3個、銅メダル2個、合計28個ものメダルを獲得した。北京五輪では両種目ともにオリンピック記録を打ち立て、400メートル個人メドレーで出した4分3秒84は、いまだ破られていない世界記録だ。
日本人選手はこの種目で長らくメダルに手が届かなかったが、2000年シドニー五輪で田島寧子が女子400メートル個人メドレーで銀メダルを獲得。男子では萩野公介がロンドン五輪の男子400メートル個人メドレーで銅、リオデジャネイロ五輪では200メートル個人メドレーで銀、400メートル個人メドレーで金メダルを首にかけた獲得。この時の400メートル個人メドレーでは瀬戸大也も銅メダルに輝き、日本人2人が表彰台に上がっているた。
一方のリレー競技については、男子、女子とも4×200メートルリレーと4×100メートルメドレーリレーは日本が比較的、得意とする種目で、過去に何度もメダルを獲得している。特に男子4×200メートルリレーは、戦前は日本にとって“お家芸”とも言える種目で、1928年アムステルダム五輪で銀メダル、1932年ロサンゼルス五輪と1936年ベルリン五輪では2大会連続で金メダルに輝いている。1964年東京五輪での銅メダルを最後に表彰台から遠ざかっていたが、リオデジャネイロ五輪ではアメリカ、イギリスに次ぐ3位でフィニッシュし、久々13大会ぶりにメダルを手中に収めた。
また、4×100メートルメドレーリレーは男子がアテネ五輪と、北京五輪で銅メダル、ロンドン五輪で銀メダルを獲得。女子はシドニー五輪とロンドン五輪で銅メダルを手にするなど、アメリカやオーストラリア、イギリスといった強豪国に次ぐ結果を残してきた実力を備えている。
入江陵介、池江璃花子らの豪華リレー実現も
東京五輪では競技1日目から競泳が始まり、2日目の7月26日(日)には男子、女子の400メートル個人メドレー、女子4×100メートルリレーなどの決勝が行われる。リオデジャネイロ五輪でも日本のメダル第1号、第2号となった男子400メートル個人メドレーの萩野と瀬戸には、その再現に期待が寄せられる。世界記録保持者のフェルペスはすでに引退したが、その後継者的存在であるチェイス・カリシュ(アメリカ)が2人に対する強力なライバルとしてしのぎを削る。
萩野はリオデジャネイロ五輪では4×200メートルリレーにも出場して銅メダルを獲得している。この種目はアメリカやオーストラリアが強力なライバルになるはずだが、リオデジャネイロ五輪で萩野とともにメダルを獲得した江原騎士や、成長著しい松元克央ら、出場候補者の陣容は充実している。彼らが十分なコンディションで挑めれば、2大会連続の表彰台、リオデジャネイロ五輪を上回る成績も十分に狙える。
女子では個人メドレーの200メートル、400メートルともに日本記録を持つ大橋悠依にメダルの期待がかかる。また、4×100メートルリレー、4×200メートルリレーには池江璃花子や自由形の実力者である五十嵐千尋、青木智美の出場が予想され、ロンドン五輪以来のメダルに手が届く可能性もある。
新種目の混合4×100メートルメドレーリレーでは、背泳ぎの入江陵介、平泳ぎの小関也朱篤、バタフライの池江、自由形の五十嵐や青木という豪華リレーが実現する可能性も。それぞれ個人種目でもメダル候補の選手たちであり、実際に他の大会ではアメリカやオーストラリアと互角の戦いを演じている。東京五輪から実施される新種目で記念すべき最初の金メダリストが獲得できれば、それ以上の理想的なストーリーはない。